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短編:人生最期の
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2024/04/13(土) 04:28:11.332ID:bdY+ZXMbM
今日こそ首を吊ろう…幾ら仕事の出来ない俺でも、途中で帰らされるなんて初めてだ…もういい…俺なんかが良く頑張った…少し良い晩飯を食って、一杯飲んだら、ウチで首を吊ろう
俺は午後の繁華街を歩いていた。ファミレスのガラスに映った自分を見る。
ダサい……スーツを着れば誰でも男前になるんじゃないのか?
などと考えていると
「ナァーオ」
猫の声がした。ファミレスの隣にある店に視線をやる。その前に白い猫と黒い猫が座って居た。
「ナァーオ」白い猫が店に入っていく。黒い猫も「ムゥ」などと言いながら後を追った。なんとなく俺もそれに続いた。
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2024/04/13(土) 04:28:51.825ID:bdY+ZXMbM
「古本屋か…」
店内は三列の本棚が奥へ続いている。お客同士がすれ違うのがやっとな狭さだった。
「なんか…薄暗いなーと言うか小汚い…」
奥行きも大して無い店だ。すぐ本棚の角を曲がった。
やべっ店員居るし…聴かれたか?今の
コの字の通路の一番奥にレジがありカウンターの奥には眼鏡の青年が座っていた。
なんだコイツ…客が来てんのに挨拶もしねえ
コーヒー飲みながら読書中かよ。ドコにでもダメな奴は居るもんだな…
店員に背を向けて棚を眺めてみる。
地図コーナーかー隣は…地図地図…地図コーナー広くねーか?後の棚ーも地図?何だこの店?
「あのー店員さん、なんか地図ばっかりですね?」
店員に声をかけて見る。
「ええ。〈地図屋〉ですから。」
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2024/04/13(土) 04:29:36.177ID:bdY+ZXMbM
目線は本に向けたまま店員が答える。
見た目の割に声落ち着いてんな…てか態度わりぃ
「地図屋さんですかあー」なんだよソレ
「なんかオススメの地図ありますかあ!?」
ムカツクからコイツに少しは接客させてやれ!
と思ったが、店員はコチラを向かない。
「お客様の目に止まった地図をお薦めしています。」
は?「あーそっすか!」
俺は言いながらカウンターを横切り、外に向かう。
店員にまで馬鹿にされんのかよ俺は!地図なんかいらねーよロープ買いに行かなきゃいけねーのに時間無駄にした!
「ナァーオ」猫達が立ち塞がる。
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2024/04/13(土) 04:30:21.831ID:bdY+ZXMbM
「ちょっとどいてくれよ!」しゃがみながら声をかける。ホント汚い店だ!
「ん?」本棚の低い位置にある背表紙が目に止まった。
〈人生最期の地図〉
「シロちゃんはコレがオススメってか?分かった買ってやるよ!いい加減にしてくれよな!」
地図を手に取りカウンターへ放りなげる。
「幾ら?」
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2024/04/13(土) 04:30:45.010ID:bdY+ZXMbM
「千円です。もしくは替わりに地図を頂戴しています。」店員はコーヒーをカウンターと反対側にあるテーブルに置き、隣に栞を挟んだ本を並べた。
「あーそう!」財布から千円札を出し放る。
コイツの座ってるスペースだけやたら綺麗にしやがって何もかもムカツク
俺は〈人生最期の地図〉を手に取り、猫のいない通路から早足で外に出た。
「ありがとうございました。」
後ろから落ち着いた声が聴こえた。
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2024/04/13(土) 04:33:00.067ID:Cwv6QTuX0
終わり

どうだった?
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2024/04/13(土) 04:33:43.120ID:bdY+ZXMbM
イライラして仕方ねえ!
なるべく早足で地図屋から離れていく。
頭の中がゴチャゴチャして、何も考えられねえ!
自分でドコに向かってるのかも分からない。
バス停のベンチがあったのでとりあえず座った。
「何でこんなのに千円出してんだよバカ臭え!」
俺は言いながら少し涙目になっていた。誰かに見られる前に目を伏せて擦る。
自然を装う為に〈人生最期の地図〉を開いてみた。
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2024/04/13(土) 04:34:32.110ID:bdY+ZXMbM
地図…?いやスクラップブックだ。旅行雑誌の。マジでぼったくられた!
何ページかめくってみる。
確かに観光地のアクセスマップみたいなのが一杯貼ってあるな。ところどころペンで書き込みがしてある。
その中で赤くグルグルに丸付けされたマップがあった。『ここでコーヒー飲む!』とか手書きしてある。
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2024/04/13(土) 04:35:00.865ID:bdY+ZXMbM
アクセスは
『↑東浦バス三系統、飛山遊歩道口行終点下車、徒歩三十分。』とある。
プシュー!「なんだ!?」驚いて振り返る。
「東浦バス三系統、飛山遊歩道口行です。」バスが到着していた。
「乗られますかー?」運転手が声をかけてくる。
「は…はい!」つい返事をしてしまい、バスに乗り込んだ。
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2024/04/13(土) 04:35:54.531ID:bdY+ZXMbM
なんだなんだ俺は何をやっている?
フラフラと一番左後の席に座る。
「発車します。手摺やつり革にお捕まりください。」ぶー!
バスが動き始めた。俺は車酔いし易いので、地図は鞄の中にしまった。
そんなタイミングで雑誌のバスが来るか普通?
混乱して乗っちゃったよ!どうする?このまま乗るか?
窓枠に頬杖をつき、外を眺める。歩道には行き交う背広の男達。俺のようなダボついた物を着ている奴は居ない。この時間の街の主役は奴らだ。
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2024/04/13(土) 04:36:19.256ID:bdY+ZXMbM
俺といえばまあ情けない。毎日同じことで叱られ、『やる気がないなら帰れ!』だと…
そこで帰ってしまうのはセイゼイ新入社員だろう。しかし今回は耐えられなかった。半年前に入社した後輩も俺を馬鹿にしている頃だろう。
俺はいつ間違えた?飲み会で調子に乗った日?就活?いやもっともっと前、公園の砂場でオモチャを奪われた時からずっと負け犬です
車窓の景色はボヤけ、頬杖には涙が伝っていった───────────
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2024/04/13(土) 04:36:50.323ID:bdY+ZXMbM
────────────「お客さん?お客さん!終点ですよ!お客さん!」運転手の顔が目の前にあった。
「え?あ?スミマセン!スミマセン!」
慌ててバスから降りる。
寝ちゃったか…
〈飛山展望台まで約三十分〉の看板が目の前に有った。
…ココまで来たら上がるしかないな…
まだ夕方には早いが、降りてくる頃には日は落ちてるだろう。
目の前の丘を上り始める。住宅地に囲まれた広めの公園といった具合かな。遊歩道はコンクリートで舗装されているとはいえ、革靴では少し疲れそうだ。
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2024/04/13(土) 04:37:39.297ID:bdY+ZXMbM
斜面の木々には夏の青さは無く、本格的に紅葉すればココも綺麗かもしれない。
丘の南を上がっているが木陰に入ると肌寒い。
「上にホットの自販機あるかなー?」
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2024/04/13(土) 04:38:14.064ID:bdY+ZXMbM
───────────────
二十分ほど歩いた。青い自販機があったのでラインナップを見てみる。
『あったか〜い』ドリンクが並んでいる。
なんとなく青い缶コーヒーを押す。
「アッチぃ!」缶がでて来た。取りあえず、スーツのポケットに入れる。
どうやらココが山頂広場らしい。まん中にコンクリで出来た三階建ての展望台がある。
「そこがゴールですかい」
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2024/04/13(土) 04:38:46.723ID:bdY+ZXMbM
一番上に上ると木製のベンチが並んでいた。
背中の鞄を下ろし、
「ふぅ。」深く腰掛け、背もたれにもたれる。
コーヒーが冷めるまで地図を見返してみるか
鞄から取り出し、改めて広げる。
読み飛ばしていた書き込みは訪れた時の思い出が綴られていた。
「あんまり遠いスポットは無いんだなセイゼイ隣県くらいまでだ…ん?」最後のページに数枚写真が貼り付けられていた。
「同じおじいさんとおばあさんのツーショットばかりだ。夫婦かな」いや…ツーショットじゃなくおばあさんだけの写真もあった。
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2024/04/13(土) 04:39:38.039ID:bdY+ZXMbM
「………コーヒー飲も。」
ポケットから出した缶はあたたか〜い程度の温度になっていた。
「いつもならブラックにするのに…糖分が不足してるのかな」カキョッ。俺は顔を上げた。
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2024/04/13(土) 04:40:21.987ID:bdY+ZXMbM
「……………………………………」
でっかいオレンジの夕陽が山の稜線に沈んでいく。その手前に見える街はオモチャくらい小さかった。
俺はコーヒーを飲んだ。
「はぁ〜〜〜………おじいちゃんいいセンスしてるよアンタ」
太陽が沈むのって思っているよりずっと速い
空のオレンジと紫の境界線のアレは金星かな?
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2024/04/13(土) 04:40:43.740ID:tEJ98GY+0
おっ
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2024/04/13(土) 04:41:04.706ID:bdY+ZXMbM
ゴクリ。「ふぅ〜〜〜アホらしくなったわ。仕事辞めても俺の人生辞める必要はないよな」
「…………てかやべ!日沈んでんじゃん!降りよう降りよう!」コーヒーを飲み干し、地図を鞄にしまった。
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2024/04/13(土) 04:41:31.923ID:bdY+ZXMbM
何故だかこの後〈人生最期の地図〉が見つかる事は無かった。


終わり。



お話:おれ
2024/4ニュー速VIP
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