「人間が桃から生まれるわけないんだよ。どうせあれも橋の下から拾ってきた的なよくある冗談だろ」

そう言われた犬は自分の尻尾を追いかけるのに夢中で桃太郎の言葉なんて一切聞いていなかった。
猿はその後を大人しく付いて歩いているが、そのうち狂ったように叫びながらその辺を飛び回り始めるに違いない。

「キジはどう思う」
「さぁ。おじいさんもおばあさんも歳ですからね」

桃太郎は軽くキジを睨みつけた後、舌打ちをして黙り込んだ。望む答えを得られないと不機嫌になるのはいつものことだ。
先代のキジは焼鳥にされて食べられたと犬から聞いている。それも橋の下から拾ってきた的なよくある冗談の類いなのであろう。
桃太郎が大げさにため息を吐くと、それに反応したのか猿が甲高い声で叫びながらあたりを飛び回り始めた。
より一層桃太郎が不機嫌になっていくのが分かる。犬は相変わらず自分の尻尾を追いかけるのに夢中だ。
ため息を吐きたいのはこちらの方だと思いながら、キジは天を仰いだ。
真っ青な空に大きな白い雲が浮かんでいる。

鬼ヶ島は近い。