財布に残っていたのは、わずか13円だった。大阪市港区にあるマンションの一室で11日、腐敗した女性2人の遺体が見つかった。いずれも餓死で、住んでいた母親(68)と娘(42)とみられる。冷蔵庫は空っぽで、家の水道やガスは止められていた。数カ月間誰にも気付かれることなく、都会の片隅でひっそりと亡くなった母娘。何が2人を追いつめたのか。

体重30キロ、数カ月気付かれず

 世界最大級の水族館「海遊館」などが集まる大阪湾のベイエリア・天保山。そこからほど近い住宅街の分譲マンションで、母娘は暮らしていた。

 大阪府警港署によると、11日午後、離れて暮らす母親の姉から「妹と連絡が取れない」と通報があった。警察官らが室内に入ると、洋室と居間の床で2人の遺体が見つかった。いずれも死後数カ月が経過し、腐敗が進んでいた。解剖の結果、2人とも低栄養症で胃は空だった。母親とみられる女性の体重は約30キロしかなかった。

 冷蔵庫には何も入っておらず、水道やガスは止められていた。ある捜査関係者は「みそなどの調味料すら残っていなかった」と話す。寒かったのか、娘は上着を着たまま倒れており、財布には現金が13円しか残っていなかったという。

母娘仲良く、近くの住民「上品な人」

 近隣住民らによると、母親は1976年にマンションが建った当初から、一家で住んでいた。結婚していったん家を出たが、娘を連れて実家に戻り、他の家族が亡くなった10年ほど前からは2人で暮らしていたという。

 よく一緒に買い物に行くなど、母娘は仲が良さそうだった。近所付き合いは少なかったが、母親は地域の班長を引き受けたことも。頼みに行った近所の女性は「班長を敬遠する人も多いのに…

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