僕の彼女は魔法使い
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①(ページ目)
僕にはヒトに言えない秘密がある。
僕の恋人、
つまり彼女の秘密だ。
まあ話したとしても、
誰にも相手にしてもらえないだろう。
彼女は魔法が使えるのだ。 ②
その奇跡を僕はいつも目の前で視ている。
毎朝目覚ましの音で彼女は起きるのだが。
不思議な事に、目覚し時計は置いていない。
そしてベッドに寝たままこう言うのだ。
「電気つけてー」照明は命令通り点灯する。 ③
今日は僕も彼女も仕事が無く、
ふたりで過ごせるのでとても嬉しい。
僕はいつも目覚ましが鳴る前に
起きているのだが、
休日は目覚ましが鳴らない。
彼女は遅めに起床する。
そしてお昼ご飯を一緒に食べるのだ。 ④
ピンポーン。
玄関の呼び鈴が鳴った。
もぞりと彼女が体を起こす。
どうやら既に目を覚ましていたらしい。
魔法で明かりを灯すと
ヨロヨロと部屋を出ていった。
……… ⑤
………
しばらくして彼女が戻って来た。
「いい匂いがするね!」
そう言って彼女が持っている特徴的な箱を視た。
「うわぁピザだ!」嬉しいな。
しかしピザ屋に電話をしている様子は
無かった。また魔法だ!
と、言うか彼女は電話を持たないらしい。
たまに独り言をブツブツ言っているが
おそらくテレパシーが使えるのだろう。 ⑥
両手が塞がったまま彼女が言った。
「テレビ着けてー」
僕に言っているのではない。
テレビに直接話しかけている。
テレビはゆっくりと、彼女に従った。
お花見のニュースが流れてきた。
「いっただっきまーす!」
彼女はご機嫌だ。
とても美味しそうにご飯を食べるので、
彼女との食事が、僕は大好きだ。 ⑦
ただ一つ、気になっている事があった。
「またそれ?」僕は尋ねる。
彼女は携帯ゲーム機の様な物を弄り始めた。
「だからお行儀悪いっていつも言ってるのに…」
「う…ん…」俯いたまま彼女は応えている。
応えながら耳栓をしだした。
あ、しまった、怒らせちゃったかな?
「もしもし?おはよ!
て時間じゃないか!ははは!」
急に彼女は例の独り言を始めた。
「え?うん!うん!うーん…
三時に中目黒でも良い??遅れたらゴメン!」 ⑧
「うん!うん!大丈夫だよ!
じゃね!バイバイ!」
彼女は耳栓を外した。
「どうしたの?」僕は尋ねる。
「うーん…ゴメンね!」
彼女はそう言うと、
食べかけのピザを置いて部屋を出ていった。
まだ一切れも食べていないのに…
……………… ⑨
………………
バタバタバタ!ガチャ!
三十分ほどして彼女が戻って来た。
髪は濡れているし裸だ。
僕は彼女の身体を喰い入るように眺めた。
彼女は耳栓を着けドライヤーをかけだした。
そんな彼女の胸をしばらく凝視して居たが、
急に脱力感と虚無感に襲われ、
彼女に背を向けた。
丸めたティッシュを放り投げたが、
山盛りのゴミ箱に弾かれ、床に転がった。
気にもせず僕は布団に潜りこんだ。
「彼女のドライヤーうるさいんだよなあ…」
…………………… ⑩
……………………あ、いつのまにか寝てた。
いや真っ暗で何も見えないから
まだ寝ているのかもしれない。
暗闇に慣れてくると眼の前にある時計が見えた。
「二十二時か…そろそろ起きるかな…」
体を起こし、照明の紐を引っ張る。
「僕も魔法が使えたらなー」
部屋の隅に食べかけの昼食があった。
「そのまんまかよ…食べるか…」
ペットボトルのお茶を一口飲んだ時、
ガチャ!バタン!
「あ、彼女帰ってきた。」 ⑪
話し声が聴こえる?独り言かな?
僕は押入れに入り、壁の穴を覗き込んだ。
ガチャ!
彼女が戻ってきた。
「電気つけて!」
「散らかってて恥ずかしんだけどぉ!」
僕は
「おかえりーテンション高いね。」
と返事をした。 ⑫
「へえー凄いキレイにしてんじゃん!
この棚とかホントは押入れでしょ?」
彼女に続いて入ってきた男が言う。
「あんま視ないでぇ!
この辺でこの広さの部屋って、
古いトコしか無くてさー!」 年越しのギャルとも関係あるよね
調子に乗ると痛い目みるよ 僕くん ⑬
???????????
ん?は?え?だれ?だれだれだれ?
謎の男は続けた。
「これアレでしょ?
『電気消して!』」
彼女の部屋が真っ暗になった。
「ちょっとぉ視えないよおー」
彼女は酔っ払ってるみたいだ…
「この距離なら視えるでしょ?」
謎の男の声と軋むような音が
かすかに聴こえた。 ⑭
なにもきこえなくなったなにもみえなくなった
どうやらまほーつかいはかのじょだけじゃなかったらしい
えーっとあれ…あれどこやったっけえ?あれ
あたまがぼーっとするそーいえばしばらくおくすりのんでないかも
たんすまでごみをかきわけていく
いちばんうえのひきだしからろーぷををとりだした
ところどころささくれていて
てからちがでた
「きょうはうまくいきそう!」
ぼくはどあのぶにろーぷをむすびつけた
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