細胞内にある特殊なたんぱく質と亜鉛が結合すると老化を遅らせる作用を持つことを、線虫を使った実験で突き止めたと、京都産業大の永田和宏・名誉教授らのチームが発表した。老化に伴うアルツハイマー病などの予防研究につながる可能性がある。論文が8日、科学誌「セル・リポーツ」に掲載された。

 このたんぱく質は、細胞の中で様々なたんぱく質を作り出す小胞体という小器官にのみ存在する「ERp18」で、機能は不明だった。

 チームは、ERp18が亜鉛と結合しやすい構造をしていることに着目。実際に結合させたところ、老化を引き起こす活性酸素を分解することがわかった。長さ約1ミリの線虫の体内でERp18を働かせなくすると、細胞の老化が進み、人に換算すると11・4歳寿命が短くなった。

アルツハイマー病や動脈硬化、心不全、腎障害などは活性酸素の増加が一因とされ、線虫の実験で示された老化への影響は、人にもつながると考えられる。

 チームの 潮田亮 うしおだりょう 准教授は「小胞体の中は元々亜鉛が少なく、食事で亜鉛を取るだけでは効果がない。小胞体の中の亜鉛を増やしてERp18と反応させることができれば、病気の予防や治療に役立つのではないか」と話す