約40年間、妻(当時79)の介護を続けてきた夫(82)はこだわりを修正できず、刑事裁判の法廷に立つことになった。7月5日、横浜地裁小田原支部。妻に対する殺人罪の起訴内容が読み上げられると、小柄で痩身(そうしん)の被告は「間違いありません」と答えた。

 検察側の冒頭陳述や、被告人質問などをもとに、妻との関係や事件の経緯をたどる。

記事後半では、一般的に男性が家族を介護する場合に陥りやすい問題について、社会福祉学の専門家が解説します。また、介護者の孤立化をふせぐための提言もあります。

 1967年、職場で出会った妻と結婚した。スーパーのバイヤーとして全国を飛び回り、1カ月のうち10日は家を空けるほど仕事にのめり込んだ。「順調すぎるくらい」の日々だった。

 転機になったのは82年。妻が脳梗塞(のうこうそく)で倒れ、左半身不随となった。医師から「前兆があったはず。気づけなかったのか」と問われ、「仕事にかまけて家庭を顧みなかった自分に大きな責任がある」と自分を責めた。そして、心に誓った。

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