サブタイ:少年への静的暴行

進道塾本部から出てきた田島の前に睦夫が現れる。田島の隣には壮年の男が付き添っていた
山本陸に勝ったのかと聞く睦夫に「やってない」と答える田島
壮年の男は「彬(こいつ)じゃ勝てないよ」と言う
睦夫はその言葉を聞いた田島の表情に曇りがある事を感じた

睦夫は田島らの後を着けた
幾つかの駅の先で降りた田島と壮年の男は、駅から20分ほど歩き民家に入っていった
睦夫は建物と壁の間に挟まり、宙に浮いた状態で家の中の様子を窓の端から見ている

壮年の男が電話をしている声が聞こえた
「勝ち方は教えたが、カスはやらなかった」
「ここで殺しておく方が良いのでは」
「いなくなれば喜ぶ者の方が多い」

壁伝いに登ると2階の部屋の中に田島がいた
「君は何に成らなくちゃいけないの」
そう聞く睦夫に「何にも成ってはいけない。何に成る事もできない」と田島は答える
「まるで透明人間じゃないか」
「下にいるのはお父さん?あの人が何かに成る事を禁止しているの?」
「そうだな」田島は答える

「あの人がいなくなれば君は何かに成れるの?」
「何かに成れるかどうかはわからないけど、何かに成る事は許されるな」
田島は立ち上がり部屋を出る

「絞りカスのくせにそんな欲があるのか」
壮年の男は静かに田島に言葉を浴びせる
幾つかの雑言を浴びた田島は窓を指す
窓の外には逆さに覗く睦夫がいた

窓を振り向いた男の頭を抱え、自分の身体を投げ出すように首の稼動方向の限界を超えて捻りを加えた
壮年の男はしばらく細かく痙攣していたが、やがて動かなくなった

「殺し方を知ってたの?」窓の外から睦夫は問う
「こいつの殺し方はこいつが教えてくれたんだ」

明朝、睦夫は父・雅夫に捨