大学生の夏に体験した人生で一番怖かった話

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0001キズアト2023/02/07(火) 09:26:49.619ID:cg/foxrt0
たったらはなす

0052キズアト2023/02/07(火) 10:22:16.020ID:cg/foxrt0
Aは、お前の足イタとあまりにもタイミングが一緒だから、不安にさせないように、足が良くなるまでは伝えないでおこうと思ったんだ、と言った。
その言葉を聞いて若干違和感を感じた俺は、不安ってどういうことだ?と聞き返した。
Aは、何と言おうか迷っているようだったが、Dさん、と促すとDさんが顔を上げた。

Dさん「見る?これ。すごいよ・・・。ぐふふっ・・・」

ちょうど、注文したDさんのホットコーヒー、Aのウーロン茶、俺のアイスコーヒーがテーブルに来たのだが、お構いなしにDさんは右袖をまくった。
すると、Dさんの右肘と右手首のちょうど中間らへんに包帯が巻いてあるのが見えた。

Dさん「これねぇ・・・。Sさんが死んじゃう前の日くらいから違和感があったんだけど・・・」

死、という単語を聞いて、びくっと反応した店員さんだったが、何も言わず飲み物を置いて去っていった。

それを見届けたDさんは、おもむろに、巻いてある包帯を外し始めた。何巻きか回すと、包帯の端がほろりとテーブルに落ち、腕の外側に大きめのガーゼが貼ってあるのが見えた。
そしてDさんは、ガーゼを留めているテープを剥がすと、その下にあるものを俺に見せた。

0053キズアト2023/02/07(火) 10:25:44.074ID:cg/foxrt0
それは明らかに異物と感じるものだった。漫画で書かれるようなコブそのもの。アンパンマンの顔に付いている鼻のような感じと言うと分かりやすいだろうか。直径5cmほどもありそうなコブが付いていた。さらには、真ん中らへんに傷口のようなものがあり、そこと接していたガーゼには、黄色みがかった白いべとべとしたものが付着していた。

Dさん「これね、膿が溜まって出来ているコブなんだって。急に膨れてきてさ。痛いから病院に行ったんだけど、切り取ることも出来るけど大がかりになるから、まずはこうやって切れ目を作って、そこから膿を出して様子を見ようって話になったんだ・・・」

Dさんはひとしきり俺にそのコブを見せたあと、手慣れた様子で新しいガーゼを取り出してテープで留め、その上に包帯を巻いた。

0054キズアト2023/02/07(火) 10:29:02.603ID:cg/foxrt0
そこまで言われると、俺にもAの言いたいことが分かってきた。

俺「Sさんが死んだのも、Dさんの腕のコブも、俺の足も、肝試しに行ったのが原因かもしれないってことか?」
A「俺はそう思っている。もっと言うなら、あの時出会ったあいつにやられたんじゃないかって思ってる」
俺「・・・。Aは何ともないのか?」
A「俺は今のところ何ともない。ただ・・・」
俺「ただ、なんだ?」
A「変な夢は見る」

夢、と聞いて俺は動揺した。Dさんも、少し表情を変えたように思った。

0055以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2023/02/07(火) 10:30:25.406ID:5h1FaR5H0
Aさん一人だけ強い

0056キズアト2023/02/07(火) 10:32:37.554ID:cg/foxrt0
Aが言うには、肝試しに行った日の夜から2〜3日おきに、同じような夢を見るのだそうだ。その夢の中では、Aは廃墟のような町におり、誰かを探しているようで、倒壊している廃屋の瓦礫を動かして探し物を続ける夢らしい。

A「それが妙にリアルな夢で、目が覚めた後も、舗装されていない道を走った感覚とか瓦礫をどかした時の腕の疲れとかが、何となく身体に残っているんだよ・・・」

俺はAのその話を聞いて、自分が見る奇妙な水路の夢も話した。
Aは俺の話を聞いて、うぅん、と唸って黙り込んでしまった。

0057キズアト2023/02/07(火) 10:34:24.241ID:cg/foxrt0
すると、それまで俺とAの話を静かに聞いていたDさんだったが、俺も変な夢見るよ、ぐふふっ・・・、と言った。

Dさんは2〜3日おきにその夢を見るようで、夢の中では、右腕のコブが何倍にも膨れ上がって、それが、2回に1回はSさんの顔に、2回に1回はなんと、あの日山で遭遇したあいつの、皮膚がでろんでろんに垂れた顔になるのだそうだ。
Sさんの顔になる場合には、近況を話したり、普通の世間話をするらしい。
山のあいつの顔になる場合には、Dさんはそいつを倒そうと床や壁にそいつの顔を叩きつけるのだが、しばらくすると、山中で聞いたあの声を発するのだそうだ。それを聞くと、やはり全身が恐怖感で震え、また山中で遭遇した時のような荒縄でこすって絞り上げるような痛みが全身の何か所にも表れるのだそうだ。恐怖心や痛みで悶絶していると、そいつはさらに、あの声を発して追い打ちしてくるらしい。Dさん曰く、だいたい3〜4回聞くと限界になって失神して目が覚める、とのことだった。

0058キズアト2023/02/07(火) 10:36:57.950ID:cg/foxrt0
その話を聞いてAは、やっぱり山で遭遇したあいつから何か影響を受けたんだと思う、と言った。

俺は何と返すか迷ったが、Aは、人間に悪さをする何かの影響を受けたのなら、そういったものの専門家に相談するべきだと言った。専門家?と聞き返すと、そういう伝手があるから3人で揃ってそこに行こう、と言った。

俺は、Aの真剣な様子を見て、分かったと言い、Dさんはぐふふっ、と笑っていたが、特に拒否する様子は無かった。
Aは、Dさんの直近のバイトシフトを確認すると、極力ラーメン屋に迷惑をかけないよう、全員の空いている時間が揃っている時に行けたらと思うが、相手の都合もあるから今の段階では何とも言えない、と言い、その会話は終わった。

そのまま何かの会話が盛り上がることもなく、それぞれが頼んだ飲み物が空になった頃、その場はお開きとなった。

夕方、Aから届いたメールには、2日後、朝7時に車で迎えに行く、と書いてあった。

0059キズアト2023/02/07(火) 10:50:58.421ID:cg/foxrt0
2日後の朝。迎えに来たAの車には、既にDさんが乗っていた。Dさんは後部座席にいたので、俺は助手席に乗った。

車が走り出してすぐ、俺はAにどこに行くんだ?と聞いた。
Aは、隣の市に自分の家とゆかりの深い神社があるから、そこに向かう、と言った。
Aはすでに、おおむねの経緯は電話で先方に伝えているらしい。そして、お祓いをしてもらう約束をしているようだった。

Aは最初は、幹線道路を制限時速ぎりぎりで飛ばしていたが、30分ほど走ると道を折れて、細い道に入っていった。道を折れてすぐには、多少民家もあったのだが、しばらく走ると周りは木ばかりになっていた。その道は片道1車線でカーブが多く、分岐もあったが信号や横断歩道はなかった。人間が歩けるスペースもわずかにあったがガードレールはなく、普段から人通りはなさそうな雰囲気だった。

0060キズアト2023/02/07(火) 10:53:46.180ID:cg/foxrt0
次第に道は上り坂になっていき、山道になっているようだった。他に通る車は一切なく、俺は窓の外で流れていく景色を見ながら、ずいぶん奥まったところに行くんだな、と言った。

それに対してAは、「この山に入る手前辺りからもう隣の市に入っているよ。あとは道なりに30分くらいかな」と返してきた。俺は、そんな山奥の神社に参拝客なんてくるのか?と疑問に思った。
するとそれを察したのかAは、人を集めるための神社じゃないんだ、と呟いた。
つまりは、一般人がお参りするための神社ではなく、お払いだとかお清めだとか、そちらに特化した神社なんだそうだ。

そんな話をしながら後部座席をちらりと見ると、Dさんはあの肝試しの夜に持っていたのと同じリュックを胸に抱えて、眠っていた。

0061キズアト2023/02/07(火) 10:55:15.433ID:cg/foxrt0
8時を15分ほど回ったところで、車が鳥居をくぐり抜けた。Aは、寝ているDさんに向けて、少し大きな声で、もうすぐ着きますよ、と声をかけた。そのままさらにもうしばらく進み、2個目の鳥居をくぐった先に、広いスペースが表れた。Aはそこの端に駐車するとここです、と言った。

車を下りて手を清めたところで、Aは「少し歩くと社務所があります。まずはそこに行きましょう」と言って、先頭を切って歩き出した。

Aが社務所と呼んだ建物は、広場から伸びる細い道を歩くと、5分もせずにすぐに目についた。
雰囲気としては、いわゆる普通の神社でお守りなどを売っているような建物だった。そしてその向こう側に、おそらく本殿であろう大きな建物が建っているのも見えた。

0062キズアト2023/02/07(火) 10:56:05.139ID:cg/foxrt0
社務所の勝手口のようなところには呼び鈴があり、それをAが押してしばらく待つと、中から20代後半くらいの、いわゆる巫女さん服の女性が出てきた。Aが、9時に約束していた〇〇(Aの苗字)です、と言うと、女性は、伺っております、どうぞ上がってくださいと言って、中に通してくれた。

0063キズアト2023/02/07(火) 10:58:47.653ID:cg/foxrt0
俺は、印象からその扉を勝手口だと思い込んでいたが、中に入ると20足分以上入るシューズロッカーにびっしりとスリッパが用意されていて、多くの人が出入りする出入口なのだと気付いた。
廊下はまっすぐ伸びていて、左右にいくつか部屋があるようだった。
俺たちが通されたのは、そんな中の一室だった。

その部屋は、端にソファ、真ん中あたりに大きめのラウンドテーブルがあり、テーブルを囲うように4脚の椅子があった。
とんでもなく山奥まで来たと思っていたが、電気は引かれているようで、天井の照明によって部屋全体が明るく照らされていた。
女性は、ではこちらをお願いします、と言ながら机に鉛筆と小さな紙を置いて、後ほどまた伺います、と言って部屋を出て行った。

0064以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2023/02/07(火) 10:59:27.484ID:TwZ3bkzi0
やっぱり寺生まれってすごい!

0065以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2023/02/07(火) 11:00:07.377ID:dw99CbR70
長すぎて読む気がしない

0066以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2023/02/07(火) 11:00:28.928ID:cLZMge0Ld
全然読む気が起こらない

0067キズアト2023/02/07(火) 11:01:01.963ID:cg/foxrt0
Aは早速その紙に何かを書くとDさんに渡して、住所と名前を書いてください、と言った。Dさんが記入したあと、俺も自分の住所と名前を書き込んだ。

それからしばらく待たされた。
待っている間、Dさんは一人でソファに座っていた。俺とAは、机のそばの椅子に座り、大学の後期の講義の話なんかで時間を潰していた。
10分ほどそうしていただだろうか。
部屋のドアをノックする音が聞こえ、Aがどうぞ、と言った。

0068キズアト2023/02/07(火) 11:03:18.639ID:cg/foxrt0
扉が開き、そこには先ほどの女性と、その後ろには、50を超えたくらいだろうか、白髪混じりの髪の面長な男性が立っていた。いわゆる神主さんの袴姿といった服装であり、俺は、見た瞬間にこの人がお祓いをするのかな、と思った。

Aが席を立ったのを見て、俺とDさんも何となく席を立った。そしてAが、よろしくお願いします、と言って頭を下げたので、俺たちもそれに倣った。

A「本日はお時間をとって頂きありがとうございます。また、お約束より早く着きすぎて申し訳ございません」
神主「時間はね、朝は早い分には構わないよ。遅れてきてずれこんで、次の人と鉢合わせになったりするのは良くないんだけれど。朝一で早いのは大丈夫」
A「ありがとうございます」
神主「時間までただ待つのもなんだしね、準備はできているし、もう始めてしまおうか」
A「分かりました」

俺たちはAに促されて、女性と神主さんの後に付いて歩いた。名前を書いた紙は、Aが女性に渡していた。
廊下の突き当りまで進むと、2階へつながる階段があった。

0069キズアト2023/02/07(火) 11:05:45.782ID:cg/foxrt0
2階は1部屋のみのようで、50人以上は入れそうな広い空間だった。その部屋を横切り、ガラス戸を開くと、ベランダのようになっている場所に出た。そしてそのベランダからは、さしずめ、屋根付きの渡り廊下とでも呼ぶべき通路が、木々が生い茂っている林のような場所の中へ延びていた。

渡り廊下は、何度か折れたり、ゆるやかなカーブがあったり凸型になっていたりとしていて、歩けば歩くほど方向感覚がなくなり元の社務所の方向が分からなくなっていった。5分以上そんな通路を歩いた頃だろうか。渡り廊下の先の方に、廊下とつながる建物が遂に見えた。それは最初、社務所の奥に見えた本殿だろうな、と思った建物だった。

俺は、社務所の出入口から出て、外を歩いて本殿までまっすぐ行けばもっと早く着くんじゃないか、とも思ったが、わざわざこんな長い通路を歩かせることにも、きっと意味はあるのだろうと、一人で納得していた。

0070以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2023/02/07(火) 11:06:52.409ID:H4fHyHudp

0071以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2023/02/07(火) 11:07:38.678ID:NcqgLYqw0
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0072キズアト2023/02/07(火) 11:07:51.870ID:cg/foxrt0
本殿に入ってすぐ、神主さんは、あとは彼女に案内してもらって、と言って俺たちと別れた。女性はそのまま俺たちの先頭を歩き、建物の中を進んだ。
少し進んですぐに、女性がどうぞ、と言ってひとつの部屋の扉を開けた。その中は、20畳ほどの広さがあり、壁側に祭壇や神棚があり、それと向かい合うように3枚の座布団が並べられていた。座ってお待ちください、というと、女性は歩き去った。

俺たちは何となく、Aが真ん中かな、という雰囲気で、祭壇に向かって右から俺、A、Dさんの順で座布団に座った。
Aは小声でDさんに何か言うと、Dさんは頷いて、リュックから3本の懐中電灯とリンゴのマークの携帯端末を取り出して、Dさんの前に並べた。
俺はその懐中電灯に見覚えがあった。あの肝試しの日に俺も持っていた懐中電灯だった。

0073キズアト2023/02/07(火) 11:09:27.115ID:cg/foxrt0
何となく無言の雰囲気を感じて黙っていると、数分も経たず、俺たちが入ってきたのとは別の入口から、烏帽子を付けた先ほどの神主さんが、白い紙がぶら下がってついている棒を手に部屋に入ってきた。
神主さんは、何方向かに礼をしてから扉を閉めて、その雰囲気からすでに、お祓いが始まっていると感じさせるものがあった。俺はどうしたものかと思って困ってしまったが、Aの方をちらりと見ると、正座で背筋を伸ばし、黙とうするように目を伏せていたため、俺も真似をすることにした。

0074キズアト2023/02/07(火) 11:11:44.443ID:cg/foxrt0
最初は神主さんの衣擦れの音が聞こえていたが、しばらくすると、祝詞ってやつが聞こえてきて、また、紙の付いた棒を振るしゃらん、しゃらんという音も聞こえてきた。
祝詞は、俺にはまったく意味が分からなかったが、途中で俺たちの住所と名前が呼ばれたのは分かった。

神主さんは、部屋の中を歩いて移動したり、祝詞を唱えたり、棒を振ったりをやっていた。
そんな時間が20分か30分くらい続いただろうか。扉を開ける音が聞こえたので、俺はうっすらと目を開けて確認すると、神主さんが部屋から出るところだった。
すると今後は、俺たちが入ってきた方の扉が開き、先ほどの女性が立っていた。
こちらへどうぞ、と促されるままに後についていくと、10畳ほどの和室に通された。
そこには、座布団1つと3つが向き合うように敷かれていたので、俺たちは何となく先ほどと同じ並びで座布団に座った。
俺は、祝詞を聞いている途中ですでに一度足が痺れて胡坐に変えており、ここでは最初から胡坐で座ることにした。

0075キズアト2023/02/07(火) 11:14:30.569ID:cg/foxrt0
少し待つと烏帽子を外した神主さんが部屋に入ってきて、続いて女性も入ってきた。女性は暖かいお茶を持ってきてくれたようで、人数分の湯呑置きと、まだ湯気の立っている湯呑を並べると、軽く会釈して部屋を出た。

神主「お疲れ様でした。聞きたいこともあるでしょうし、少しお話をしましょうか」

そう言って神主さんは湯呑を手にして、軽く口を付けた。

0076キズアト2023/02/07(火) 11:16:23.591ID:cg/foxrt0
神主「今回は、4人で山に行き、そこで不思議なものに出会い、その声のようなものを聞いて、逃げて帰ってきたということでしたね」
A「ええ。そしてそれから、そのメンバーが、変な夢を見たり、怪我をしたり・・・」
神主「おひとり、亡くなられたと」
A「・・・はい」
神主「亡くなられた方には、ご冥福を祈ります」
A「この一連の出来事は、やはり山で遭遇したもののせいなのでしょうか」
神主「・・・。それが何だったのかは、私にはさっぱり分かりません。ただ、ここに来られた時、貴方たちには間違いなく悪い気のようなものが纏わりついていました。そして先ほどの儀式で、それを祓えたのは確かです」

その言葉を聞いて、俺はほっとして、じゃあもう奇妙なことは起きなくなるんですね、と言った。すると、それを聞いて神主さんはうぅん、と唸って

神主「その、山で遭遇したものから何か影響を受けたとすると、声を聞いた時と姿を見た時でしょう。貴方がたは、その時点で影響を受けていて、その後の様々なものはその後遺症という考え方もできます」
俺「・・・というと?」
神主「例えば、貴方という存在の一部が影響を受けた、あるいは傷つけられたと言い換えても良いでしょう。そうなると、傷と悪い気は、その時に受け取ったものだということです」

0077キズアト2023/02/07(火) 11:18:12.037ID:cg/foxrt0
神主さんが言うには、傷はその時その場で付いたもので、悪い気の影響が強いと治りが遅くなったり、あるいは悪化することもあるらしい。そして今回祓ったのは、あくまでも悪い気の部分であり、傷は既に、俺たちという存在に付いてしまっているのだと言う。

神主「私は専門家として出来ることはやりましたので、ここから先、何か身体に異変や不調があった場合には、専門的な対処ができるのは私たちのような職業の者ではなく、医者の先生です。病院に相談してください」

0078キズアト2023/02/07(火) 11:23:57.538ID:cg/foxrt0
俺は、神主さんに祓ってもらえれば解決するものだと思い込んでいたが、今後は医者に相談しろと言われて面食らった。それにしても、と神主さんは続けた。

神主「その異形の存在は、よほど強い力を持っているのですね。もし逃げるのが遅れていたら、恐らくみなさん亡くなられていましたよ。それにもし、貴方たちと同じように短時間の遭遇で逃げられたとしても、1人や2人で出会っていたら、間違いなく後日にみなさん亡くなってますよ。いや3人で遭遇したって、2人は亡くなるかもしれない」
A「分かるんですか?」
神主「祓った人間として、力の強さは分かります。亡くなられた方は、脳卒中とのことでしたね。4人いたから、頭と腕と胴と脚、それぞれに影響が分かれて、亡くなられたおひとりは残念でしたが、貴方たち3人は運よく生き残れたのです」

0079キズアト2023/02/07(火) 11:28:27.883ID:cg/foxrt0
俺「胴って何ですか?Sさんが頭、Dさんが腕、俺が脚なのは分かりますが・・・」

神主さんは頷いて、Aに向かって、最近身体の不調はないか尋ねた。すると

A「・・・俺自身、そのせいだとは気付いていませんでした。でも確かに、時期からするとちょうど・・・」

そう言ってAは、腹のあたりを手でさすった。
なんとAは、俺が病院に運ばれたあの日から、ずっと腹の調子が悪いらしい。うどんや素麺などの消化に良いものを食べた時はまだ大丈夫らしいのだが、揚げ物や、ラーメン屋のまかないラーメンなどを食べると、1〜2時間で腹痛になり下痢が出るのだと言う。

0080以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2023/02/07(火) 11:29:16.132ID:yIdEzt4uM
まだやってて草

0081キズアト2023/02/07(火) 11:32:01.653ID:cg/foxrt0
俺は、最近Aはやつれたと思っていたが、それは変な夢にうなされているからかと思っていた。まさか体調不良が原因だとは気が付かなかった。するとDさんが、でもSさんは命を落としたのに、Aは下痢なんて差がありすぎなんじゃ・・・、と言ったが、神主さんは頷きながらも、どのような影響をどのくらい受けるのかは、きっと個人差はあると思う、と返した。

神主「しかしそれらは間違いなく貴方がたに付けられた傷です。今後それとどう向き合っていくかは、貴方がた自身でよく考えてください」

0082キズアト2023/02/07(火) 11:36:03.722ID:cg/foxrt0
それから俺は、Dさんがお祓いの際に懐中電灯や携帯端末を取り出していたことが気になっていたため尋ねたところ、遭遇した時に手に持っていたものは、悪い気の影響を強く受けている可能性があるためお祓いしたとのことで、その時着ていた衣服や靴、ポケットの中に仕舞っていた携帯端末や持ち物などは、特にお祓いの必要はないとのことだった。ただし、気味悪く思うなら処分した方が良いとも言われた。

0083キズアト2023/02/07(火) 11:40:32.140ID:cg/foxrt0
お祓い以降、俺は水路の夢を見ることがなくなったため、お祓いの効果を実感した。
Aにも確認したが、Aもお祓い以降、何かを探す夢を見なくなったらしい。
ちなみに、件の山が心霊スポットと騒がれいたのはその年の秋くらいまでだった。それ以降は、ぴたりと怪音現象がなくなったらしい。
A曰く、もともとそんな噂はない山だったらしい。
俺たちが遭遇したあの何者かは、何処からか来て、何処かに去ったのだろうか。

あの夏の経験は以上だが、俺はその後も足底腱膜炎に悩まされることになる。
ここからはそんな俺、A、Dさんそれぞれの後日談。

0084以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2023/02/07(火) 11:41:48.745ID:TwZ3bkzi0
結局神社の女性とはセックスしたの?

0085キズアト2023/02/07(火) 11:47:29.484ID:cg/foxrt0
まずは俺の後日談。

俺は、お祓いを受けてから半年ほど経って、ラーメン屋のバイトを辞めた。
何故なら、お祓いから3カ月ほど経ってから、再び足底腱膜炎を、今度は右足に発症し、それが治った2カ月後にまた、今度は左足に発症したからだ。どちらも2週間で、痛み止めが効いていれば日常生活に戻れるくらいの早さで治ったため、初回よりやや早く快方したのは幸いなのだが、それにしてもシフトの穴あけをたびたび繰り返して申し訳なさが限界に達したので、辞めた。
それ以降は、立ち仕事や力仕事系のアルバイトはやっていない。家庭教師を軸に、短期のバイトをいくつかやった。

0086キズアト2023/02/07(火) 11:49:22.096ID:cg/foxrt0
また、その後も足底腱膜炎はたびたび発症した。いったん治っても、長くても6カ月、早いと2か月くらいで発症する。ただ、何年も繰り返しているとだんだんと取扱いには慣れてきて、最初の足の裏の違和感の段階から痛み止めを飲んでいると、めちゃくちゃ痛いのは1日か2日で済んで、10日もすれば元通りに力仕事をしたり走ったりもできるレベルまで回復する。それに気付いてからは、結構楽になった。

俺は卒業後は、大学のあった県から離れ地元の企業で働いている。
基本は座り仕事で、お客さんに呼ばれたら出ていくのと、たまに力仕事があるくらい。
足底腱膜炎が治るまでに何週間もかかっていた頃は、仕事との両立が大変だったが(というか迷惑かけていて事実上は両立は出来ていなかったかもしれないが)、上記の攻略法を発見してからは上手くやれていたと思う。
そして今回書き込んだのは、前回の足底腱膜炎から、初めて1年間再発がなかったので、ここまで回復したのかと思って記念を兼ねて書き込んだ。

0087キズアト2023/02/07(火) 11:51:18.855ID:cg/foxrt0
次はAの後日談。

Aもラーメン屋のバイトを辞めた。いやむしろ、俺より先に辞めた。
理由は、腸に穴が開いたからだ。

0088キズアト2023/02/07(火) 11:53:30.363ID:cg/foxrt0
お祓いを受けてから2週間くらい経ったある日のこと。
その日は家で家族と晩飯を食べたAだったが、食後1時間くらいして急に嘔吐して気絶したらしい。救急車を呼んで病院に搬送したところ、腸に穴が開いているとのことで、そのまま入院になった。
Aは、医者の判断で外科ではなく内科への入院となり、点滴と投薬の日々を過ごしていた。
そして医者との相談の上で、立ち仕事は身体への負担が大きいということで、バイトを辞めた。

0089キズアト2023/02/07(火) 11:55:28.599ID:cg/foxrt0
もともとAは、お金には困っていなかった。家がすごい裕福だったのだ。

何でも、俺が下宿していた地域に開発で家や団地が大量に建つ前から、ある程度の住民はそこに住んでいたらしい。そしてAの家は、そのあたりでは1、2を争うほど広い土地を持っている家で、名士として知られてた存在だったそうだ。そして開発の際に多くの土地を売り渡して、多額の財を成したらしい。だから今でも、もともと住んでいた住民の中でも特に開発前の時代を知っている世代からは、昔と同じように地元の名士のように扱われているらしい。
その話を、Aの高校の同級生から聞いたとき、俺はある意味納得した。親に軽自動車を買ってもらったり、お祓いに強い山奥の神社と2日後に約束を取り付けたりなど、そういうったバックボーンがあれば全て納得がいくからだ。

0090キズアト2023/02/07(火) 11:57:41.933ID:cg/foxrt0
ただしAの両親は、社会勉強のためにアルバイトをするのは良いことだと言うので、それに従ってAはラーメン屋で働いていたのだそう。だから、健康上の仕方がないことが理由だったので、辞める際にはあっさりしたものだったらしい。

俺は何度かAの見舞いに行ったが、もともと細身のAがげっそりと痩せていて、見ていて痛々しかった。
今思えば、肝試し以降の腹の調子が悪かったのは、腸に穴が開く兆候だったとしか思えない。もしお祓いに行くのがもっと遅く、神主さんの言う悪い気の影響というやつをたくさん受けていたなら、もっと酷いことになっていたのかもと思うとぞっとした。
結局Aは、1か月と少し入院した。

0091キズアト2023/02/07(火) 11:59:14.270ID:cg/foxrt0
ちなみにAとは、ラーメン屋を辞めた後も友人関係は続いた。
連絡をとって遊びにも行くし、大学で会えば話す。俺の足底腱膜炎が再発した時には、食料を買ってきてくれた。

卒業後も、今も関係は続いている。
俺が地元で就職してからは、特に俺が車を買ってからは、俺が運転して遊びに行く形でたまに会っている。
俺の車をAの家のAの軽の隣に停めさせてもらって、それからAや大学時代の友人たちと、飲みに行ったり遊びに行ったりして、そのままオールか、Aの家に泊まらせてもらうか、という感じ。

0092キズアト2023/02/07(火) 12:00:55.655ID:cg/foxrt0
関係ない話だが、俺は、Aの軽が停まっている場所を、最初は駐車場だと認識していたのだが、A曰く、家族の使う正式な駐車場は別にあって、厳密にはその場所は駐車場ではなく前庭らしい。
車を買ってもらう際に外壁や庭の一部に手を入れて、車で入れて停めれるようにいじったらしい。
言われてみれば、そこはAの軽しか停まっていないのだが、金持ちのAの家に軽1台とは考えづらい。
なんでここに停めてるの?と聞いたら、その方が家の建物に近いかららしい。

0093キズアト2023/02/07(火) 12:04:26.501ID:cg/foxrt0
ちなみに、Aと飲みに行く場合には、Aは最初の1杯はアルコールだが、その後はソフトドリンクだ。今でも腸は完治した訳ではなく、また穴が開く可能性もあるそうで、アルコールや刺激物は控えるように医者に言われているらしい。
そして飲み始めてから1時間か1時間半経つと、Aはトイレに立つ。
初めのころは大丈夫か?と毎回聞いていたが、Aはいつも、いつものことだ、と言うので、もうそれは、Aの人生から切り離せないものなのかもしれないと思っている。

またちなみに、最初に腸に穴が開いたとき以外でも、それの後遺症に関連したことでAは一度入院している。

0094キズアト2023/02/07(火) 12:08:40.940ID:cg/foxrt0
そして、A絡みで残っている最後の怖い話。
俺はいまだにAに聞けないことがある。

あのお祓い、いくらだったの?

縁のある家の人間だからと言って、お祓いってタダで受けれるものじゃないよな?
あの時、1回分なのか3人分なのかは分からないが、払ってたんじゃないかと思うのだが。
直接「代金」って形ではないにしろ、「寄付」とか「玉串料」とか名目が違うだけで、何かは発生していたと思うのだけれど、俺は未だに、それをAに聞けない。
就職して貯金もあるし、100万円くらいならさっと出しても大丈夫なのだが、もし聞いて俺の負担分の金額が5倍とか10倍だったら払えない。
とは言えいつまでも先延ばしにしたくないので、次にAに会う時か、次の次の時にかは聞いてみようかなと思っている。

0095キズアト2023/02/07(火) 12:10:53.049ID:cg/foxrt0
そして最後はDさんの後日談。

俺が最後にDさんと1対1で話したのは、2回目の足底腱膜炎と3回目の足底腱膜炎の間の時期で、シフトが被った時だ。
Dさんは、お祓い以降もずっと右腕の包帯を巻いていたため、気になって、その腕のコブはまだ治らないんですか?と聞いたのだ。

するとDさんは、「これ?・・・医者は切除しろって言うけどさ。・・・これがあれば週に1回くらいは夢でSさんに会えるんだからさ。これはそのままだよ。ぐふふっ・・・。週1であいつが出てきたとしても、切らないよ。取ったりしない。Sさんと話したいから・・・」と言って、そのままぶつぶつ呟きながら歩き去った。

その頃のDさんは、ほとんど誰とも会話しないし、目の下にクマが出来ており、口の端に泡が溜まっていて喋るときに飛ばしていて、正直怖い雰囲気だった。だから俺は、それ以上何かを聞くことはできなかった。
ただ、Dさんはまだ悪夢にうなされているんだ、ということを知った。

0096キズアト2023/02/07(火) 12:14:31.162ID:cg/foxrt0
そして大学を卒業してから何年後か。Aと飲んでいる時の話だ。
俺とAは、あの肝試しの話をすることはほとんど無かったのだが、飲みの席で他の連中が輪になって盛り上がっており、俺とAだけ加わり損ねたタイミングがあったので、その時にずっと気になっていたことを聞いてみた。

俺「Aさ。大学2年の時の肝試しのこと覚えてるか?」
A「ははっ、当たり前じゃん。たぶん一生忘れないよ」
俺「俺さ、ずっと気になってたことがあるんだけれど」
A「なんだよ」
俺「あの日、最初3人で肝試しに行こうって話をしてたんだよな?でもAが、俺も連れて行こうって言ったんだよな?別にそれ自体は良いんだけど。結果的には4人いたことで影響が分散して、俺たち3人は命があったんだろうし」
A「そうだな」
俺「でもAは何で俺を誘ったんだ?4人いたから・・・、ってのは、後から神主さんから聞いた話だよな。そもそもは、何であの時俺を誘おうと思ったんだ?」

それを聞くとAは苦笑いを浮かべた。

A「お前ほんとうにニブイよな」

0097キズアト2023/02/07(火) 12:20:40.461ID:cg/foxrt0
俺「何の話だよ?」
A「Dさんはさ、Sさんに気があったんだよ。肝試しってのも夜に一緒にでかけたい口実だったんだよ」
俺「え?そうなの?」
A「そうだよ。で、俺は車係。そんな状態で3人で行ったら、Dさんに気を遣ってなるべくSさんとくっつけようとしなくちゃいけないじゃん。そうなったら俺、2人の後方で1人で肝試しだぜ。それは流石に嫌だったんだよ」

俺はその話に驚きつつも、腑に落ちる感覚があった。Dさんが腕のコブにこだわっていたのは、確かにそれが理由ならパチリとピースがはまる。

0098キズアト2023/02/07(火) 12:22:08.582ID:cg/foxrt0
俺はAに、Aがラーメン屋を辞めた後に、Dさんが医者の忠告を無視してコブを切除していなかったこと、そしてそのせいか、お祓い後もDさんの悪夢が続いていたことを伝えた。

俺「DさんがSさんを好きだったなら、ある意味では納得するわ」

しかし俺の話を聞いた途端、Aは深刻な顔をして黙ってしまった。

俺「どうかしたのか?」

しばらく、まさか・・・、とか小声で言っていたDだったが、やがて、「今の話を聞くまで、自分の見間違いだと思っていたんだが。」と口を開いた。

0099キズアト2023/02/07(火) 12:24:28.190ID:cg/foxrt0
A曰く、お祓いの際に退屈したAは、目を開けて神主さんの動きや周りのものを見ていたのだと言う。ちなみに俺は、Aが最初に目を閉じていたからそれに倣ったのでそれを言ったのだが、別に目を閉じなきゃいけないなんて決まりはないよ、と言われてがっくりときた。

そして、その時にAが見たDさんの前に置かれていた携帯端末が、後日にラーメン屋の休憩室でDさんが手にしていた携帯端末と違ったような気がするのだと言う。

A「色は確かに同じなんだけどさ。大きさが違ったような気がして。んで、気になってDさんに、その携帯端末ってこないだお祓いしたやつですか?って聞いたんだよ」

するとDさんは「うるせぇ、知らねーよ」と言って、トイレに立ったらしい。

0100以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2023/02/07(火) 12:25:06.059ID:HhbjJ/Lsr
お前だー

0101キズアト2023/02/07(火) 12:29:52.925ID:cg/foxrt0
俺「それって、どうういうこと?」
A「Dさんあの頃さ、ちょうど携帯端末を買い換えたって言ってたじゃん」
俺「ああ。肝試し行く車の中でSさんと話してたよな」
A「もしDさんが、夢の中でSさんと会うことにこだわっていたなら、あのお祓いの時の携帯端末は、Dさんのひとつ前の古い端末だったのかもしれない」
俺「えっ!?」
A「俺さ、お祓いの日程が決まった後に、電話でDさんに伝えたんだよ。あの異形と遭遇した時に手に持っていたものは影響を受けている可能性があるから、神社まで持ってきてくれって」
俺「・・・そうだったのか」
A「でも、夢でSさんと繋がりたかったDさんは、腕のコブと同じように、携帯端末も残すことを考えたのかもしれない。でも何も持って行かないと色々聞かれるだろうから、代わりに、自分が使っていたひとつ前の端末をお祓いに持って行ったのかもしれない」
俺「・・・」
A「それによく考えるとさ。Dさんって基本、バイトの休憩時間も携帯端末触ってることが多かったよな?」
俺「ああ」
A「でもあのお祓いの日、山の中は電波が悪かったとしても、行きの車の中でも帰りでも、一度もDさんは端末を触っていなかったように思う。それって買い換えて使わなくなっていた古い端末だったから、ってことなんじゃないか?」

俺は驚愕して何も言えなくなってしまった。
Aは、でも自分の見間違いかもしれないし、本当のところは分かんないよな、変なこと言ってごめん、と続けた。その話はそこで終わった。

0102キズアト2023/02/07(火) 12:31:59.183ID:cg/foxrt0
ちなみにA経由の噂では、Dさんは卒業後、大学と同じ地域の企業の就職したが、人間関係のトラブルで1年経たずに退職し、それ以降は実家に引き籠っているらしい。

Dさんは今も、週に1回、夢の中でSさんに会うために、腕のコブを切除していないのだろうか。
お祓いしていない携帯端末を大切にしているのだろうか。
そして、夢の中で、あの山で遭遇した異形と対峙し、あの声を聞かされているのだろうか。
俺は知らない。

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