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大学生の夏に体験した人生で一番怖かった話

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0001キズアト
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2023/02/07(火) 09:26:49.619ID:cg/foxrt0
たったらはなす
0002キズアト
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2023/02/07(火) 09:27:42.007ID:cg/foxrt0
たったな

はじめるか
0003以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
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2023/02/07(火) 09:27:56.570ID:5znqwdYf0
そして、伝説へ
0004以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
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2023/02/07(火) 09:28:20.313ID:cg/foxrt0
当時俺は、通っていた大学のそばで一人暮らしをしていた。
そこはいわゆるベッドタウンみたいなところで、県庁所在地に隣接した市で、元は山や林がいっぱいだったところを切り開いて家や団地をたくさん建てたような場所だった。だから街中に起伏が多かったのをよく覚えている。
電車や幹線道路が県庁所在地とつながっていて、そちらへのアクセスは良かった。一方で、市内の、県庁所在地と隣接している側と逆サイドは、まだ開発されていない山が残っていたりして、自然豊かでもあった。俺は大学に通いやすい方が良かったので、どちらかというと市内の田舎側に近いところで一人暮らしをしていた。
0005キズアト
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2023/02/07(火) 09:29:22.751ID:cg/foxrt0
あれは忘れもしない大学2年の夏。お盆を過ぎたころだった。
その頃俺は、下宿先から歩いて10分くらいの、近所のラーメン屋でバイトをしていた。
昼前から開いていて、日付が変わってちょっとくらいの時間まで通しで営業をする店だった。

その日の俺のシフトは夜の6時から10時だった。退勤時間になってタイムカードを押し、スタッフの休憩室に戻ると、シフトを9時に上がったA、Dさん、Sさんの3人が喋っていた。

Aは俺と同じ大学の同級生で、大学1年の最初の頃からの友人(男)だ。
Dさんは違う大学に通う3年生で、仕事は丁寧で優しい性格なんだけど、小太りで「ぐふふっ」と笑うようなちょっと陰キャ風な人(男)。
Sさんは、少し離れたところの女子大に通う3年生(女)で、穏やかなんだけど仕事はできる人で、バイトのホールスタッフの中では支柱みたいな人だった。

シフトを上がった後にまかないを食べたり喋ったりする人もいるので、バイト後に1時間以上休憩室に人が残っていることもあるのだが、普段あまり見ない組み合わせだったので、何かあったのかとも思った。
0006キズアト
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2023/02/07(火) 09:31:39.045ID:cg/foxrt0
部屋に入ってきた俺に気づいたAが「待ってたんだよ」と言う。
何の話かと思い聞いてみると、Dさんの通う大学で最近有名な心霊スポットがあるらしく、「今からそこに肝試しに行くから、一緒にいこうぜ」とのことだった。
話の発端としては、Dさんが、AとSさんを肝試しに誘ったのだが、Aは条件として、俺も一緒なら良いと言ったらしい。
俺は、なんで俺が巻き込まれるんだ・・・、と思ったが、友人であるAが両手を合わせて「頼むよ〜」と拝んでくるので、しぶしぶ同行を了承した。
その代わり、その日はまだ晩飯を食べていなかったので、行く前にまかないだけは食べさせろ、と言った。
0007以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
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2023/02/07(火) 09:31:50.091ID:5znqwdYf0
永井産業
0008以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
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2023/02/07(火) 09:32:34.354ID:cg/foxrt0
俺は店内に戻って、まかないの費用をレジで処理しつつ、厨房で味噌ラーメンの準備をした。
当時の俺のお気に入りのまかないは、味噌ラーメンのスープに、ランチ営業のサラダなどにつかう乾燥ワカメをぶちこんで作る、ワカメ入り味噌ラーメンだった。
バイトが自分でまかないを作る場合には、ネギ爆盛りするやつやチャーシュー増しするやつがいても、店長は黙認してくれていた。俺のワカメもそうだった。
俺は、完成したお気に入りのワカメ入り味噌ラーメンを手に休憩室に戻り、ラーメンをすすりながらDさんの話を聞いた。
0009キズアト
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2023/02/07(火) 09:34:09.969ID:cg/foxrt0
何でもその心霊スポットは、もともとそんな噂はないような場所らしいのだが、その夏に限っては、Dさんの大学の学生が肝試しで行ったところ、奇妙な音を聞いたという人が、ちらほらいるのだと言う。そしてその音を聞くと、寒気がしたり、吐き気がする人もいたそうだ。Dさん曰く「大きめのゴムボールが弾むような、ボウン、ボウンって音がするらしいよ」とのことだった。
ただその場所が、市の端の方にある山の中らしく、ラーメン屋から歩いて行くのは現実的ではなく、また、山の中腹くらいまでは車で行けるらしいので、車を出せる人間の協力があると助かる、ということで、車持ちのAとシフト上がりが被っているその日に、肝試しを持ちかけたのだと言う。

Aは、大学1年の冬に免許を取っており、2年の初めごろに、親からの誕生日プレゼントで中古の軽自動車を買ってもらっており、以来バイトには車で来ていたので、Aが車持ちなのはラーメン屋スタッフの誰もが知っていた。
0010キズアト
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2023/02/07(火) 09:34:40.489ID:cg/foxrt0
そんな話を聞きながらラーメンを食べ終えた俺は、先に車に乗っててください、と言い、店内に戻り丼を食洗器に入れて、休憩室でバイトの制服から私服に着替えて、駐車場に向かった。

駐車場でAの車を見つけた俺は近づくと、運転席にA、後部座席にDさんとSさんが座っているのを見たので、助手席に乗り込んだ。
0011キズアト
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2023/02/07(火) 09:35:48.085ID:cg/foxrt0
移動中の車内では、最初の方は、その日のバイトの夜のピークタイムでの、厨房とホールの連携がどうこうとか、真面目な話をしていた。そのあたりを語りつくした頃に、Dさんが、「そうだ、俺君の分の懐中電灯ないけどどうしようか」と言ってきた。
Dさんは、「もともと3人で行くつもりだったからさー」と、Dさんのリュックの口を開けて中に入っている3つの懐中電灯を見せてきながら、何故かにやにやしていた。俺が「そうですか。どうしましょうね」と言うと、Dさんは嬉しそうに笑って「ぐふふっ。そう言えば俺、これがあるからこっちを替わりに使おうかなー」とリュックから、当時最新型の某リンゴのマークの携帯端末を取り出した。
Sさんがそれを見て「わーすごいねー」とか言ったのでDさんはより気を良くして、「ぐふふ。こんな機能があって・・・」とか2人で盛り上がっていた。
Dさんが端末を自慢したいだけなのは見え見えだったが、Sさんが上手いこと合いの手を入れるから、後部座席の2人は、なんとなく話が盛り上がっていた。
0012キズアト
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2023/02/07(火) 09:37:34.724ID:cg/foxrt0
やがて車が山の入口に到着すると、そこからは舗装されていない道で、ただ幅は車4〜5台は並べれらるくらいあるような上り坂を、10分以上進んでいった。すると突然、やや開けた広場のような場所に到着した。
Dさんが「車で行けるのはここまでらしいよ。みんなこの辺りを駐車場代わりにしていて、ここからは歩いて進むんだって」と言った。
車が20台以上は停められそうなそのスペースには、その日には他には1台も車は停まっていなかった。

その時点で時刻は既に11時半ごろになっていたため、翌日のこともあるので、1時間後くらいにはここに戻ってこれるような進み方をしよう、という話になった。
0014キズアト
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2023/02/07(火) 09:38:07.357ID:cg/foxrt0
車を下りると、月明りのおかげで、ある程度は視界は確保されていた。
また、いくら8月とはいえ深夜だったので、若干肌寒い感覚もあった。
遠くでは虫の声も聞こえたが、さすがに例の「ボウン、ボウン」という音は聞こえてこなかった。

俺たちはさっそく、携帯端末を片手にしたDさんを先頭にして出発した。
0015キズアト
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2023/02/07(火) 09:38:36.360ID:cg/foxrt0
広場の奥から伸びる道は、人間が藪を切り開いて踏み固めたような道で、左手の何十メートルか先には山頂へ続く斜面に木が生い茂っていて、右手には高い木はなかったがどこまでも藪が続いているような風景だった。道幅は10m以上あり、近づいてみれば、あぁ、ここから進めるんだな、とはっきりと分かるような道だった。
Dさんは「途中でいくつか分岐があるらしいから、迷わないように気を付けよう」と言って進んでいった。
0016キズアト
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2023/02/07(火) 09:39:26.797ID:cg/foxrt0
歩き始めてすぐに、その場所は意外と、歩くのにさほど不快でない環境だということが分かった。
月明りのおかげで懐中電灯を点けなくてもある程度見渡せるし、地面の凹凸も少ない。何より蚊などの羽虫がいなかった。

大声で喋るのは憚られるような空気感だったため、時折小声で、怖いね〜とかちょっと寒いねーとか言い合っていた。俺たちはDさんを先頭にしながらも、時折AやSさんがDさんと並んだりして、Dさん先頭と後ろ3人か、前2人と後ろ2人、の隊列で歩みを進めた。
0017キズアト
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2023/02/07(火) 09:39:59.867ID:cg/foxrt0
進むうちに、Dさんの言う通り、道に何度かの分岐があり、Dさんはそれらを全て左に、左に、と進んでいった。そのため次第に、道と山の斜面の距離が近づいてきて、道を照らしていた月明りが斜面に生えた木々にさえぎられるようになってきた。

深夜の暗がりとなると、さすがに不気味さを感じ、俺はそのあたりからは懐中電灯を常にONにして手に持っていた。が、いくら周りに懐中電灯を向けたとしても、不気味さはさほども緩和されず、俺は次第に帰りたい気持ちが強くなっていった。

だが、自分から帰ろうとは言い出したくなかったので、周りを懐中電灯で照らしつつ、ちらちら腕時計を確認して、どこかで時間を理由に戻ることを切り出そうと考えていた。
そして更に5分ほど進み、まもなく0時になろうかという時刻になった時、俺は思い切ってDさんに呼びかけた。
0018キズアト
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2023/02/07(火) 09:41:41.423ID:cg/foxrt0
「Dさん。もうすぐ0時になりますし、そろそろ引き返しませんか?」
一人で5mくらい先に進んでいたDさんは、俺の呼びかけに反応して振り返り、手元の端末をちらっと見てから、こちらに歩いてきた。そして、Dさんが何か言おうと口を開いた瞬間、周囲の静寂を破る、全身を包み込むような大きな声で

「ま」

と聞こえてきた。正確には、ま、と聞こえた後にあ あ あ あ ぁ ぁ んと反響を繰り返すような聞こえ方をした。
その声が耳に入った瞬間から、俺は、全身に鳥肌が立ち、とてつもない恐怖感に襲われた。また、額や背中に冷や汗が伝うのを感じながらも、金縛りにあったように身体が固まってしまい、動けなくなってしまった。また、その声そのものが人間の恐怖感を直接刺激するかのように、あ あ あ あ ぁ ぁ んと反響するたびに、身体が、ぶるぶる、ぶるぶると震えるのを感じていた。
俺はすでにこの時、無意識に半泣きになっていたように思う。

いつの間にか辺りには生臭いにおいが立ち込めており、にじんだ視界の中では、同じくDさんやA、Sさんも固まっていた。
そして俺は気づいてしまった。
今の声は、俺たちの左側から聞こえた。俺たちの左側に、今の声を発した何かがいると。
0020キズアト
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2023/02/07(火) 09:42:48.514ID:cg/foxrt0
Dさんもそれに気づいたようで、震える手で握った携帯端末の明かりを、導かれるようにゆっくりと、俺たちの左方向に動かしていった。俺はそれに合わせるようになんとか、首だけをゆっくりと左方向に向けた。

そして、斜面に生える木と木の間。こちらから10mほどの距離。Dさんの持つ明かりに照らされて、そいつはいた。
0021以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
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2023/02/07(火) 09:43:36.587ID:kpoE0HL7a
ぎゃあああああああああああああ!!!!!!!!!
0022キズアト
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2023/02/07(火) 09:43:50.685ID:cg/foxrt0
ひと目見て、巨大な肉塊という印象を受けた。だがその表面が異様だった。
全身の皮膚(?)のようなものが、あちこちででろでろに垂れているのだ。イメージが近いもので言うと、皮下脂肪を吸引した直後の垂れた皮膚とか、体重200kgオーバーの外国人が短期ダイエットで一気にやせたあとのたるんだ皮膚とか、それをデフォルメして、でろんでろんしたような状態だった。

よくよく見るとそれは、人間のように頭部もあり四肢もあり、二足で直立していたが、明らかに人間よりも大きかった。身長は4mか5mはありそうだった。また、横にも大きく、相撲取りを縦横比そのままで3倍くらいにしたような巨躯だった。
頭頂からは、だらんと垂れる髪のようなものもわずかにあったが、それが本当に頭部なのかは分からなかった。頭部らしき箇所も皮膚(?)がでろでろに垂れており、目や鼻、口があるのかも分からなかった。

だが俺は何故か、そいつは俺たちの方を向いているように思えた。
0023以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
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2023/02/07(火) 09:44:00.840ID:xqCu/8Tf0
そんなわけで、帰り道にある、とある公衆トイレに立ち寄ろうとしていたのだが、
トイレの近くのベンチに座っていたツナギ姿の男と目が合ってしまう。

「ウホッ! いい男……」

思わず見とれてしまう道下。
すると男は、道下の目の前でツナギのホックを外し始め、チャックを下ろし自らのジュニアを見せつける

「やらないか」
0024キズアト
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2023/02/07(火) 09:44:33.445ID:cg/foxrt0
誰かが小さく、「ひぃっ!」と言った気がした。しかしそれ以上言葉を発することができず、そいつと目と目(?)が合った状態で誰も声を発せない状態がどれほど続いただろうか。実際は5秒とか10秒だったのかもしれない。だがその時間は、10分にも20分にも感じた。

静寂を破ったのはそいつだった。
そいつは軽く身体を揺らすと、再び

「ま」

と言ってきた。その声は、声そのものに質量でもあるかのようにぶつかってきて、俺は膝から崩れ落ちそうになりながらも身体はがちがちで動かず、再び全身に恐怖感があふれだして、半ばパニックで頭が真っ白になっていた。
そして、あ あ あ あ、と反響するたびに意識が遠のいていった。
0025以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
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2023/02/07(火) 09:44:48.358ID:K+ML69L80
安倍総理
0026キズアト
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2023/02/07(火) 09:45:18.712ID:cg/foxrt0
しかし次の瞬間、そいつの反響音を切り裂くように
「きゃああああああああああああああっっっ!!!!」
とSさんが叫んだ。

俺は、その声が耳に入ると、それまでの恐怖感やパニックが、冷水でもぶっかけられて飛んで行ったかのように噓のように消えさり、金縛りも解けていることに気が付いた。
崩れ落ちそうになる膝を必死で踏ん張りながらAやDさんを見ると目が合って、誰からともなく頷いて、Sさんの手を引っ張りながら全力で車を停めた広場に向かって走りだした。
0027キズアト
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2023/02/07(火) 09:45:55.907ID:cg/foxrt0
最初こそ、Sさんを引きずるように走っていたが、途中からSさんも自分の足で走ってくれたので、車までは10分もかからずに戻れた。途中、怖くて振り返れなかったが、追ってくるような足音は聞こえなかったし、少し走れば生臭い匂いもなくなったので、たぶん振り切れたのだろうとは思いながら走っていた。でも足を止めたらまた遭遇するのではと思うと怖すぎて、とにかく必死に走った。

息も絶え絶えに車まで到着すると全員無言で乗車した。車内灯に照らされた顔は、全員真っ青で、汗とか涙とか鼻水とかでぐちゃぐちゃだったが、Aは何も言わず、すぐに車を発車させた。
下山中、気まずい沈黙の車内では、時々Sさんが後部座席から後方をちらちらと伺っていたが、何を言うわけでもなく、沈黙が続いた。
0028キズアト
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2023/02/07(火) 09:46:27.125ID:cg/foxrt0
山を下りて一般道に出てからしばらくして、Sさんが「さっきのって、何だったんだろう・・・」と口にした。
Aは「分からなかったけど、巨大な人間のようにも見えたけど・・・。でも人間にしては大きすぎたし」と言った。ただ、とAは続けた。

A「あいつが何かは分からなかったけど、あいつの声が聞こえてから、身体が金縛りにあったみたいに動かなかった」
俺「うん、俺も」
Sさん「私も・・・。でもDくんはあの時、明かりをアレに向けたよね?」
Dさん「・・・。あの時は、呼ばれるというか、引っ張られるような感じで、自分の意思でそうしたのかもよくわからない・・・。でも・・・」

Dさんは口ごもってしまったが、俺は続きが気になったので聞いてみた。
0029キズアト
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2023/02/07(火) 09:47:13.907ID:cg/foxrt0
俺「でも、どうしたんですか?」
Dさん「・・・あいつの2回目の声を聞いた瞬間、明かりを向けていた右腕が、めちゃくちゃ痒いというか、痛くなった・・・」

Dさんが言うには、荒縄とかをこすりつけて締め上げるような痛みだったという。しかしいまDさんの右腕をみても、痣や腫れはなく、何だったんだ・・・、とつぶやいた。
Aは、2回目の声を聞いたら喉の奥が締まるような感じで、ものすごい吐き気がしたという。
Sさんは、2回目の声を聞いたら視界が思い切り揺れるような感覚があり、そのまま顔から倒れるかと思ったら大声で叫んでしまったらしい。
0030キズアト
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2023/02/07(火) 09:47:46.505ID:cg/foxrt0
俺は、Sさんの声のおかげで金縛りが解けて動けるようになったので、みんなSさんに助けられましたね、と笑いながら言った。
するとAやDさんも、そうそう、と同意し、車内の空気も少し明るくなり、ちょっとだけみんなに笑顔が戻った。
そのまましばらく、でも何だったんだろうねー、という話をしたが、最終的には、人に話しても信じてもらえないだろうから、この4人での秘密にしようとなった。また、Dさんの大学で変な音を聞いたという人は、アレの声を遠くで聞いたのだろう、という結論になった。
Dさんは最後まで時折、写真を撮っておけば良かった〜、と言っており、端末を手にしていたのに写真を撮れなかったことを悔やんでいるようだった。
0031キズアト
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2023/02/07(火) 09:48:15.476ID:cg/foxrt0
そんな話をしているうちに、ラーメン屋の近くまで車は戻ってきており、俺はそのまま下宿先まで送ってもらい、車を下りた。
またバイトの時に、と挨拶して、部屋にもどった俺は、シャワーを浴びて布団に潜った。
眠れないかも、とも思ったが、山中での全力ダッシュの疲れが出たのか、すぐに睡魔に襲われた。
0032キズアト
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2023/02/07(火) 09:51:22.135ID:cg/foxrt0
暗いくらい空間に俺はいた。いまいち頭が冴えなかったが、何故か俺は夢を見ているんだろうな、という実感があった。
俺は3m×3mくらいのコンクリの床の上に立っており、その周りは窪んでおり水路になっているようで、水が流れていた。20cmくらいの水路を挟んで、隣にも同じくらいの広さのコンクリの足場があり、水路、足場、水路、足場と、それが色々な方向に迷路のように広がって続いているようだった。
また、足場は、階段のように段差になっているところがあったりするのも見えた。
天井は見えないほど高く、壁はコンクリ。
明かりはまったくないのだが、何故か水路を流れている水がわずかに発光しているようで、その明かりのおかげで、その空間内のある程度の範囲は見渡せた。

俺が、(遊びたいな・・・)と考えると、身体が無意識にこっちの方向だと分かっているように、ひとりでに走り出し、水路を飛び越え、足場を走り、飛び越え、走り、角を曲がったり、段差になっている足場を上ったりして、やや広い10m×10mくらいの広さの足場まで到着した。
到着したら、そこで踊って遊んだ。
0033キズアト
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2023/02/07(火) 09:52:52.910ID:cg/foxrt0
俺は、その空間の内部を把握しているようで、俺が何かをしたいと考えるたびに、身体が無意識に動き出して、その行動をする指定の足場まで移動した。
ただ唯一、自分がスタート地点だと思う場所だけは、(ここから先は行ってはいけない・・・)という考えが頭によぎり、先に進めなかった。その場所は、足場の向こう側がコンクリの壁ではなく土壁になっていて、すぐに右に折れて進めるようになっていた。そしてその先には、この空間にはない強烈な光があるようだった。

俺はその先に何があるのか見てみたいと思ったのだが、頭の中の(ここから先は行ってはいけない・・・)という考えを無視できず、ぼうっとその土壁を眺めることしか出来なかった。やがて疲れを感じて(眠りたいな・・・)と考えると、また無意識に身体が動いて寝る専用の足場まで移動し、そのまま倒れるように横になって眠りについた。
0034キズアト
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2023/02/07(火) 09:54:19.943ID:cg/foxrt0
目を覚ますと、俺は布団の中にいた。
夢の中でも夢だとは分かっていたが、目が覚めた後でも記憶に焼き付いており、まるで自分があの場所にいて、本当に走ったり水路をジャンプしたりしたかのような、妙なリアルさがあった。
俺は、夢は夢だと割り切って布団から出たのだが、立ち上がった際に左足の裏に妙な違和感を覚えた。足がつる時の感覚に近いのだが、それが左足の裏の真ん中付近のごく一点にだけ感じた。
最初は何か踏んづけているのかとも思ったが、特にその様子もなかった。
変な感覚ではあったが、歩く分には支障がなかったので、まあいいか、と思って気にするのを辞めた。

その日はバイトは休みだったので、カップ麺を昼飯にし、適当にだらだら暇をつぶし、晩飯には蕎麦を茹でて食った。次の日が開店準備の時間からのバイトシフトで、翌朝に早起きしなければいけなかったので、その日は夜更かしはせずに早めに寝た。
そして俺は、2日続けて同じ夢をみた。
0035キズアト
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2023/02/07(火) 09:55:23.642ID:cg/foxrt0
暗いくらい空間に俺はいた。足場が迷路のように広がっており、足場と足場の間が水路になっている。
俺はすぐに昨日と同じ夢だと気が付いたが、何故かこの身体は、自分の意識では動かせないようで、その場所から移動することが出来なかった。
俺はふと、昨日見た土壁を思いだし、(あのスタート地点に行きたい)と考えた。すると、ひとりでに身体が動き出し、足場を走って、水路を飛び越えて、走って飛び越えてを繰り返し、何度か角を曲がった先に、昨日見た土壁の通路を見つけた。

俺は(この先を見たい)と思ったのだが、それに対しては何者かの(ここから先は行ってはいけない・・・)という考えが被せ気味に思考に割り込んできて、身体を動かすことはできなかった。
0036キズアト
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2023/02/07(火) 09:56:15.410ID:cg/foxrt0
そこで俺が(この先には何があるんだ)と考えると、しばらく間をおいて、俺の思考に答えるように、頭の中に、明るい空間に防護服のような白い服を着た人間が立っているイメージが湧いた。そして(この人は怖い人・・・)という思考が流れた。

怖い人ってどういう意味だろうと思い、それを考えようとしたところ

「ヤダ」

という強烈な思考が頭に流れ、そのまま視界が真っ赤に染まり、頭の中から意識が引きちぎられるような感覚とともに、自分の存在がばらばらになるような恐怖感に襲われた。その、刹那とも永遠とも感じるような時間の果てに、俺の意識は暗転した。
0037キズアト
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2023/02/07(火) 09:58:16.915ID:cg/foxrt0
翌朝目を覚ますと、やはり俺は布団の中にいた。ただその日は、全身にじっとりと汗をかいていた。
夢の中で意識を失う直前の感覚を思いだし、気持ち悪さで吐き気がしたが、まずは汗で濡れたTシャツを着替えようと立ち上がった。
そして思わず「痛っっ!!」と叫んだ。左足を床に付けたら、予期せぬ痛みが走った。
昨日足がつるような違和感のあった箇所から、土踏まずの方向と、その逆の方向にも、点が線になったかのように違和感のある箇所が広がっていた。それに加えその日には、硬いブロックや鉛筆などをその箇所で踏んづけたかのような鋭い痛みも伴っていた。

なんだこの痛みは、と思ったが、ふと目に入った時計の針は8時過ぎを指しており、俺は目覚まし時計のセットを忘れていたことに気づき、やばいと思った。
0038キズアト
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2023/02/07(火) 09:59:02.887ID:cg/foxrt0
ラーメン屋の開店は11時で、開店準備のシフトの場合には9時に行けば良いことになっている。だが俺は、過去に開店前に準備が終わらなくて開店時間から大変な思いをした経験があったため、いつも8時半から9時の間のなるべく早い時間に行くように心がけていた。準備が順調に進めば開店前に休憩すれば良いし、準備が開店ぎりぎりまでかかったとしても、営業が始まってお客さんが入ってきたタイミングでも仕込みなどを続けるよりは、よっぽどマシだったからだ。

俺は、左足の裏の痛みは、左足だけに体重をかけるような姿勢にならなければ大丈夫、普通の速度で歩く分には我慢できる、走るのは無理そう、ということだけ確認し、急いで支度をして家を出た。
0039キズアト
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2023/02/07(火) 10:00:03.091ID:cg/foxrt0
ラーメン屋の開店前準備は、厨房1名、ホール1名でやるのだが、やることが多い。
何となく男は厨房、女はホールみたいに分かれていたのだが、一部スタッフはホールも厨房もどちらもできる。俺も両方できる人間のひとりで、どちらの開店前準備も経験があった。だが、その日はもう一人がホール専門の女の子だったため、俺の担当は厨房だった。

厨房の仕事は、健康体の時にはあまり気にしていなかったが、意外と足の負担になるものが多かった。前日の残りのスープが入った寸胴を冷凍ストッカーから運び出したり、その量に応じてスープを作ったり。スープ作りも、材料の鶏ガラとか香味野菜は冷凍されたものがあるのだが、それを持ち上げて寸胴の中のざるに入れたり、出来上がったあとでざるごと持ち上げて取り出したり、寸胴のスープの灰汁を濾すために他の寸胴に移し替えたり、痛む足でやるには、なかなかの重労働だった。

他にも、麵茹で機の準備をしたり食材を出したり、ストックの少ないものの仕込みをしたりなどしていたのだが、自分ではっきりと、徐々に足の痛みがひどくなってきている事に気づいていた。それでも準備の手は止めず、開店時間前に全て終えることができたが、その時にはもう、左足は引きずるような歩き方になっていた。
0040キズアト
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2023/02/07(火) 10:01:25.392ID:cg/foxrt0
その日の昼シフトは6人。厨房は俺とAともう1人。ホールは店長と女の子2人。
厨房を3人で回す場合には、麺場、焼場、飯場で分かれることが多い。麺場は、麺を茹でたり湯切りしたり、スープを手鍋で温めたり、盛り付けなどをメインとして行う。焼場は、鉄板で餃子を焼いたり揚げ物を揚げたりサイドメニュー中心で作りつつも、麺場の盛り付けなどの仕事をフォローする。飯場は、ご飯ものの注文を捌きつつ、洗い場を担当して、麺場の盛り付けの仕事も手伝いつつ、出来上がった麺をカウンターに運び、ホールに声をかけて提供してもらう役目だ。
Aは、俺が足を引きずっていることにすぐに気付き、大丈夫か?と言いつつ、その日の俺の持ち場を麺場にしてくれた。麺場は、作業場所が限られているので、一番歩き回らなくて良いポジションだったからだ。俺はサンキューと言いつつ、内心では、どんどん痛みが増してくる左足に、不安感でいっぱいだった。
0041キズアト
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2023/02/07(火) 10:02:43.503ID:cg/foxrt0
その日は、学生にとっては夏休みでも、社会人にとっては普通の平日だったので、やはり12時頃から13時頃までは客が多かった。でも13時を過ぎると急速に客足が遠のいていく、まあ典型的な平日の来客パターンだった。13時少し過ぎたくらいで注文も一段落したのだが、俺の額は脂汗でいっぱいだった。
とにかく左足が痛い。

その日の朝痛かったのは前日に痛かったところから伸びた線といった感じだったが、働いているうちに痛みを感じる箇所が面になり、左足の裏全体に痛みがあった。
また、その痛みはだんだんと足の側面を回り、足の甲の側にもやってきた。
そして次第に指先の感覚がなくなり、足首から下全体が痛みに包まれていた。
しかもその痛みは徐々に増してきていて、13時過ぎには、足の筋肉という筋肉が、水ぶき雑巾をぎゅーっと絞っているかの如く絞り上げられるような感覚で、そこに巻き込まれた神経が圧迫されたり引き千切れそうになっているかのような痛みだった。
0042キズアト
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2023/02/07(火) 10:03:52.073ID:cg/foxrt0
俺は、ラーメンの提供が遅れればお客さんの迷惑になるから、という一心でどうにか耐えていたのだが、注文が途切れたことで、ついに限界を迎えた。
「痛いっっっっ!!!」
そう叫んで尻もちを付いた俺を見て、Aが慌てて駆け寄ってきた。
ホールにもその声は聞こえたようで、店長もやってきた。

俺はもう、あまりの痛みに立ち上がることもできず、湯切りでベトベトになった床で制服のズボンが汚れるのも気にならず、かろうじてそれ以上叫ぶと客の迷惑になるかと思い、唸り声のように声を押しとどめるので精一杯だった。

店長が、どうした、大丈夫か?と聞いてきたが、俺は首を思いっきり横に振った。その動作だけでも、身体を少しひねった勢いが左足まで伝播して、左足の激痛が更に増した。
その様子を見て店長は、これは病院だな、と言ってAに、車で連れて行ってやれないか、と聞いた。病院に行っている間のバイト代は出すから病院まで付き添って、診察結果を聞いて、俺を家まで送った後にまた店に戻って様子を報告してほしいと言っていた。
Aはすぐさま頷いて、自分と俺の厨房スタッフ用のエプロンと帽子を外して、俺の左側から肩で担いで、制服のまま駐車場まで移動した。
0043キズアト
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2023/02/07(火) 10:08:09.525ID:cg/foxrt0
左足のあまりの痛みに、そこからの記憶はぶつぶつだ。
流れとしては確か、Aの車で病院まで行き、受付まではAの肩を借りて移動して、そこで車椅子に乗せられた。診察室で左足の靴を脱いだら、医者に「真っ赤だね」と言われたのは覚えている。なんともない右足と比べると、足首から下が明らかに一回り腫れていた。
靴を脱いだことで、締め上げるような痛みの一因は、腫れあがった足を靴に押し込んだ状態になっていたせいだということが分かり、そこからは靴無しで移動したが、それでも圧倒的な痛みの前には焼け石に水程度だった。
X線を撮る時には、足が痛いし足首も動かせないと言っているのに、足の角度がどうとか、無理な姿勢をさせておいて動かないでくださいね、とかめちゃくちゃな注文を付けられたのは覚えている。

最終的には、骨に異常は無いので骨折ではなく、でも原因は分からないと言われ、湿布と痛み止めと胃薬を処方され、また、松葉杖をレンタルしてもらった。
0044キズアト
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2023/02/07(火) 10:09:23.887ID:cg/foxrt0
Aに家まで送ってもらうと、もう夕方になっていた。
俺は、状況はAから店長に伝えてもらえるのは知っていたが、恐らく明日以降もしばらくはまともに歩けないだろうと直感的に分かっていたので、明日以降のシフトに穴を開けてしまうことだけ謝罪したくて、店長に電話した。
店長は話を聞いて、シフトのことは気にするな、稼ぎたい子たちがいるからそいつらに入ってもらうよ、と言い、また、とにかく歩けるようになるくらいまでは大人しく安静にしておけ、と言われた。俺は感謝の気持ちを伝えると電話を切り、布団に寝ころんだ。

しかし大変なのはそこからだった。
0045キズアト
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2023/02/07(火) 10:10:47.616ID:cg/foxrt0
左足の足首から先はとにかく、何もしていなくても痛いのだが、床に付いたり何かに接触すると激痛が走る。また、身体をひねりすぎると痛みが走るので、取れる姿勢に限りがあった。
俺は基本的には、布団から半身を起こし、左足の膝の下あたりにクッションを置いて、左足首から先が宙に浮くような姿勢を保ちつつ、たまに横になったりとか姿勢を変えていた。
部屋の中では、上手く壁に手を付ければ左足を使わずに移動することも出来たので、トイレやシャワーは何とかなった。しかしとても買出しにいける状態ではなかったので、申し訳ないと思いつつAに頼んで、2日おきくらいに、肉・ネギ・ワカメ・インスタント袋麺・カップ麺あたりを買いこんで貰って、届けてもらっていた。金は多めに渡してお釣りはいらいないと言って頼んでいた。

寝ている時には、無意識で寝返りを打とうとするだけで左足に激痛が走り目が覚めた。寝返りの度に目を覚ますことになるので、あまり深い睡眠は取れなかったし、昼寝が増えた。

自分が暗い空間にいる謎の夢も、2〜3日おきに続いた。
何度もその夢を見るうちに、俺は法則に気付いた。眠りたいと思って寝る部屋に移動すると目が覚める。しかし、夢を見てからいきなり眠る部屋に行っても眠りには付けないので、いくつか「遊ぶ」とか「歌う」とか「走り回る」とかをやってから寝る部屋に移動すると夢から脱出できた。
0046キズアト
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2023/02/07(火) 10:11:47.382ID:cg/foxrt0
そんな生活を繰り返し、病院に行ってから10日後。
痛みが引くようだったら次回は来なくて良いと言われていたのだが、最初に処方された薬を飲みきったもののまだ痛みはあった。とは言えその頃には、痛み止めが利いていて、左足が何にも触れていない状態であれば、痺れているような感覚はあるものの痛みはなく、薬が切れている時やどこかに足を当ててしまった時だけ痛みがあるような状態だった。
家の中で松葉杖で歩く練習もしていたので、俺は思い切って松葉杖をついて病院へ行くことにした。左足は靴を履くと痛みが酷かったので、右足は靴、左足はサンダルで出かけた。

病院は、普通に歩けば10分もかからない距離だったが、松葉杖をつきながらだと20分以上かかった。しかも久々に外に出て身体を動かしたものだから、移動だけで汗だくになった。
0047キズアト
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2023/02/07(火) 10:12:25.863ID:cg/foxrt0
病院で診察を受けると、俺に告げられたのは「足底腱膜炎」という病名だった。足にある腱膜という部分が損傷して腫れ上がる病気らしい。ただ先生が言うには、しょっちゅう足を踏み込みに使う剣道だとか、激しい運動をする人に表れることが多いらしく、何かスポーツやっていた?と聞かれたのだが、俺が特に何も、と答えると、少し不思議そうな顔をしていた。
俺は高校の時から帰宅部で、基本的に運動はしていなかった。そんな俺の足の裏の腱膜がなぜ損傷したのかは、結局は謎のままだった。
俺はふたたび、湿布と痛み止めと胃薬を、今度は多めに処方してもらい、帰路についた。
0048キズアト
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2023/02/07(火) 10:13:38.396ID:cg/foxrt0
そして一週間後。
俺の足底腱膜炎は、徐々に回復していた。その頃には、薬が効いていれば普通に歩けたし、薬が切れていても、足首の動きは制限されているような感覚だったが、痛みはほとんどなくなっていた。ただ、薬が切れた状態で足首を曲げたりすると、痛みはあった。
少なくとも、痛み止めさえ効いていれば日常生活に支障がないレベルまで回復したので、俺は店長に電話をして、状況と、次の週からバイトに入れる旨を伝えた。
またAにも、これまでの買出しへの感謝と、次の週からバイトに復帰するつもりであることを電話で伝えた。

すると話を聞いたAが、どこか外で会えないか?と言ってきた。
俺は、特になんの用事もなかったので、いつでも大丈夫だと了承した。Aは、時間と場所は後でメールする、と言って電話を切った。
2時間後に届いたメールには、翌日の午前10時に、場所は近所の喫茶店で、車で迎え良いくから9時50分くらいには出れるようにしておいてくれ、とあった。俺は了解と返した。
0049キズアト
垢版 |
2023/02/07(火) 10:15:21.588ID:cg/foxrt0
翌日。Aの車に乗った俺は、何も喫茶店じゃなくても俺の部屋でも良いのに、と思っていたが、すぐにその理由を知ることになった。
喫茶店で通されたテーブルには先客がいた。Dさんだ。
Dさんは俺たちに気付くと、おう、と言って手を振ってくれた。

俺とAはDさんの向かい側の席に座ると、それぞれ飲み物を注文したところで、Aがやけに深刻というか、悲痛な表情を俺に向けた。
お前に伝えておかないといけない事があるんだ、と改まって言うAに対して、なんだよ?と聞くと、しばらくの沈黙の後に告げられたのは、Sさんの死だった。
0050キズアト
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2023/02/07(火) 10:18:03.072ID:cg/foxrt0
A「Sさん、亡くなったんだよ」
俺「・・・はぁ?冗談だろ?」
A「冗談なんかじゃない。それも、お前が足が痛いって言って、病院に行った日にだ」

俺は信じられず、Aの顔を見返したりDさんの方を見たりもしたが、Dさんは顔を俯き気味にしており、その表情は見えなかった。

Aが言うには、Sさんは、俺が病院に運ばれた日の夜のシフトに入っていたのだが、時間を過ぎてもラーメン屋にやって来ないSさんを不思議に思って、店長がSさんの携帯に電話を入れたのだそうだ。その時に電話に出たのが母親で、店長が、Sさんがバイトのシフトの時間に遅れているけれど何か知らないかと聞くと、しばらくの沈黙の後に、「娘は本日、急逝しました」と告げられたのだという。

Sさんは実家暮らしだったため、葬儀に参列した店長が亡くなる直前の様子を母親に聞いた話では、亡くなる前日には、頭が痛いと言って、食事の時以外はほとんど部屋に籠っていたそうだ。そしてその翌日、昼過ぎになっても部屋から出てこないSさんを心配した母親が様子を見に行ったところ、布団の中で既に息を引き取っているSさんを見つけたとのことだった。
死因は脳卒中で、若い人が急にかかることも珍しくは無いと医者が言うので、急な病死ということになったそうだ。
0051以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
垢版 |
2023/02/07(火) 10:21:17.018ID:TwZ3bkzi0
おもしろかった!今年一番笑った!乙!
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