元首相の命を奪った銃弾で、胸の議員バッジは粉々に砕け散った 拾い集めた捜査員、受け取った昭恵さんは何を思ったか。「弔い合戦」の最中、突然の取材に語ったこととは

 奈良市の近鉄大和西大寺駅前の路上で安倍晋三元首相=当時(67)=が応援演説中に銃撃され、亡くなった事件から1年が経過した。殺人未遂容疑で現行犯逮捕された山上徹也被告(42)は、3月までに殺人など五つの罪で起訴され、今は大阪拘置所で裁判の開始を待つ。その山上被告が撃った1発の銃弾が、安倍氏の胸にあった国会議員バッジに命中していたことはほとんど知られていない。政治家の象徴ともいえるバッジが砕け散った事実は、取材の過程で知るまでは表には出ていなかった。衝撃を端的に物語る情報の真相を確かめられないか。安倍氏の妻昭恵さんに渡されたと聞き、当時奈良支局員だった私は悩んだ末、山口県に向かった。遺族としての昭恵さんの心情を考えれば、歓迎されざる訪問であることは明らかだった。突然の取材にもかかわらず、昭恵さんが語ってくれたこととは。