日本列島改造論【開幕した新幹線時代】

もう一つ、ふれておかなければならないのは日本国有鉄道の再建と赤字線の撤去問題である。

国鉄の累積赤字は47年3月末で8100億円に達し、採算悪化の一因である地方の赤字線を撤去せよという議論がますます強まっている。

しかし単位会計でみて国鉄が赤字であったとしても国鉄は採算と別に大きな使命をもっている。

明治4年にわずか9万人にすぎなかった北海道の人口が現在、520万人と60倍近くにふえたのは、鉄道のおかげである。

すべての鉄道が完全にもうかるならば、民間企業にまかせればよい。

私企業と同じ物差しで国鉄の赤字を論じ、再建を語るべきではない。

都市集中を認めてきた時代においては、赤字の地方線を撤去せよという議論は、一応、説得力があった。

しかし工業再配置をつうじて全国総合開発を行なう時代の地方鉄道については、新しい角度から改めて評価しなおすべきである。

北海道開拓の歴史が示したように鉄道が地域開発に果す先導的な役割はきわめて大きい。

赤字線の撤去によって地域の産業が衰え、人口が都市に流出すれば過密、過疎は一段と激しくなり、その鉄道の赤字額をはるかに越える国家的な損失を招く恐れがある。

豪雪地帯における赤字地方線を撤去し、すべてを道路に切り替えた場合、除雪費用は莫大な金額にのぼる。

また猛吹雪のなかでは自動車輸送も途絶えることが多い。
豪雪地帯の鉄道と道路を比較した場合、国民経済的にどちらの負担が大きいか。

私たちはよく考えなくてはならない。
しかも農山漁村を走る地方線で生じる赤字は、国鉄の総赤字の約1割にすぎないのである