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ξ゚⊿゚)ξ雨垂れに紫煙が燻るようです
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2022/09/13(火) 17:50:31.478ID:ySNMbRfK0
たて
0002以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
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2022/09/13(火) 17:51:34.415ID:ySNMbRfK0
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開け放たれた玄関から湿り気を帯びた風が入ってくる。
時期は梅雨に入るだろう。
換気の為と思って部屋の窓を全開にしていたが湿度が煩わしかった。

ξ゚⊿゚)ξ「あ……」

すっかり部屋の空気もよい具合になり、玄関の扉を閉めようとした時だった。
ふと視線を落とすと、そこには羽を畳み休んでいる蛾の姿があった。

ξ゚⊿゚)ξ「……梅雨が過ぎれば、もう夏ね」

私は呟いて扉を閉める。
蛾を残したまま、私は扉を閉めて、目を伏せてリビングへと戻った。
背に冷たい感触があるような気がして、それを拭うようにかぶりを振る。

ξ゚⊿゚)ξ-~「はぁー……」

身についた習慣のまま煙草を咥えて火を灯す。
煙を喫みこみ、咽喉の疼きを感じ、堪えていた息と共に煙を吐く。
一連の動作を嫌う人々もいる。ニオイからして嫌悪の対象だともいう。

梅雨の迫った部屋の中は換気を終えたばかりなのに、湿気た空気に煙草のえぐみが加わってしまう。
顔を顰める誰彼もいるだろうか。眉根を寄せて直ぐに火を消せという人もいるだろうか。
0003以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
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2022/09/13(火) 17:51:58.097ID:YjSb+ms60
0004以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
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2022/09/13(火) 17:52:30.415ID:ySNMbRfK0
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ξ-⊿-)ξ-~「……蛾、か」

私はそれらの反応を気にもしない。
若い女が煙草なんぞと言われても知ったことではない。

一つの儀式であり、これは呪いにも等しい。それを業と呼ぶことも出来るかもしれない。
この火が消えることはないし、頭上に渦巻く紫煙が霧散することもない。


『ねえ、少しは量を減らしてみたら?』


それは幻聴だったろう。私は薄く目を開いてみる。
私はイスに座っている。リビングのテーブルにいる。
その向かいに誰もいないのに、私は分かりきっているのに、目を開いて現実と対峙する。

ξ゚⊿゚)ξ-~「……お腹すいたなぁ」

私は煙草を咥えたまま、煙を吹きながら、火種を宿したままに虚空に言葉を向ける。
この煙草の火が消えることはない。某かの言葉も態度も反応も全て私を強制出来やしない。

例えば燃える火に羽虫が集まるように、それは自然なことだ。
私は煙の中でしか私を確立出来ない。そしてその火を越えて、私は私に到達することも出来ない。
0005以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
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2022/09/13(火) 17:53:02.576ID:ySNMbRfK0
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例えば燃える火に照らされる羽虫の中に、蝶がいて、蛾もいたら。
私はその羽を燃やし、二度と飛べぬようにと出来たかもしれないのに。






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0006以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
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2022/09/13(火) 17:54:42.271ID:ySNMbRfK0
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孤独を好いていた人生だったと私は思う。

幼少期から人と触れあったり馴れ合ったりするのが苦手だった。
煩わしい気持ちがあって、群れて行動することも面倒で仕方がなかったし、
無理に他人と趣味嗜好を共有するだの同調するだのが堪らなく嫌だった。

テレビに映るアイドルの誰彼のことだとか話題のポップスだとか、
流行りのファッションだの今年のトレンドカラーだのに振り回されるのが嫌だった。

だから中学生くらいの時分から他人を避けてみたり、半ば不登校のようにもなっていた。

煙草はその時分からの習慣だった。
煙のニオイを纏って登校すると子供であれ大人であれ私という人間を理解せざるを得ない。

つまり、私という子供は少数派だとか忌み嫌われるような立場で、
切っ掛けとするように、以降の私に関わろうとする人は激減したと思う。

では不良だったかと言えばそれも違う。所謂ヤンキーと呼ばれる人種も嫌いだった。
喧しいし横柄な態度は率直に言って癪だ。威圧するような大声も過度な香水のニオイも嫌悪に値する。
何度か絡まれもしたし、危ない目に遭ったような気もするが、そういった対処も何となくで出来ていたと思う。

『あの女、生意気だわ』

『鼻持ちならんわね』

『高飛車だとかという話しの程度じゃないのよ』

『そうね、まるでヒロインの気取りでいけ好かない』

次第に私の居場所はなくなった気がする。
元よりないも同然だったが、高校生活の三年間は出席日数はギリギリで、卒業を危ぶまれる位置に私はあった。
それでもなんとかして卒業は出来た。

家庭での私の立場と言うのも不思議なもので、所謂空気のような感じで、
父も母も当然のようにいたが、私に構うことは少なかったと思う。

高校を卒業し、大学へ通うことになると、彼等は私に住まいを提供し、生活は今後そちらでしてくれと簡潔に言われた。

何とも思わない私が可笑しいのかもしれない。愛情のない両親だったかというと多分そうでもない。
ただ、私が禄に反応を示さなかった結果が関係値の全てを物語るだろう。
0007以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
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2022/09/13(火) 17:55:59.720ID:ySNMbRfK0
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興味を抱くことができないでいる。
他人に、いやさ肉親を含めて、私は全ての人類を相手にまったくの無関心でしかいられない。
もしかしたら精神的な異常を抱えているのかもしれない。
だが検査の一つもしてこなかったから、これが私だという自覚を抱く他にない。

面倒だとか拒絶の気持ちが核にある。
出来るならば誰にも話しかけられたくない。

よく聞く言葉に、他者の存在なくして生きることは出来ないという。
含めて他者に優しくするべきだともいう。
尤もだろう。だがそれを理解しても尚、私は誰とも関係を持ちたいと思わない。

結論を出すならば、私と言う人間は社会不適合者であって、自分勝手で、
とても普通という枠組みの中ではまともに生きられないヒトモドキだろう。

とは言え、自覚すれども、では死ねばいいのではないかと思われようが、
或いは自己完結しようが、死ぬのは恐怖だし、そんな勇気もない。
許容される範囲で――されてはいないだろうが――私は静かに身勝手に生きてきた。

あとの人生はそのままだ。
適当な会社にでも入社してなんとなしに年老いて死ぬ。
それが完遂出来るか否かは定かではない。

ただ要領は割とよい方だったし、適当にやっていても人並以上の成果を出してきた。
そういった部分が可愛げのない人形のそれにも思われてきただろうが、能力値は生まれ持ったものだとして、
きっと私にはこの器用な能力の他に優れたものはないと自覚している。

なんとも呆れた生き物だと思う。思えども、こう生まれてしまったからにはそうやって生きていくしかない。
後悔を抱いたことはない。孤独を辛いと思ったことも同じく。
その時、その時の流れに身を任せ、私は死ぬまで面倒臭がりで生きていくしかないんだろう。
0008以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
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2022/09/13(火) 17:57:31.082ID:ySNMbRfK0
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ζ(゚ー゚*ζ「不味そうな顔をして煙草を吸うんだね、あなた」

ξ゚⊿゚)ξ-~「は?」

口先にあった煙草が感触から消え失せた時だった。
梅雨も間近な時期だったと思う。
大学一年生になった私は付近の喫煙所でいつものように呆けた感じで煙草を吸っていた。

言葉を寄越されて顔をあげてみれば、そこには今し方私の口先から奪った煙草を手に持ち、
顰め面でそれを見つめる女性がいた。

ξ゚⊿゚)ξ「あー、と……あの、なんですか、いきなり」

藪から棒に、とかいう次元の話しではなかった。
まず見知らぬ人だったし、唐突に煙草を取り上げられた事実も意味不明だった。
戸惑いつつも適当な台詞を言う私に彼女は小さく笑う。

ζ(゚ー゚*ζ「ふふっ……いやその、なんか煙草を吸う割に全然似合わない風だったから、
       なんか見かねちゃって」

ξ゚⊿゚)ξ「はぁ……」

なんのこっちゃ、というのがシンプルな感想だった。
人によっては異常者の行動にも思えるだろうし、
赤の他人によく分からない感想を述べられてお節介のような真似をされたら、それは普通に考えても気味が悪い。

しかしそうはならないのは、彼女が美女だったからだろう。

今時の風だった。
緩く巻かれた亜麻色の髪だとか濃過ぎない化粧だとか、淡い色のカーディガンにロングスカートの姿は、
婦女子の様で、顔立ちは美形だったし笑顔も愛くるしい。
0009以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
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2022/09/13(火) 17:59:29.807ID:ySNMbRfK0
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細い首や腕も、その白磁のような肌も、全身を見た感想はやっぱり今風の女性で、
声色にも悪意はなく、寧ろ無邪気な風で、気味の悪さはなかった。

とはいえ突然の行動だし、やはり面識もない他人だ。
それが嫌煙家の仕業だとしたら腑に落ちるかもしれないが、何となくそういう人種にも思えなかった。

私は首を傾げつつ懐からシガーボックスを取り出し、彼女の台詞に適当な返事をすると新たな紙巻に火を灯す。
そうしてから背を向けると、その場から立ち去るべく歩き始めるが、何故か彼女はついてきた。

ξ;゚⊿゚)ξ-~「……いやあの、何? 普通に怖いんだけど」

ζ(゚ー゚*ζ「いや、また煙草吸ってるなぁ~って。しかも歩き煙草」

よもや後をついてくるとは思いもせず、先までの印象はやはりマイナスに落ち、これは面倒な手合いだと結論した。
そうしてから、何故に絡んでくるのかと疑問を抱くが、やはりというか私特有の感性というべきか、
面倒が勝るが故に適当に済ませようとする。

ξ;゚⊿゚)ξ-~「その、煙草がお嫌いなら先ので満足したでしょう? もう済んだのならそこで終わりにしてほしいんだけど」

ζ(゚ー゚*ζ「まぁまぁ、別に嫌がらせしたいとかじゃないの。ただ何となくあなたが気になっちゃってね」

ξ;゚⊿゚)ξ-~「はぁ……?」

一体全体何事だろうかと胸中は珍しく焦燥に満ちていた。
所謂、気の触れた人物と対峙したことがない。そういう風に見えなくても彼女の行動はどう考えても普通とは違う。

何故か隣に立ち私の歩幅に合わせるように歩みを続ける美女。
紡がれた台詞に理解が及ばないと思いつつ、さてどう切り抜けるべきかと考えた。

ζ(゚ー゚*ζ「ツンデレさんだよね、あなた」

ξ;゚⊿゚)ξ-~「え、あ、はい」

ζ(゚ー゚*ζ「同じ大学の同期なの。いつかの授業で見た気がしたから何となく覚えてたんだけど」
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2022/09/13(火) 18:00:49.800ID:ySNMbRfK0
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名前までか、と言いかけて口を噤む。
果たして私を知る誰彼が同じ大学にどれだけいるかは分からない。
だが情報なんてものは知ろうと思えば手段は幾らでもあるだろう。

だから彼女が私の名前を知っていても可笑しくはない。
とはいえ何故に名前を知ろうとしたのか、どう言った気持ちで覚えようと思ったのかは疑問だった。

ζ(゚ー゚*ζ「一人が多いの? 誰ともつるんでいないよね」

ξ;゚⊿゚)ξ-~「あー、まぁ……」

対してあなたは友達が多そうね、とでも返せばよかっただろうか。
厭味に取られるかは不明だ。だが会話を続ける気が起きなくて相槌しか打てないでいる。

そんな私の態度やら反応を見れば、大抵の人は怪訝そうに、
或いは不快そうに会話を切り上げて離れてくれるのに彼女は会話を続けようとしていた。

ζ(゚ー゚*ζ「煙草は何を吸ってるの? ダンヒル? 渋いね、女の子で吸ってる人、見たことないよ」

ξ;-⊿゚)ξ-~「…………」

ζ(゚ー゚*ζ「あ、別に未成年喫煙を叱るだとか誰かに言いつけようだなんて気はないからね」

では先の行動はなんだったのかと改めて疑問が浮かぶ。

ζ(゚ー゚*ζ「気になる?」

ξ;゚⊿゚)ξ-~「え?」

ζ(゚ー゚*ζ「いや、訊きたそうな表情だったから」

彼女の大きな瞳が私を射抜く。私の表情がそう見えた、と彼女は言った。
仏頂面の鉄面皮とまで蔑まれた私の表情から感情を読み取る人物がいるとは思えなかったが、
しかし事実、その疑問は抱いていた。
0011以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
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2022/09/13(火) 18:03:22.421ID:ySNMbRfK0
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少なからず見透かされた気がして驚いたが、私は彼女の言葉を無視する。
フィルターまで吸いつくした煙草を携帯灰皿に押し込み、それを手慣れた動作で仕舞う。

ξ゚⊿゚)ξ「……悪いけれど急ぎの用事があるから、これで」

無論それは嘘の言葉だった。単純に面倒を終わらせるための台詞だった。
見え透いていたものだったかもしれない。けれども私は彼女の反応も待たずに背を向ける。
向かう先は大学の予定だったがその気力も削がれた。このまま本日は家で静かに過ごそうと結論する。

ζ(゚ー゚*ζ「……そう。それじゃあ」

てっきり彼女はしつこくする性質かと思いきや、私の言葉を受けて素直に引き下がった。
先までの問答やら意味不明なやり取りからすると拍子抜けする程だったが、これにて面倒が了となる。
心持ちは軽やかになり先までの微妙な緊張感からの離脱も加味して妙な安堵感に包まれもした。
振り返ることもせず気配だけで様子を窺う。足音はついてこないし視線も感じない。間違いなくエスケープは完了だった。

ξ-⊿゚)ξ-~(また妙な人間に絡まれたわね、ああ面倒臭い……)

ああいった手合いは初のことだったが、感想を述べるならば奇妙、に尽きた。

暫く歩き、再度煙草に火を灯し、煙を吹きながら帰路を辿る。
その最中に先の美女の顔が浮かび、願わくば二度と再会せぬようにと祈りもした。

ξ゚⊿゚)ξ-~(私が変な人間だっていうんなら、きっと世の中には、それに似た人種が幾らかも蔓延っているんじゃないの)

これまで私に向けられてきた奇異な視線の数々、私は先々のそれらと同じ面持ちで彼女に接しただろう。

なんだ、そうなると世の中は変人奇人が少なからずいて、孤独主義者の私もそれに含まれるにしても、
存外、存在しているのは自然なことなのかもしれないと思う。

何せああいった今時の、それも見目麗しい程の美女ですら外観に見合わないというか意外な真似をする訳だから、
やはり人の裡なんてものは分かったものじゃない。

ξ゚⊿゚)ξ-~「はぁー……ご飯、何食べるかなぁ」

昼の街中の隅の方で私はぼんやり呟いていた。
立ち昇る煙が揺れる。梅雨の近付いたまろみを感じる湿気た風に撫でられ、煙は揺れる。
0012以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
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2022/09/13(火) 18:05:55.634ID:ySNMbRfK0
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結果的に言えば私の危機感やら意識というものは足りていなかったのかもしれない。

ζ(゚ー゚*ζ「やっほ、ツンデレちゃん」

ξ;-⊿゚)ξ-~「…………」

例えば場所が大学構内であれ、どこぞの喫煙室であれ、或いは街中をブラブラと歩いている時であれ、
彼女と遭遇する機会が増えた。

それも週、どころか日に幾度ものことだ。流石にこれは気味が悪いを通り越して気持ちが悪い。
毎度会う度に彼女は悪戯っ子のように笑うが、私の内心には悍ましい感想しかない。

つまりだ、彼女は私をつけまわしている訳だった。

行動のパターンすらも把握しているのか、
予想だにしない場所で彼女と会敵――敵だ、敵で間違いない――した際は素直に面を顰めてしまった。
この日なんぞは人通りの少ない夜道を歩いている最中に出現し、いよいよ犯罪者という単語が脳裏に過る。

ζ(゚ー゚*ζ「うっわ、凄い顔。今の心境当ててあげようか? “出やがったこのクソアマ”でしょ?」

ξ;-⊿-)ξ-~「……足すことの“死んでくれストーカー女”だわよ」

ζ(゚ヮ゚*ζ「わーお、辛辣ぅ! ふふっ、折角の美人が台無しなくらい鋭い表情してるよ、ツンデレちゃん」

ξ;-⊿-)ξ-~「はぁー……」

どういった趣味の持ち主なのかも不明だが、彼女のそんな行動は最早一月弱にも及んでいた。
こうなってくると、あからさまな無視は無意味だったし、かといってまともに相手をすると下手に調子に乗らせてしまう。
だから一言の感想を零すくらいで丁度いい塩梅と言えた。
彼女も私から寄越される罵詈雑言を毎度のやり取りとして気に入っている。

口から出た死んでくれ、というのは本心だった。

これまで私の生活を脅かすだとか邪魔をしてきた人間の中で彼女は間違いなく一等賞だった。
無理矢理のように絡んでくる鬱陶しさ。
その煩わしさを自覚しつつも持ち前の美貌で可愛らしく微笑んで、上目遣いで謝意を述べれば許されるとでも思っているらしい。
0013以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
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2022/09/13(火) 18:07:47.724ID:ySNMbRfK0
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ζ(゚ー゚*ζ「今日はこの後どうするの? いつも通りに適当にプラプラ歩いたら帰宅?」

ξ;-⊿゚)ξ-~「…………」

ζ(゚ー゚*ζ「……ああ、煙草を買いに行くのかな。ご飯は? 何食べるの?」

この女の恐ろしさはここにある。
ここ、というのは率直に言うならば罪の意識を一切抱いていない、というところだ。

自身の異常行動も、こうして他者のパーソナルスペースやらを浸食しようが、
どころか相手の反応もお構いなしに寄ってくる様は普通に考えれば狂気だ。

だがその狂気は彼女の無邪気な笑みやら醸す空気感やらで薄れ、
寧ろそういったものすら受け入れて許してしまいそうになる。

勝者の立場であり、彼女は絶対的な強者だと言えた。
全ての都合は己こそが決めるものだとでも思っていそうで腹が立つ。

ζ(゚ー゚*ζ「なら殴るなりすればいいのにね」

その言葉に私は立ち止まり、殺意を抱いたままに彼女へと振り返る。
出来やしないと分かっている口ぶりだ。
その面構えは自然だが、全身から沸き立つ程に溢れて見えるのはこれまでの人生経験から得た自信だろう。

きっと、誰もが彼女を御姫様のように扱ったに違いない。
この一カ月弱で私もある程度彼女という人間を知った。
0014以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
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2022/09/13(火) 18:08:51.053ID:ySNMbRfK0
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彼女は人気者だ。
いつだって周りに人がいる。
それが同性であれ異性であれ皆が彼女を中心としている。

惹きつける何かがあるのは私にだって分かっていた。
それは初っ端の邂逅からだ。ある種は魔性のようなものにすら思える。

彼女はいくつもの笑みを浮かべる。無邪気なものも、歳不相応なくらい大人びたものも、
かと思えば風が凪いだように涼しいものも浮かべる。

それは誰しもが憧れるものだ。多面性を持つのは人として当然だ。
だがそれの全てが通用し、しかも許される程の人間など数少ない。

幼気であれ妖艶であれ、対極にも等しい二面性を惜しげもなく披露する。
その純白さに、或いはか黒さに誰もが羨望し、彼女の虜となっていく。

ξ゚⊿゚)ξ-~「……違うわね、言葉が」

ζ(゚ー゚*ζ「ん? 何が――」

そんな中心にいる人物が、ここ最近は私にばかり御執心だった。

取り巻きもいい気はしないだろう。本当ならばこういった時間すらも彼女と共有し、
酒でも飲みにいったり、青春にでも明け暮れるのだろう。

その中に彼女も加わればいいのに、それをせずに何故に私にばかり気が向かうのか、
どうしてストーカーのような真似をするのか――
0015以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
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2022/09/13(火) 18:09:12.624ID:ySNMbRfK0
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ξ゚⊿゚)ξ-~「殴ってほしい、じゃないの?」



ζ(゚ー゚*ζ「――……」






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0016以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
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2022/09/13(火) 18:10:15.742ID:sJZ/ZFOt0
ツンだぁー!!
0017以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
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2022/09/13(火) 18:10:55.768ID:ySNMbRfK0
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何故に私に彼女の魅力が通じないのか、という問いの答えはとてもシンプルだ。
私は彼女の取り巻き共のように“彼女の下僕になるつもりはない”からだ。

ξ゚⊿゚)ξ-~「……そんなに嫌? 孤独でいられないことが、他者と共にあることが」

彼女の心の奥に何があるかは分からない。
だが彼女の異常行動には必ず理由があり、彼女なりの答えがある。
私にその理由だとか答えは分からない。何故にそうまで私に夢中なのかも不明だ。

ただ、そう、ただ、見える景色が違うだけだ。
それは彼女の下僕共と、私の目に映る彼女の景色が、或いは姿や、挙動や、仕草だとかの映りが違うだけだ。

ζ(゚ー゚*ζ「……やっぱりね。ツンデレちゃんは――……ツンちゃんは分かるんだね、蝶と蛾の違いが」

例えば燃える火に羽虫が集まるように、それは自然なことだ。
明々と燃え盛る火炎を前に人々は息を呑み、自然の生み出す力の、その神秘にも等しい物を受けるだけで理解する。
温かく力強い炎はきっと、人類史のみならず、この世を照らし続けてきた星の命の源にも等しいんだと。

その火炎に群れ、踊る羽虫は、きっと己から燃えるべく身を投じる訳ではない。
それこそは種としての性だとか科学的な根拠はあるだろうが、きっと、
炎に身を投じるのは単純に“もっと近くに寄って触れたいから”だ。

では彼女こそはその火炎だろうか。多くの羽虫を寄せ付ける力強い温かさなのだろうか。
私は煙草を喫み、煙の先にある彼女を見つめる。

ξ゚⊿゚)ξ-~「……どっちだろうと虫は虫よ」

拳を振り上げ、勢いを保ったままに彼女の顔面に叩き込む。
鈍い音がして、倒れこむ音がする。揺れる煙の先に鼻血を垂らして這いつくばる美女の姿がある。
0018以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
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2022/09/13(火) 18:12:52.640ID:ySNMbRfK0
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その様を見ても私の胸の中に感想はなかった。
殴った方の腕の、拳の痛みにこそ意識が向き、眉根を寄せる。
人を殴ったのは初めてのことだったけれども、これは好きではないと結論した。

殴った方も痛いからだ。相手の受ける衝撃やらストレスやら外傷はどうでもいい。
第一に自分にダメージが発生すると分かって、暴力は碌なものじゃないと学習した。

ζ( ヮ(#ζ「うっわぁ、いったいなぁー……殴られるってこんなにしんどいんだねぇー……」

けらけらと笑う声がする。大きく腫れた自身の顔に手を宛がい、まるでギャグでも垣間見たように大きく笑う。
その様子に私は何を言うでもなく、相変わらずのように眉根を寄せたままで、煙草を燻らせながらに背を向けた。

ζ( ー(#ζ「ほらね、私は正しかった。ツンちゃんはね、蛾じゃないの。綺麗な蝶々だもの」

背後から立ち上がる音がして、声がして、それでも私は立ち止まらない。
もう、これ以上踏み込むつもりはなかったし、彼女との奇妙な関係も終わりにしたかった。
だから彼女が望んでいたであろう最大のことをして、それで完結する筈だった。

だのに、やはり私は、まったくもって足りていなかったと言える。

果たして彼女が人々を引き寄せる火炎なのか、
はたまたその火炎に群がり熱を求める羽虫なのかは知ったことではない。興味もない。
その厚かましさだとか鬱陶しさからして火炎でいいんじゃないかと私は思う。

蝶と蛾の違いなんぞはさっぱり不明だ。
どっちも同じ種なのは事実だから差異なんてのは呼び方の違いでしかない。それで終わりでいいだろうに。

けれども彼女は見つけてしまったようだ。己が求める火炎とやらを。
0019以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
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2022/09/13(火) 18:13:52.960ID:ySNMbRfK0
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私の背後から質量を感じる。
後ろから彼女が抱き付いてきて、その腕を回してきて、さらには強く密着してくる。

その煩わしさに、私は振りほどこうと、そして再度思い知らせてやろうと振り返るが、
このやり取りの結末を言ってしまうなら、私はこの時点で負けていた。




ζ(^ー(#ζ「ねえツンちゃん。私たち付き合わない?」


ξ;゚⊿゚)ξ-~「はあ?」




いつかの時と同じように、口先から煙草の感触が消え失せる。
だがその刹那後にやってきた軟さと甘いような、ともすれば酸味を帯びた味に私は目を見開く。
それは鉄の味で、それは血の味だった。

やはり、私は孤独こそが似合う。こんなにも面倒極まる人間なんぞは御免だ。

それこそ、人の煙草を無理矢理に取り上げ、突然に口付けを寄越し、
得意気な面をするような美女など、心底に、御免だ。
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2022/09/13(火) 18:15:09.827ID:ySNMbRfK0
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境界線を持つのは誰しもがそうだろう。現代的に言えばパーソナルスペースであって、
人と人の距離感というのは踏み込み過ぎないぐらいが丁度いい。

だが距離が近づけばその境界線は曖昧になる。
恋愛事情は最たるものだろう。

例えば根底にあるのは人は皆、相対的な存在であるということだ。
極論を言えば私とあなたが違うのは当然だ。
互いの産みの親は違うし、今に至るまで生きてきた経験から得た様々なものも含め、
全てが一致する他人などいやしない。

そんなことはきっと誰にだって分かることだし、
何を分かりきったことを言うんだと呆れられたりもするだろう。

では痴情の縺れとかいう言葉だ。
長く付き合いのある人間を、他人と分かっていても許容出来ない時がきたり、
そういったシーンに直面する瞬間がある。

根底にある相対性に対する意識が希薄な証拠だ。
価値観の差異すらも曖昧になって“互いはとても近い距離にあり、きっと互いは理解しあっている”
と根拠のないものを抱く。
0021以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
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2022/09/13(火) 18:16:48.672ID:ySNMbRfK0
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そんなものある筈がない。
突き詰めれば他者との争いの原因は相違や差異であり、何故に分かってくれないのかと問う以前に、
何故己は理解が出来ないのかと自問出来る人は少ない。

人は皆、違う生き物だ。ただ同じ人間と言う種類なだけでしかない。
好きな色が違うように、見える景色が違うように、どれだけ親睦を深め愛を育み、
長い道のりを共に歩もうとも自分と誰かは異なる存在だ。

その大前提を失うことさえなければ争わない。納得は出来なくても理解を寄せることは出来る。
それがその人だからと答えに辿り着く。

だが腑に落ちないとも思う。心のどこかで苛立ち、何故に互いは別の考えを抱くんだと思う。
攻撃的にもなる。あなたが悪いんだと思う。私をもっと理解してくれてもいいのに、
受け入れてくれてもいいのにとすら思う。

そうなった時、果たしてどれだけの人が振り返ることが出来るのだろうかと私は思う。

あなたとその近しい誰かは自分とは違う生き物だと思い出すことが出来るのだろうか。
あなたのその考えを傲慢だと思わないのだろうか。

別に傷つくことを恐れるだとか傷つけることを恐れているとか、そういうことではない。

無駄だ、という話しだ。

その争いも諍いも、辿ればシンプルな答えに行き着くだろうに、
何故に面倒な言い争いをして互いの理解を遠ざけてしまうのだろうと思う。
0022以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
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2022/09/13(火) 18:20:09.785ID:ySNMbRfK0
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ξ゚⊿゚)ξ-~「はぁー……」

梅雨の空に煙が溶けていく。窓辺に寄りかかり、煙草を喫む私は曇る空を見上げていた。
白けた室内に物は少ない。小さなテーブルにベッドくらいで、適当に放り出されてあるドライヤーが床に落ちている。

脳内に溢れる感情論に対する糾弾は、きっと、私自身が面倒な状況にあるからこそ生まれてくるものだった。
頭を掻き、幾度と煙を吸う。曇った空を見上げ、微かに香る雨のニオイに、その日の大学をサボることを決めた。

ζ(゚ー゚*ζ「いつまでそうしてるつもり?」

背後から声がする。振り向きもせず、そもそも反応もせず私は煙草を吸う。
そんな私の態度に据えかねる思いなのか、いやそもそもちょっかいをかけたい気分なのか、
声の主は背後から身を寄せてきて私の顔を覗き込んでくる。

ξ゚⊿゚)ξ-~「……暑苦しいんだけど」

ζ(゚ー゚*ζ「そう? 気持ちがいいじゃない、肌の触れ合いって」

薄着姿の美女は遠慮もなく絡みついてくる。柔い肢体が私の肌に密着し、背に豊満なバストの圧力を感じた。
この美女と言えば面もさることながら身体の具合も絶品と言えた。世の男共からすれば垂涎する程の魅力があるだろう。

背後から抱き付かれる形の私は振り払おうとする。
それを手慣れたようにいなす美女と言えば私の口先にある煙草へと指を伸ばした。

ξ-⊿゚)ξ-~「本当、気安く触れて、さも当然のようにいるけどね……あんた普通に考えて異常者の行動だわよ」

その指をはたき落とし、私は寄せられる顔面を押しのけると、お返しにと煙を近距離から顔へ吹きかける。
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2022/09/13(火) 18:22:03.743ID:ySNMbRfK0
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ζ(>д<*ζ「うわくっさ! も~やめてよね、髮にまでニオイつくんだから!」

ξ-⊿゚)ξ-~「なら近寄んじゃないわよ。つーか出ていきなさいよ。ここは私の部屋であって、
         あんたの部屋じゃないのよ」

勘弁してくれと彼女は顔を顰めて文句を言う。それに対して私は呆れながらに言う。

先の殴打事件から一週間が経過していた。
普通に考えて関係は悪化するどころか絶縁にも等しい所業だったろうに、
彼女は私の暴力を喜び、どころか愛の告白めいたものまで寄越される。

当然返事はノーだ。そもそも同性での付き合いなど想像すらしたことがないし、
恋愛なんぞはまったくもって興味がない。

ましてや相手は重度にイかれた人間だ。
持ち前の美貌やらは私には通用しないし許容出来る程の関係性だってない。

だのにこの女は私の部屋に普通のように入ってくる。
最初のうちは何度か殴ったり蹴ったりしてみたけれども、この女にとって暴力は然程の問題もないようで、
幾度の拒絶を受けても彼女は部屋にやってくる。

ここまでくると死神とか、そういった現象にも等しい。怪異と呼んでもいいだろう。
結局、諦念に至った私は彼女を放置することにした。
そんな私の態度を了承と受け取ったかは不明だが、彼女は足しげく我が家に通いだし、飯まで作る。

ξ゚⊿゚)ξ-~(これ以上の何を求めるのやら)

全て揃っているだろうに、と思う。
この美女と言えば品行方正とは程遠い。理由は単純だ。

ζ(゚ー゚*ζ「あ、ちょっと待って、ラインきたー」

彼女は我が家に住み着いている訳ではない。通っているだけだ。
あれだけ思い切りのいい告白をしてきた訳だが、彼女の異常性、というか理解の及ばない人間性は染みだすように露わになってきた。
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2022/09/13(火) 18:24:03.697ID:ySNMbRfK0
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ζ(゚ー゚*ζ「ねえツンちゃん、明日くるの遅くなるかも」

ξ゚⊿゚)ξ-~「こなくていいわよ、二度と」

ζ(゚ー゚*ζ「そう言わないでよー。あ、ご飯、冷蔵庫の中にあるからね。それじゃいってきまーす」

彼女には恋人がいる。それも複数いる。或いは恋人ではなく肉体関係のみもあるだろう。
彼女の携帯端末が鳴らない日はないし、文字のやりとりにせよ電話のやりとりにせよ多くの人々との関わりがある。

明日は遅くなると言っていたから今夜は泊まりだろう。
第何号の恋人だかセックスフレンドだか分からない誰彼とホテルだか誰ぞかの部屋で一夜を過ごすのだろう。
今時ならそれも普通なのかもしれない。忙しそうに支度をし、玄関を飛び出していった彼女の背を見送るでもなく、
私は煙草をもみ消して台所へと向かう。

冷蔵庫の中にある作り起きの食事をゴミ箱へ捨て、適当なカップ麺を手に取り、お湯を注ぎ、いい具合になったらそれを啜る。
啜りつつ、はてさて性の事情も含め、恋人とは如何なるやと思った。

ξ゚~゚)ξ「うんめー……日清は偉大だわね、カップ麺は人の産み出した発明品の中でトップだわよ」

別に彼女の口から告げられたことはない。ただ彼女も事実を隠そうともしていない。
それが彼女なりの答えであり、彼女の示す距離感だろうと理解した。

恋人のあり方とは多くあるだろう。
別に私は彼女と恋仲にはないし、肌を重ねた夜もない。だがそんな私に夢中の彼女は一方的にも恋人としてのアピールをしている。

歪に思われるだろうし、実際、そういった阿婆擦れのような所業を受け入れがたいと思う人もいるだろう。
しかし私は気にならない、というよりは、やはり興味が向かわないから、どう言ったやり取りを目の前でされようが知ったことではない。

彼女が勝手に部屋に入ってきて、どことなく漂う色香やら、
事後に冷めやらぬ自然的にも振る舞われる媚態を前にしても煙草を吸うだけだ。

そんな私の反応こそが彼女が最も求めているものなのだろうと思う。
距離を掴む以前に彼女は私という人間が他者との関わりを嫌うと理解しているし、
一方的に愛を囁くだけの自身が何一つ失う物がないとも理解しているだろう。
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2022/09/13(火) 18:25:55.549ID:ySNMbRfK0
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彼女はここを安全地帯のような、最も長くとどまれる止まり木だとしている。
多くの人々と関わり、それが恋だの愛だの以外も含め、疲労困憊となった際の、最後の砦のようにしている。
最早私は面倒が極まって追い払いもしなくなったが、それこそが最終局面であり、
彼女はこれにて求めていた休息の宿を手に入れた訳だ。

ξ゚~゚)ξ「そういやお金どんだけあったかな……後で銀行いかんと」

そう、彼女は絶対的に有利で有効なカードを手中におさめた。
だのに、彼女は寄ってくる。この煙草と湿気た空気に満ちた部屋に毎日通って、私に身を寄せて、当たり前のように愛を囁いてくる。

そこから先に何もないと分かっているだろうに。
私が彼女を抱きしめるだとか、褥に沈めて愛を貪るだとか、そんな真似をする訳がないと理解しているだろうに。

ξ゚⊿゚)ξ-~「はぁー……やっぱラーメン食べた後の一服は最高だわね」

都合のいい人形を欲するならば、残念ながらに私はそうはなれないし、なるつもりもない。
或いは呪いのように、彼女にとって他者の中に入り込む手段がそういったあざとさしかないのかもしれない。

ξ゚⊿゚)ξ-~「……あいつ、今日にでも死なないかな」

そうなったら楽になるのにな、と思う。
面倒だった、心底。殴っても無視をしても身を引いてくれない。
この部屋で羽を休めては夜の蝶になり飛んでいく美女。

そんな彼女をどう相手取ればいいのか、最早私に術はなく、出来ることと言えば窓辺に寄りかかって呟くくらいなものだった。

ξ-⊿-)ξ-~「……雨、ダルいなー……」

呟いて、私は項垂れて、いつの間にか降ってきた雨が口先にある煙草の火に直撃して、それが幾度も重なって、火が途絶えた。
それを曖昧な瞳で観察し、満腹による眠気に抗うこともせず、私は湿気た煙草を吐き出すと床に寝転がった。
寝しなに届く雨音が次第に意識を溶かしていく。
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2022/09/13(火) 18:27:19.237ID:ySNMbRfK0
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ふと、私は眠りから覚めた。外は暗がりで夜だと理解する。
気だるげに起き上がり、傍にあった時計を見て、日を跨いだ時刻に欠伸を一つ。

ζ(゚ー゚*ζ「あれ? 起きたんだ、おはよう」

暗闇に声が生まれた。少々の驚きを抱きつつ私は自分のベッドへと視線をやる。
そこには出ていった筈の美女が横になっていて、まるで家主のように当然の様だった。
若干の苛立ちを抱きつつ、私は立ち上がると暗がりの中を歩き、冷蔵庫からアイスコーヒーの入ったボトルを取り出す。
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2022/09/13(火) 18:28:43.277ID:ySNMbRfK0
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ζ(゚ー゚*ζ「あ、ねえねえ、私にもちょうだい」

同じく起き上がった彼女もやってくる。やはり纏わりつくように背後に立ち、私の腰に手をまわしたところでその腕を止める。
彼女を無視し、ボトルをそのままに、私はアイスコーヒーを注いだカップを傾けた。
内容を啜る。静かに咽喉が上下する。その様子を彼女は見つめ、私の咽喉へと指を這わせた。

ζ(゚ー゚*ζ「本当に無関心だよねぇ、ツンちゃん。何も訊かないの?」

ξ゚⊿゚)ξ「取りあえず指が邪魔。折るわよ」

ζ(゚ー゚*ζ「ふーぅ、本当に恐ろしい美女だこと」

何も訊かないのか――逆に何を訊けというのだろう。
何故に帰ってきたのか、だとか、今夜の予定はどうしたのか、とか、そんな普通のやり取りでもすればいいのだろうか。

心底面倒臭いことだ、それらは。
オチがどうであれ、結果として彼女は今夜、この部屋にいる。それが分かっているのなら経緯はどうでもいいだろう。

ζ(゚ー゚*ζ「いやーエッチしまくってたらなんか相手方の彼女さんがきちゃって。あわや大戦争ってな訳で逃げてきちゃった」

ξ゚⊿゚)ξ-~「ふーん」

所謂、修羅場というやつだろう。そういった状況は本当にあるんだなと、少々の関心からの感想を抱く。
煙草に火を灯し、シンクに背を預けるようにする。対面する位置に彼女があり、真正面から彼女が抱きしめてきた。

腰にまわされる腕と、接近する彼女の顔、それから香り。その全てに違和感がある。
それも当然というか、何せ先まで情欲に浸っていて、例えば妙に火照った肌の具合や、節々から漂う唾液のニオイだとか、余計な情報が多い。
それらを観察しつつ私は煙草を燻らせる。
そんな私の反応に彼女はカップを奪うと残っていた内容を飲み干し、空いたカップを適当に置いた。
0028以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
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2022/09/13(火) 18:29:40.290ID:ySNMbRfK0
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ζ(゚ー゚*ζ「ねえ、エッチしない?」

その言葉に私は何の反応も示さない。
別に初の誘いでもなかったし、半ば襲われるような状況にもなった時がある。

その度に無視をしたり、適当に殴り飛ばしたりして回避してきた。
だが今夜の彼女はまるで狩人のそれで、私は腰にまわされた腕を、さてどう対処しようかと悩んだ。

ξ゚⊿゚)ξ-~「セックスったって、何で?」

ζ(゚ー゚*ζ「ん~、消化不良っていうかさ。あのね、私って結構性欲が強いみたいで。
       そういうのもあって、もうすこーし気持ちよくなりたいっていうかさ」

ξ゚⊿゚)ξ-~「オナニーすれば?」

ζ(゚д゚*ζ「いやいや、恋人が目の前にいるのにソロプレイは寂しすぎるでしょ」

ξ゚⊿゚)ξ-~「いや恋人じゃないから」

私は当然のように言う。だが彼女は首を傾げると、再度こう言った。

ζ(゚ー゚*ζ「んーん、恋人だよ。ツンちゃんは私の大切な彼女だよ」

ああ、お決まりの病的なやつか、と紡ぎかける。
けれど、そんな私の言葉を遮るように、彼女が一つの真実を私に突き付けた。
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2022/09/13(火) 18:30:08.975ID:ySNMbRfK0
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ζ(゚ー゚*ζ「だっていつも鍵、あいてるもん」





ξ゚ -゚)ξ-~「――……」






湿気た空気に煙草が馴染み、まろみを以って部屋に溶けていく。
私は香りを聞きつつ、彼女のその言葉に挙措を失う。








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0030以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
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2022/09/13(火) 18:31:29.174ID:ySNMbRfK0
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ζ(゚ー゚*ζ「それがツンちゃんの答えでしょう。無関心で片づけてもいいと思うよ。
       でも鍵って外界との途絶の為にあるんだよ。他者との関わりを完全に断つものなのに」

私は煙草を吸う。
火種が赤熱し、煙が私と彼女の合間で揺れる。

ζ(^ー^*ζ「別に私のこと、好きじゃなくてもいいよ。私にとってツンちゃんは唯一無二の存在で、
          何よりも綺麗な蝶々だから。だから、扉が開いているっていう、それだけでいいよ」

私の口元の煙草を彼女が奪う。
それを返せと言わんばかりに手を伸ばすけど、彼女は私の手を空いた方の手で握りしめた。

ξ゚ -゚)ξ「……返しなさいよ。煙草」

ζ(゚ー゚*ζ「……その煙の中が、ツンちゃんの境界なんでしょう」

ξ゚ -゚)ξ「いいから、早く返しなさいよ」

境界線を持つのは誰しもがそうだろう。
現代的に言えばパーソナルスペースであって、人と人の距離感というのは踏み込み過ぎないぐらいが丁度いい。
だが距離が近づけばその境界線は曖昧になる。

私にとって紫煙こそがその範囲であり、湿気た空気と共に煙が溶けていくこの部屋こそは最後の砦だ。
誰も踏み込ませないし、誰も近寄らせない。
私は煙の中でしか私を確立出来ない。そしてその火を越えて、私は私に到達することも出来ない。

この部屋しか、この煙の中にしか私の居場所がないからだ。
ここにしか作ってこなかった。他に余計なものは全て捨てたり、関心を失くしたり、面倒臭がって見ないことにしてきた。
だからこの部屋が、この煙草と湿気た空気が私の境界で、私だけの世界だ。
0031以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
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2022/09/13(火) 18:32:19.352ID:ySNMbRfK0
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ζ(゚ー゚*ζ「ねえ。好きだよ、ツンちゃん」


死ねばいいのに。

この女。

無理矢理に私の煙の中に入ってきて、私から煙草を奪うつもりなのか。


ξ ⊿ )ξ「大嫌いよ、あんたなんて」

ζ(゚ー゚*ζ「あっ――」


なら、いい。
返してくれないし、無理矢理に入ってくるのなら、もう、無視をしていても暴力を働いても意味がない。

だったらそうすればいい。
こいつを、この女を紫煙と同じようにすればいい。

いつものように、煙草に火を灯すのと同じだ。
その邪魔な衣服を無理矢理に剥ぎ取って、組み伏せて、あとは煙を喫むことと同じだ。



ξ; ⊿ )ξ「ああ、むかつく、本当に。このクソアマ」

ζ( ー ;ζ「ふふっ……なら首でも絞めてよ、ツンちゃん」



燃える音がする気がする。
火炎を間近に見ている気がする。

ああ、と思った。
彼女が私を蝶と呼んだ理由が分かった。
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2022/09/13(火) 18:32:45.258ID:ySNMbRfK0
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羽虫が誘われるように、火炎へと身を投じるかの如く。
私は彼女へと沈み、その美しさを見て、蝶のようだと、そう、思った。






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2022/09/13(火) 18:34:15.987ID:ySNMbRfK0
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心を交わすことはその実、簡単なことだ。
頷き続ければいい。

否定にも肯定にも首を縦に振り、話しを聞く素振りを見せ、言葉の最後をオウム返ししていれば全ては片がつく。

適当な風ではダメだ。だが真面目に意見をしてもダメだ。
心を汲むという、その姿勢が何よりも大切で、
心を交わす相手が最も求めているものは不純物のないシンプルな同意だけだ。

ζ(゚ー゚*ζ「ねえ、少しは量を減らしてみたら?」

梅雨も終わるだろう季節に彼女は言う。
私は一糸まとわぬ姿のまま、彼女も同じ姿でベッドに仰向けになっていた。

初めて肌を重ねた夜から私と彼女はひたすらに互いを貪りあっていたと思う。
時にご飯を食べて、時にお風呂に浸かって、互いの目が合えばそれが全ての合図になる。

流石に大便をひり出す時くらいは配慮してほしいところだが、
この気狂い女の恐ろしさは“排便見せて”の一言で誰しもに伝わるだろう。

無論見せやしなかったし相手の公開排泄とやらも遠慮した。
人としての在り方の問題だ。私は別に全てを共有するだとか同一の存在になりたい訳じゃない。

兎角、幾夜を越えた現在、気がつけば夏に差し掛かる季節の、
これまた平日の真昼間に彼女が私のアイデンティティを否定する一言を放つ。

寝煙草でも注意されるかと思えば吸う本数を減らせ、というところがまた彼女らしい意見かもしれないが、
私は彼女の顔面に肘鉄を落として起き上がる。
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2022/09/13(火) 18:35:35.429ID:ySNMbRfK0
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ζ(>д<*ζ「いっだぁ!?」

ξ゚⊿゚)ξ-~「愚かしい台詞もあったもんじゃないわね。
          あんたは酸素を失って生きていけと言われたらどうする? 無理でしょう?」

ζ(゚ー゚*ζ「ツンちゃんいるし」

ξ゚⊿゚)ξ-~「私は大気でもないし生きる為に欠かせない要素でもないのよ。
          つまり呼吸せずして人は生きられないでしょうが」

ζ(゚ー゚*ζ「え~? でもツンちゃんいれば多分空気なくても生きていけるよ私」

ξ;-⊿゚)ξ-~「マジで狂気かよ……もういいわよ、阿呆くさい」

呆れつつ、こうも人は一人の人物に対して執着出来るものなのかと思いもする。

彼女は夜の外に出かけなくなった。
それこそ四六時中私と共にいて、大学でも供回りの如くに侍り、某かの誘いに一切乗らなくなった。
宛らに傅く様だが、他者から見れば逆ではないか、と思うだろう。彼女は姫の立場であり侍女こそは私だと思うだろう。

実際、私たちの関係に立場の上下だのはない。
ただ互いがありたいがままに行動をし、時を気にもせず色に狂い、嬌声に意識を飛ばし嬌声に覚醒を促される日々だ。
だが私たちはやはり、恋人のような関係ではないと私は思う。
愛を交わしている訳ではない、互いの欲しい物を互いに強請るような児戯に等しい。
0035以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
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2022/09/13(火) 18:37:43.866ID:ySNMbRfK0
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ξ;-⊿゚)ξ-~「しかしニオイが強すぎる……淫蕩に耽るってのは正しくね。換気せにゃだわ」

ζ(゚~゚*ζ「えー、やめようよ外の空気暑いってば」

ξ;-⊿゚)ξ-~「ほぼあんたの所為でしょうが、鯨も真っ青な潮吹き娘めが……所構わずくっせーもんぶちまけやがる」

ζ(゚ヮ゚*ζ「いやぁ、ツンちゃん要領いいよねえ、凄まじい成長っぷりに私もビックリ。
         世の男達ももっと努力してほしいなと思う所存ですぞぉ」

こうも見目麗しい美女が性欲の権化だというから世の中は分からないものだ。
ぐずぐずになったベッドから同時に立ち上がると軽く腰を捻り、私は換気と新しいシーツの回収を、
彼女は台所に向かって作り起きのご飯を冷蔵庫から引っ張り出してくる。

ζ(゚~゚*ζ「もう床でいいんじゃない?」

ξ゚~゚)ξ「無理、私ベッドじゃないと眠れないから」

ζ(゚~゚*ζ「いやいや敷布団でしかエッチしないようにするとか」

ξ゚~゚)ξ「あんたそれ守れるわけ?」

ζ(゚~゚*ζ「ん~……無理!」

ξ゚~゚)ξ「二度と無駄な提案しないで」

開け放たれた窓から温い風が入ってくる。湿り気を帯びたそれを受けながら、私と彼女は向かい合ってご飯を食べている。
会話の内容は下世話だが、こうして誰かと意思の疎通を、それも自然な風にする自分が信じられないでいた。

ξ゚⊿゚)ξ-~(何をしているのやら)

食べ終わり、食器を洗う彼女を眺めながら紫煙を燻らせる。今の今までずっと互いは全裸のままで、その珍妙な光景も含めて状況に疑問を抱いた。
しかし抱けども、私は問いの先を探せないでいた。答えのない状況ではない。それを探り当て言語化し、納得することだって可能だった。
けれどもそうする気が起きない。状況の説明も、動機というか経緯すらも、全てを曖昧なままにしていて、それが存外、心地のよいものだとすら思う。
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2022/09/13(火) 18:40:23.295ID:ySNMbRfK0
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らしくないことだった。私を知る人間がどれだけいるかは不明だが、現状の私を見た場合、どういった感想が出てくるだろう。
奇妙だろうか、ないしは不気味だろうか。他者に対して関心を寄せず、常に孤独を選び、一人で完結していた人間だとは思えまい。

とは言え私にとって現状の行き着く先には関心がなかった。
例えば彼女が夜の外に出かけなくなった事実だが、別に強要するだとか、ましてお願いのような真似をしたこともない。
別に出ていくならそれでいいし、そもそも引き留めるつもりもない。何故ならどれだけ肌を重ねようが他人は他人だからだ。
彼女が、または往々が言うところの恋人の関係であったとしても、私は個人が決定した物事を否定するつもりがないし介在するつもりもない。
すべては流れのままだ。揺れる紫煙が天に向かうのと同じことで、そうなってしまったのならそれは自然なことに違いない。

今し方、食器を洗い終わった彼女が手を拭っている。その様子を見て、そういえば最後の入浴はいつだったかと思った。

ξ;゚⊿゚)ξ-~(……いよいよ女を捨てたかね、私も。臭いのは自分自身もだわね)

彼女が入り浸るようになってから時間の感覚すらも曖昧で、それこそ誠に阿呆らしいことだが、生活のサイクルが崩れる程の淫蕩に狂っていた。
お陰で昨日から入浴していない事実に気が付く。全身から発せられるのは様々なニオイだが、腋やらの局部から酸味の強いニオイがすると気が付き落胆する。
美意識の云々を語れる程ではないにせよ、人として、一応は女として清潔感くらいは保っておきたいのが心情だった。
煙草をもみ消し、兎角として身体を清めようと浴室へと向かう。

ξ-⊿゚)ξ「んで、なんでこうなるわけ」

ζ(^ー^*ζ「ん~? だって一緒に入るのってなかったし」

当然のように後をついてきて私と同じくシャワーに打たれる美女。
ほんの数時間前まで呆れるくらい肌を重ねていたのに、彼女は当然のように私を抱きしめてくる。
それを無視しながらに私は髪を洗い、勝手に発情する彼女を無視しながら身体を洗い、洗顔等も済ませたら即座に出ようとした。

ζ(゚ー゚*ζ「いやちょっとちょっと、毎度烏の行水だな~とは思ってたけど、湯船に浸かりもしないの?」

ξ゚⊿゚)ξ「そもそもお湯張ってないし」

ζ(゚ー゚*ζ「だったらお湯溜まるまで、ほら、おいでよ」

そういって彼女は空の湯船に私を手招いた。まさか今から溜まるまで空の湯船に一緒に入ろうということだろうか。
まるでガキのやることじゃないのか、と思いもするが、特に文句をいうつもりもなく、どうせやることなんてセックスくらいだし、妙な遊びに付き合う感覚で私も浴槽に入る。
互いは向かい合う形だったが、気に入らないのか、彼女は私に背を向けるとそのままにやってきて、私は彼女を背後から抱きしめるような形になった。
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2022/09/13(火) 18:42:51.718ID:ySNMbRfK0
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ζ(゚ー゚*ζ「はいお湯張りしますよ~。スイッチぽちっとな~」

ξ゚⊿゚)ξ「ねえお尻が冷たいんだけど。あとあんた重いんだけど」

ζ(゚ー゚*ζ「まぁまぁ。ほらお湯が出て……こない! つめたっ! 早くお湯出てよ~!」

燥ぐ彼女。身を沈めてくる彼女。それを拒絶するでもなく、足先から次第に溜まっていくお湯を受け、気が絆される思いだった。
別に風呂嫌いという訳じゃないが、湯船に浸かるのは久々だった。
邪魔な存在はあるものの、水嵩が段々と増してきて、ついぞお腹にまで迫ると自然と息が漏れる。

ζ(゚ー゚*ζ「しっかしツンちゃん、お顔は最強に天才なのにお身体がねぇ……いやそういう控えめなところも好きなんだけどさ」

ξ-⊿゚)ξ「別に胸も尻もデカくなくて結構よ。あんたのそれどんだけ大きいのよ。なんで水に浮いてんのよ」

ζ(゚ー゚*ζ「大きすぎると大きすぎるで辛いんだけどね。高校生の時とかさ、体育祭あったでしょ?」

ξ゚⊿゚)ξ「ああ、あったわね」

ζ(゚ー゚*ζ「リレーあったじゃん。私走るの得意だったんだけど。あれでさ、全力で走ってたらブラが弾け飛んでさ」

ξ;゚⊿゚)ξ「え、マジ?」

ζ(゚ー゚*ζ「マジマジ。そもそもまともなスポブラって訳でもなかったからおっぱい爆裂して痛いし、あれは最悪だったな~」

ξ;゚⊿゚)ξ「巨乳も大変だわね……」

ζ(゚ー゚*ζ「まぁ下着は最近だと可愛いのいっぱい出てきてるし、ただ肩幅が自然と出たりね、あと足元見えないとかデブに見えちゃうのが嫌かな」

他愛のない会話が続く。ふと、彼女が自然と私の手に指を絡めてきた。私は抵抗するでもなくそれを受け入れる。
彼女が私に深く凭れてくる。表情を見下ろせる程に沈む彼女は私を見上げ、柔らかな笑顔を浮かべた。
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2022/09/13(火) 18:44:13.136ID:ySNMbRfK0
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ζ(^ー^*ζ「……好き」

ξ;-⊿-)ξ「……臆面もなく、安売りするかの如く言葉にするんじゃないわよ」

ζ(^ー^*ζ「え~? そうかなぁ? 言葉にすることって凄く大切なことだよ」

手を取り合い、彼女が強く握ると、私も呼応するように握り返す。

ζ(^ー^*ζ「でも言葉にできないからって行動で示すのも凄く大切だよね。本当、ツンちゃんは可愛いな~」

ξ;-⊿゚)ξ「はいはい、何でもいいから……そんで、いつまでこうしてるのよ。いい加減重いわよ、姿勢も変えたい――」

ζ(゚ー゚*ζ「ずっとだよ」

大きな瞳が私を射抜く。
幾度対峙しても思い知らされる。彼女の美しさばかりは否定のしようがないと。
瞳を縁取る長い睫毛も、白磁を思わせる肌も、高く通った鼻も、全てが世の乙女達が抱く理想のままだろう。

ζ(゚ー゚*ζ「ずっとこうするよ。何度も抱き合って何度もキスするの。目覚める度に好きだって言う。ずっとずっとね」

そんな彼女に向けられる愛の告白。
何故に私なんだ――何度も訊いた。その度に彼女は言う――あなただからだと。
甘ったるい台詞を真面目な表情で言われ、私はその美しさと言葉の強さに口を噤み、姿勢を正した彼女と真正面から向かい合う。

ξ゚⊿゚)ξ「私はあんたがいうところの蝶じゃないと思うけどね」

ζ(゚ー゚*ζ「それを決めるのは私。ツンちゃんは世界で一番綺麗な蝶々だよ」

ξ-⊿゚)ξ「……下らんわね、まったくもって」

胸の中に彼女がやってくる。そんな彼女に頬を撫でられ、次いでなぞる指は唇へと向かった。
私は抵抗の一つもせずそれを受け入れている。やがて互いの顔が零の距離にまで迫り、柔い感触を理解する。
口腔を行き交うのは互いの舌だ。彼女の唾液と私の唾液が絡まって、互いの咽喉を通って、身体の奥底へと落ちていく。
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2022/09/13(火) 18:46:38.753ID:ySNMbRfK0
.
ζ(゚д゚*ζ「んぅぇ~、ほっと、ひは、はははいへほ~」

彼女の舌を噛みちぎろうかと思った。
この饒舌に気持ちのよい言葉ばかりを運ぶ柔らかく小さな舌を取り除けば、もしかしたら彼女は静かになるかもしれない。
言葉さえなくなれば、今よりも落ち着きをもって、ある程度の距離を保ってくれるかもしれない。

ξ゚皿゚)ξ(……ガキじゃあるまいし。しかし千切れないなぁ、舌ベロ)

適当に弾力を確かめ、ある程度の玩味を終えると自由にしてやる。
軽く血が滲んでいる。そこまで鋭く歯を立てた覚えはないが、再度やってきた舌は鉄の味を纏って私の舌をねぶる。
蒸れる熱気としがみついてくる彼女の体温が煩わしくて、風呂もここまで堪能すれば、もう暫くはシャワーだけでいいだろうと結論した。

ζ( д *ζ「あ、ちょっとっ」

さて、ではそろそろのぼせそうだった。私は彼女の花弁へと己の指を沈める。
軽い抵抗をみせた彼女だがそれを無視して、私は慣れたように腕全体を動かす。
甘い息が漏れてくる。それでも口付けを止めもしない彼女は、全身で私を感じようとしていた。

ξ; ⊿ )ξ「はぁ、疲れる……さっさとイきなさいよ、風呂の中、熱いのよ」

ζ( д ;ζ「そんな、風に言わなくてもいいじゃんっ」

ξ; ⊿ )ξ「結局こうなるんだから……どうせそうなろうとしてたんでしょうがよ、変態女」

ζ( ヮ ;ζ「ふふっ、それはお互い様でしょ……あ、あぁっ……きもちっ……」

弓なりに背を反らせ、数度、彼女は震える。瞳が曖昧に揺れ、一寸離れた唇からは言葉にならない言葉が漏れた。
指に身体の反応が返ってくる。幾度か強く締め付けられ、落ち着きを取り戻すまで私の指は体内で包まれ、揉まれを繰り返す。
引き抜きたい思いと、指先のざらつきを散々になぞりたい思いとが駆け巡り、軽く撫でてやると気をやったばかりの彼女が強く跳ねた。

分かりやすい身体だと思う。その反応のよさが、或いは彼女の身体を求めた多くの人間達を虜にしたのだろうと思う。
押し込むように花弁を愛で、口の隙間から漏れる息が次第に嬌声に変わる頃、彼女は先よりも大きく身を反らせ全身で跳ねる。

彼女は矢継ぎ早な息をする。私を潤んだ瞳で睨み付けると、軽い口付けをして私の胸の中に顔を埋めてしまった。
拗ねたのか、或いは顔を見られまいとしているのかは不明だ。
機嫌を損ねたのは事実だろうが、それでも私を強く抱きしめる彼女は、乙女のそのものかもしれない。
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2022/09/13(火) 18:48:32.720ID:ySNMbRfK0
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ξ;-⊿゚)ξ(っとに、何やってんだか……)

ニンフォマニアを相手取ることの苦痛は、その性欲の強さを知る人物にしか分からないのかもしれない。
ただ、では私はそれを苦痛に思うかと言えばそうでもない。単純に気持ちのよいことは好きだし、美女が快楽に狂う顔が嫌いじゃない。
未だ息の整わない彼女を押しのけ、いい加減に湯船から退却すべく私は立ち上がろうとする。
流石にこれ以上は体力的にも厳しい。兎角として一旦の満足とし、彼女の様子を窺いもせず肩に手をかけるが――

ξ;゚⊿゚)ξ「あ、ちょい、こらっ、やめなさいってっ」

下腹部に異物感があり、ついで体内へと侵入した感覚に背が震える。
焦燥のままに彼女を見やれば、そこにはしてやったりと口角をあげる美女の表情があった。

ζ( ー ;ζ「私ばっかり必死でずるいじゃん? たまには許してよ、ツンちゃん」

ξ; ⊿ )ξ「いやダメだって、のぼせるから、普通にあぶな、いっ……あ、ぅんっ……」

ああ、まったくもってこの美女はお困りだ。
別に、私は嫌いじゃない。気持ちがよいことは好きだ。
頭中の芯と呼ぶべき部分に電気がはしるような感覚と、この、ある意味は支配されているような感覚が、快楽の正体かもしれない。
彼女が覆い被さってくる。私の乳房に顔を埋め、腕を深く動かして、私の全てを貪りつくそうとしている。

ξ; ⊿ )ξ(あー……きもちぃー……)

心を交わすことはその実、簡単なことだ。
頷き続ければいい。

否定にも肯定にも首を縦に振り、話しを聞く素振りを見せ、言葉の最後をオウム返ししていれば全ては片がつく。

適当な風ではダメだ。だが真面目に意見をしてもダメだ。
心を汲むという、その姿が何よりも大切で、心を交わす相手が最も求めているものは不純物のないシンプルな同意だけだ。

果たして彼女と私は心を交わしているのか否か、というのは定かではない。
私は彼女の言葉のどれにも頷いたことはなく、彼女は私の言葉の意味を理解していない。
彼女のいうところの蝶と蛾の差異も分からないし、私の煙草の香りを彼女は好んではいない。

それでも、きっと、私と彼女には繋がっている部分がある。
別に恋仲にもないし、ただ快楽を求め貪りあうだけの間柄だと私は思っている。
所詮女と女、本当の意味で一つになることは出来やしない。先のない関係性だし、やはり愛を持ち寄ることは無意味だとすら思う。
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2022/09/13(火) 18:49:03.458ID:ySNMbRfK0
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ただ、私を強く抱きしめる彼女も、彼女を強く抱きしめる私も。
最早鍵の意味を失った私の部屋で過ごし、外に出ようともしない。
それが一つの、言葉にすらしたくないが、形として提示できる答えなのかもしれない。





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2022/09/13(火) 18:50:55.333ID:ySNMbRfK0
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初夏、強い日差しを遮るように頭上へと手を翳した。
雑踏に紛れるのは蝉の鳴き声だった。煩わしい大合唱に人通りの多い街並みは居心地が悪かった。
立ち寄った喫煙所で一本を吸い切ると人込みの中へと踏み出す。

ξ;゚⊿゚)ξ「あっちぃー……」

夏は嫌いだった。単純に気温の問題もあるが、この纏わりつくような湿度や浮かれた人々の熱気に眩暈すらする。
おまけに蝉等の虫の存在だ。待ってましたと言わんばかりにあれらが空を飛んだり地を這っていたりする。
頭上には憎たらしいまでに強い輝きを放つ太陽が居座り、夜になれどアスファルトは熱を孕み、昼時なんぞは一歩を踏み出すことすら億劫だ。
つまり、最低な時期だと私は思っている。こういう時期こそ家に籠りっぱなしになって静かにのんびりと過ごしたいものだった。

ξ;゚⊿゚)ξ「えーと、なんだ、こっちだったかしらね……」

そんな夏嫌いな私だが、この日、珍しいことに日中の外へと出かけていた。
ことのついでだった。本日は必要な単位の為に午前の講義へと顔をだし、目的を果たしたらば足早に退散する。
そのままの足で帰宅し、冷え込んだ我が部屋で怠惰を貪ろうと思っていた。
ところがそうはならなかった。予定が生まれてしまった。
私は若者の行き交う景色にいた。今風の男や女が流行りの飲み物やらを手に、青春を謳歌せんと誰しもが大声で話していたりする。
それらに全身を殴られているような感覚だったが、兎角として目的の喫茶店を見つけると私は扉を押し開いた。

「いらっしゃいませ。おひとり様でしょうか?」

ξ;゚⊿゚)ξ「ああ、いえ、待たせている人がいるんで……」

駆け寄ってきた歳若い店員に適当な返事をしつつ、広くはない店内を見渡す。
洒落た風の曲が流れる店内は樫木張りの床で、私は履き潰したスニーカーでそろそろと歩いていく。
やがて見えてきた人物と目が合うと、相手は軽く頭を下げ、私もつられるようにして頭を下げた。
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2022/09/13(火) 18:53:13.791ID:ySNMbRfK0
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(´・ω・`)「どうも、ツンデレさん」

ξ゚⊿゚)ξ「ええ、どうも」

利発そうな、感じのよい印象を持つ男性だった。歳は私と同じくらいだろう、まともな情報を持ちはしないがそんなものだろうと結論する。
促される形で向かいの席へと腰かける。店内全域が禁煙なのは今時では当たり前で、私は懐にある煙草を取り出すこともせず、相手の顔へと視線を向ける。

(´・ω・`)「なんだかすみませんね、突然にお呼びしてしまって。喋ったのも、つい先のことが初めてなのに」

ξ゚⊿゚)ξ「はぁ……」

そう言う男性は私にメニューを寄越す。特に腹の減りはない。適当に目についたアイスコーヒーをウェイターに注文し、改めて私は男性と向き合った。
この男との接点はなかった。今し方、男が言った通りの関係だった。

(´・ω・`)「改めて……僕の名前はショボンと言います」

名乗った男性に対し、私は特に反応を示さない。
彼は私の大学に通う生徒の一人で、同期のようだ。ようだ、というのも覚えにない人物だったし、そもそも私は誰とも接点がないが故に認識したのも今日が初だった。
本日、私は彼に声を掛けられた。大学から出てすぐのことで、彼は私に寄ってくると、後で指定する喫茶店にきてほしいと請われた。
初の対面で、かつ、初の会話だった。一体全体こいつは何だ、と訝しんだ目だった私だが、その目的を聞かされると仕方なしに足を運ぶ形となる。

(´・ω・`)「まあ、要件は先にも言ったんですが……デレさんとのことでお話があるんです」

私の性格からして、例えばナンパだとかには頷かないし、それ以外で、単純に親睦を深めようだとかという理由での誘いであれ真正面から断る。
最大の理由はやはり無関心だからだ。面のいい男だろうが金を持つ富豪だろうがそこに差異はない。他人は所詮他人であり、恋だの愛だのを寄せられても興味がわかない。
だからこの場にいることが凄まじく違和感だったりもする。どういった理由があれ、私は他人に付き合ったりすることはないのに、彼女の名前を出されると、不思議と足は向かった。

(´・ω・`)「ここ数か月、あなたは彼女ととても親密な関係にありますよね。真実は知りもしませんが、傍から見ていても分かることです」

ξ゚⊿゚)ξ「はあ、そうなんでしょうかね」

(´・ω・`)「ええ、そうですよ。何せ今まで仲良くしてきた友人たちよりもあなたを優先していますから」
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2022/09/13(火) 18:54:55.130ID:ySNMbRfK0
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話しの途中にアイスコーヒーが手元へと届く。内容に口をつけつつ、男の言葉を聞いて、ああ、やはりと言うべきか、これは面倒な内容になると確信した。
見え透いていたことだった。何故に彼女のことで本人を他所に話すことがあるのか、なんてことは実に単純なことだ。

(´・ω・`)「僕、彼女と付き合っていまして。僕のことは彼女から聞いていますか?」

ξ゚⊿゚)ξ「いや、まったく」

(´・ω・`)「……そうですか」

つまりは色恋の話しだ。男女間の云々なんぞ当人たちの問題だろうに、私に直接くるところが修羅場のそれを思わせる。
とは言え私の台詞に男は少しばかり口をまごつかせ、頷きを見せると手元の飲み物を啜った。

(´・ω・`)「……まあ、なんというか、彼女とは良好な関係を築けていたと思います。
      実際、知り合ったのも付き合ったのも春先のことですが、それでも僕と彼女はちゃんと縁を持つ間柄なのです」

そういう男は私を見つめる。
結構、整った顔立ちだ。服装も清潔感がある。なんとなし男の隣に彼女がいる姿を想像してみるが、存外、画になるんじゃないかと思った。

(´・ω・`)「そんな僕達だったんですが、段々と彼女からの連絡が減りました。
      聞けばあなたと過ごす日々が楽しくて仕方がない、居心地のよさに大層感激している、だとかで」

ξ゚⊿゚)ξ「はぁ、そうですか」

(´・ω・`)「……単刀直入に言いますが、もう、彼女とそういった関係を続けるのをやめてほしいのです」

面倒な手合いだな、と思う。だが男として、そして恋人として彼は立派だとも思った。
普通、そういった目に見える、或いは感じ取れる異常やら状況に尻込みする人達が多数だろう。それも問題の人物を直接に呼び出せる胆力は中々とも言える。

私は寄越された台詞に特に返事もせず、さて、では何をどう話そうかと考えた。

私は彼女と恋人の関係にあるとは思っていない。彼女は私に愛を囁くが私がそれに応えた覚えはない。ただひたすらに情欲を貪りあう、そんな子供のような関係性だと思っている。
大多数の人間から見れば、それはとても不純だろうし、まして恋人の間柄である人物からすれば恋敵だとか、或いは憎き怨敵にすらなり得るだろう。

ところが蓋を開けてみた時、そもそも彼女の恋人というのは複数存在しているし、それが肉体関係のみのセックスフレンドだったりもするし、彼女自身も乱れているのは事実だった。
その事実を知るか否かは不明にせよ、この男の立場からすればどうあっても私は間男、ではなく間女のそのものだろう。
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