「立国は私なり 公に非ざるなり」のこと

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「忠君愛国等の名を以てして国民最上の美徳と称するこそ不思議なれ」とも書いているのは、当時よく書けたなと思う。後日問題になったのではなかったか。

 ところがつづいて「故に忠君愛国の文字は哲学流に解すれば純乎たる人類の私情なれども、今日までの世界の事情に於ては之を称して美徳と云わざるを得ず。即ち哲学の私情は立国の公道にして、此公道公徳の公認せられるは・・・」と述べている。云わざるを得ずとは先生の現実論的な考え方がうかがえる。

 この人情について「父母の大病に回復の望みなしとは知りながらも実際の臨終に至るまで医薬の手当を怠らざるが如し」と身近な例を述べている。

 「されば自国の衰頽に際し敵に対して固より、勝算なき場合にても、千苦満苦、力のあらん限りを尽くし、いよいよ勝敗の極に至りて始めて和を講ずるか若しくば死を決するは立国の公道にして、国民が国に報ずるの義務と称す可きものなり。即ち俗に云う痩我慢なれども、強弱相田対して苟も弱者の地位を保つものは単に此痩我慢に依らざるはなし」とまとめ、国内・世界の例を示している。