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2023/06/05(月) 11:03:35.429ID:S1wGYaUH0「かつては旅先で車窓を眺めることが楽しみの1つでした。田舎に行くと、山や海、田んぼといった自然と調和する伝統的な家屋だけがあって、歴史ある情緒を感知たものです。しかし平成の終わりごろから、東京郊外の最新の住宅と全く同じものが、同時多発的に日本中の田舎に建つようになった。明らかに周囲の景観と不釣り合いで「日本人の原風景の破壊行為」なのに、だれも問題視していません」（旅行マニア）
田舎の集落にはそこにしかない家並みがあって当たり前だった。山陰地方なら石州瓦と呼ばれる赤瓦の伝統住宅が当たり前だったし、新しい家を建てるにしても、日本家屋にしつらえるということが平成前半までは普通だったようだ。しかしそのような集落の中に東京のコピーのような家がぽつんと１つでも建っていると、全体が不格好に見えてしまう。江戸時代から昭和にかけての保たれ続けた古い空間に、突然令和の東京と同じ物があるのは異常そのものだ。
「あのような東京式住宅は、現代東京だから許される、東京の発想で考案されたものです。ウサギ小屋と呼ばれる小さい作りなのは、過密で土地が乏しいために3LDKや４LDKが推奨されたから。都会は核家族で地縁社会もないので、親戚や地域の人が集まる必要もなく、交流の場である広い座敷や縁側を作る必要もないのです。窓が小さくてほとんどないのも、すぐ隣に壁が控えていて採光に期待できないことや、プライバシーを保つため。またコンクリートジャングルで自然もなく現代的な東京の街並みの中に建っているから、庭を設置したり和風の外装をしつらえる必要もなかった。それなのに世界が違う田舎に、東京の論理の住宅を持ち込むことは暴挙でしかないのです」（住宅ライター）
田舎は土地に余裕があり、自然がたくさんあり、和風建築がたくさん満たされている。新築の公共機関でさえ、植栽を設置したり瓦屋根風の外観をしたりなど景観を意識した風情ある作りにしているのに、庭がなく和風要素もかけらもない家が平気で建ってしまえば、街並み保全の努力は無に返ってしまう。
「江戸〜昭和の田舎の家並みで一貫している集落の中に「ポツンと令和の東京」があるのも無様なものですが、田んぼ地帯の隅っこに土地を切り売りしてコピペのように数軒続きで密な分譲住宅を作る「ポツンとニュータウン」も見ていて哀れな気になります。よりひどいのは、立派な石塀に囲われ門柱もあって庭も日本家屋なのに肝心の母屋が東京式新築住宅と言う場合。ポルポトも真っ青な文化破壊の極みです」（先述の旅行マニア）
重要なことは、平成までせっかく一貫してふるさとの情緒を保っていた田舎の「家の秩序」が全国同時多発的に破壊されていることを、個別の自治体も、中央政府も問題視しないことだ。地域の財産破壊であり、一種の公害問題に等しいことで、地域の持続可能性にもかかわるのにである。
「地方で成長産業といえば観光業しかありません。東京の人やインバウンドの外国人は、固有の歴史的な街並みを求めてわざわざ田舎にやってくるのに、街並みがぶち壊れていればガッカリされるだけなので、外貨獲得手段を失うのです。逆に、古民家を守っているような地域では「田舎暮らし」に惹かれた物好きな東京の若者や親日外国人が移住する例はいくらでもあります」（地方研究家）
事実、岐阜県の白川郷は、主要な幹線から外れることで合掌造りの家並みを残すことができ、地域住民の保全の努力でユネスコ世界遺産に認定された。福島県の大内宿も同様で、戦後に新しく建ってしまった無機質な住宅を一旦更地にしてまで家並みを守ったことは有名な話だ。いずれもただの山奥集落から一転、県を代表する観光地になっている。
「「地方」の世界では、自治体の先行事例を中央政府が取り込んで国策にすることはよくあります。住宅問題も同じなのです。大内宿のように無機な新築住宅を解体し、自然と和風建築や固有建築だけが調和する家並みを取り戻すことを全国の田舎で進める「地方家並み保全法」などを制定して速やかに実行しなければなりません」（先述の地方研究家）
日本の田舎はただでさえ人口減少傾向にある。なおかつ「空き家問題」で存在そのものが地域の文化財といえる日本家屋はいくらでも余っているのに、新築住宅を建てまくれば余計に空き家率が引き上げられ、秩序破壊が一気に進んでしまう。ちょっと想像すれば子どもでもわかることだ。日本の田舎の狂った住宅問題について真剣に向き合う時はまさに今なのだ。
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