ジャニー喜多川氏の性加害問題が話題だ。しかしこれは今に始まったことではない。遅くとも約30年以上前には「告発本」が出版されていたが、大手マスコミはそのことを無視し、ジャニーズアイドルを広告や娯楽目的に起用し続け、その間も発生し続けたであろう性加害の共犯者であり続けた。ではなぜマスコミが今になって騒動に真面目に向き合っているのかというと、ジャニー氏が他界し、BBCのドキュメンタリーをきっかけに世界中で注目されてしまったからである。

これは今まさに解散命令請求が進められている旧統一教会問題とも重なる。霊感商法などが社会問題になったものやはり30年前のことだ。その間も二世信者の被害は続いていたのに、対策に取り組むべき政府は何もせず、歴代政権の主要な政治家は統一教会とつながりと持ち続け、それをマスコミは報道しなかった。流れがいきなり変わったのは、安倍晋三元首相が山上徹也被告によって暗殺されてからのことだ。

つまり日本は「人が死ななければ自浄作用が機能しない」問題を抱えているのである。これは普通の国と比べるとおかしい。普通の国であれば、マスコミが権力や企業の不正を監視しているもので、不正が見つかれば大きく報じる。そして会社にはコンプライアンスの取り決めがあって、それに反すれば社内で処分が下されるし、法律に反していればその都度監督官庁が処分をするものである。ジャニーズ事務所も1企業である以上はハラスメント禁止の内規くらいあるはずなのに、自社で何もできなかった。政府当局も何もしなかった。統一教会だって解散命令に値する問題のある教団だったのなら、山上被告が動く前におのずと行政処分を食らっていて当たり前だったはずだが、日本はそういうルールを正しく運用するということができていない「文明国家もどき」であることが証明されたのだ。

あるいは人が死ななくても、社会的な大騒動にならなければ動かないという点ではビッグモーター問題だってそうだ。街路樹の伐採が問題になったが、道路管理している自治体側が気づいていないとおかしい。あるビッグモーター店舗では、イオンの植栽が枯れたことが明らかになったが、イオンは自社店舗の敷地内の植栽が失われていたことを指摘されないと気づかなかったということだ。そんなことってあるのだろうか。あなたの家の庭が突然更地になっていて気づかないわけがない。企業も行政も、自分の敷地の管理さえ「形」だけになっていて、他人に言われて初めて気づいているというのが今の日本なのではないか。こうした日本のルールの管理・運用が機能不全になっている状態に付け込んで、儲かるためなら何でもやり、大量の広告を投下することでマスコミを黙らせ続けて中古車業界のトップに君臨したのがビッグモーターということだろう。