「ただいま」
1DKのボロアパートの鍵を開ける
「にゃーん」
こたつから寝ぼけた顔で飼い猫が這い出してくる
26歳独身、散らかった部屋での一人暮らしは寂しい
大学時代に拾ってきたこの猫が唯一の癒しだ
帰ったよ、と猫を抱き上げる
ふわふわの胸毛にメイプルシロップのような仄かな甘い匂い
金曜の夕方の疲弊した心に陽だまりのような安息が訪れる
無理やり笑顔を作ったり締め切りに追われたりで正直何度も仕事を辞めたいと思った
けれど猫がいるから続けられた
僕の命は自分だけのものじゃない、そう言い聞かせて今日まで頑張ってきた
腕の中でゴロゴロと喉を鳴らす小さな命が僕の命に生きる理由をくれたのだ
ー命ー
他方、写真に映るエビたちの命には約8.3円の価値しかないようだ
12匹で定価298円、貼られた半額シールは命の価値すらも半値にする
今日の晩ご飯はエビ36匹
どうやって食べようかな
https://i.imgur.com/r1pgcLQ.jpg