ニートのワイがラノベ作家になろうと挑んだ結果を残す
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『孤島ルナティック』
一作目の作品
推理小説とライトノベルは相性がいいと考えてのもの
元々ライトノベルに関心がなく、一般小説の方が馴染みがあったが故の折衷案
小説のネットサークルのオフ会で孤島に集められた主人公達
正体を明かさない主催者に、鏡を自分だと認識できない少女に、無口で他人と関わらない女、暴力的で神経質な男と、集まったメンバーは曲者揃い
クローズドサークルで行われる全員にアリバイのある数え歌連続殺人事件
不可思議な惨劇を前に主人公は静かに微笑む
自信満々でライトノベルの新人賞へと送った 結果は一次落ち
当時「ラノベの一次は日本語チェック」と言われていたこともあり、相当ショックだった
ただ自信を持って言えるが文章自体はまともだったはずだ
しかし振り返ってみれば「ぐだぐだで運頼みのトリック」、「矛盾は力技と偶然で解決」という推理小説としては酷い有様
実はメインヒロインが黒幕という自分の好きな展開をやりたかっただけ
参加者全員元々狂人設定だったのだが、そこに対しても特に背景やドラマがなかったため、推理小説の皮を被ったペラペラでメンヘラ臭い謎ポエム小説だったことは認めざるを得ない
一次落ちも仕方ない出来だった 処女作が報われないのは仕方ない
俺は二作目の作品を執筆する
『空想少女症候群』
コテコテにラノベらしさを目指した作品
思春期少年少女にイマジナリーフレンドが発現して、それが日常に干渉してくる奇病が世界各地で見られるようになる
主人公達発症者は孤島の巨大な隔離病棟へと送られ、そこでの生活を強いられる
病気自体はぶっちゃけていえば、ジョジョのスタンドが可愛い女の子で話し掛けてきますよって感じ
知り合う患者達の心の傷とイマジナリーフレンドの性質はリンクしていて、気難しい彼らと事件を経て友情を深めていく物語
かなり王道ライトノベルに寄ったといえる
俺は今回こそはと自信満々でライトノベルの新人賞に送った >>7
2作目の結果は😠💢
ちゃんと最後まで書ききって🥺 結果はまたも一次落ち
正直絶望で吐いた
審査シートは「イマジナリーフレンドのせいでキャラが増えすぎてぼやける」くらいのことしか書かれていなかった
あまり納得できていない
ただ、今となっては落ちた理由はわかる
ショッキングな展開を作りたいからだけでほぼ無意味にヒロインを殺害
視点変更を嫌ったがために殺人鬼だった相手の事情が上辺しかわからず、ドラマ性に欠ける作品だった
序盤のヒロインとの相互理解もノルマ的に果たしただけで特に面白い、ドラマのあるシーンではなかった
「何となくナンセンスでグロテスクなだけの、独創性を謳った中身のないゲテモノ料理」だったのである 俺と俺以外の全ての作者の名誉のために言っておくが、一次落ちは最低限の文章作法が足切りではない
構成が物語の体裁を保っているのか、ライトノベルとしてカテゴリーエラーを起こしていないかが見られていると思っていい
そしてそのことは審査シートで書かれていないことが多い
適当にわかりやすい相手を納得させやすそうなことだけ書かれて返される まあ単純にキャラ2倍かみんな多重人格みたいな設定だものな
薄まって取っ散らかるわ 三作目『僕は人を殺す夢を見たと嘘を吐いた。』
他人の嘘を見破れる超能力者の主人公
その能力が元で、彼は人間不信で根暗な性格だった
主人公はそんな彼に執着を見せる、年上の幼馴染の少女に強い束縛を受けていた わりとみんな思いつくけど面白くするのが難しい設定と導入に敢えて挑戦してるのか? 主人公の陰鬱な日常と並行して、過去の事件が語られる
主人公が幼少期に憧れていた、廃れた公園でだけ会える神様を自称する少女
話が進むにつれて元々嘘を見破る能力は彼女から授けられたもので、やがては彼女が自ら命をたったことが発覚 主人公は作中で出会った人と協力して、神様の少女について調べることになる
実は少女は宗教団体の教祖の娘で、強力な思考誘導能力を有した天才だったことが発覚する
主人公の超能力は人の気持ちがわかなくて苦心していた彼に授けられた、「人の気持ちがわかった気になれる能力」だったのである
楔ではなく、本来救済として渡されたものだった
真実を知った主人公は超能力を言い訳にするのをやめ、自分の心の闇、そして現実の問題と対峙することを選択する
書き上げたとき、俺は本当に天才だと思った
これまでの失敗は全てこの作品のためにあったのだ、と
俺はこれを失敗したらライトノベルは諦めると決心して新人賞へと送った すぐに人が死ぬし陰鬱だし、やっぱりレーベルおかしいんじゃないの?
ラノベならチート能力を持った主人公がヒロインの風呂場覗いてキャーキャー言えばいいんだよ 結果は容赦なく一次落ちだった
ぶっちゃけここまで読んでくれた人なら察しているかもしれんが
至らなかった点は幾つもあるだろうが、根本的にどこまでいっても「気持ち悪くてメンヘラ臭い中二のポエム感」が抜けない題材と展開と文章だったのが最大の原因としかいえない
何ならタイトルの時点で一生滲み出ている
俺はここで一度筆を折ることになる
だが、数年後、あるサイトを目にした切っ掛けで再起することになる
「小説家になろう」である 90年代後半から00年代あたりの路線ぽい感じだし昔の話か
ラノベってそもそも男主人公自身がなんやかんや苦労したり犠牲になったりするのは
ほぼ既定路線なので無力感や敗北を印象付ける為には
ヒロイン殺すかレイプ展開に走りがちみたいな所あったからしゃーないけどこれ系って嫌われたよな 陰を往く人や殺人鬼探偵を参考にすればいいんじゃない 「小説家になろう」がよくわからなかった俺はまず数作投稿した
「ミッシリングガールズ」
歪んだ女の子を題材にした短編集
説明不要
だいたい今までの俺
「僕らのマーダーゲーム」
ダークウェブでデスゲームに登録された主人公と、彼を補佐するネット友達のハッカーの少女の物語
いつも通り黒幕は親友の女の子
デスゲーム系がモバゲーで多かったため、その系譜を受けての作品
「トゥルーRPG」
事故に遭い、目覚めるとゲームの世界にいた主人公
ここが実験途上の意識のフルダイブゲームであり、何かしらの計画に取り込まれていることを旅の途中で主人公は知っていくことになる
自分と同じく「現実の世界」を知る謎めいた少女、そして「真相を知りたくば白兎を追え」というメッセージ
その内に主人公は背景に渦巻く陰謀と悲劇を知り、大きな選択を迫られることになる 「ミッシリングガールズ」、「僕らのマーダーゲーム」、「トゥルーRPG」
全てブクマは100未満
なろう作者の集まるスレでは「底辺作品」に当て嵌まるレベルだった
ただ、この三作品でなろうのシステムやトレンドについて俺も理解を深めていた
俺は当時まだ開拓が浅かった「異世界転移系」に手を出す
主人公は我が儘な女神にうっかり殺されて、特別なスキルを授けられて異世界を支配する魔王を倒すための旅に出ることになる
コテコテのなろう系である 主人公は道中で「ハクジ」という謎の少女と接触する
彼女は元々ある村で現人神として称えられていたが、村人を儀式と偽って魔導実験の犠牲にしていたことが主人公の活躍で明らかになって逃亡する
ハクジは主人公と目的が似ているのか、その後も何度も対峙することになる
主人公はヒロイン達と共に目的であった魔王討伐を果たす
これで女神との約束通り元の世界に帰れるはずだった
ただ実はそれは女神の嘘で、寿命が尽きる女神が自分の後継者を作るために行った大規模な儀式だったことが明らかになる
そのために必要な工程が「魔王討伐」であり、主人公が選ばれたのは主人公の前世の因縁に深く関係があった
ハクジは女神の後継レースに敗れて母親である女神に捨てられた存在であり、自身の存在理由を求めて神の座を執拗に狙っている
物語は主人公の前世の因縁と世界を懸けた後半戦へと移行する この異世界転移ものは最終的には1000ブクマを達成した
俺の中では大きな快挙だった
挑戦的な後半戦についても「ここから面白くなる」、「序盤は退屈だったが終盤から盛り上がった」といった感想を多くもらった
SS以外でまともなフィードバックを受けたのは初めてだったから感動した
ただ、1000ブクマは決して高い値ではない
商業化には最低でも3000ブクマ、安定して狙うためには1万のブクマが必要だった
ここで俺はトレンドに沿わせることの大切さを学んだ
当時まだ珍しかった追放スタートが序盤で読者を集めているのに適していると気が付く
もっとなろうファンタジーらしい軽さと、俺の作品らしさの両立を追求することにした 俺はなろうのシステムについても詳しくなっていた
ランキングに入って初動で勝負するのが重要だと気が付く
以下の六点を戦略として持つことにした
・トレンドに沿わせる
・なろうらしい軽妙さを大切にする
・追放スタートにする(当時はさしてメジャーではなかった)
・ランキング戦略を重要視する
・旧作や活動報告、Twitterで告知して一気に人を集める
・ランキングの評価ポイントを稼ぐために一章分を書き溜めて短期間で投稿する 読んでるからどんどん書いていって
小説書いてる人の文章だなってのは読んでて伝わるよ 書き上げたのは「最弱ステータスの劣等勇者」
日本人が何人もゲーム風の異世界へ勇者として召喚される
主人公はその中で唯一ステータスが全て1、職業表示は文字化けしていた
勇者として役立たずのため酷い扱いを受けていたが、最強格のステータスを持っていた年下の女の子に庇われる形になり、それが主人公の自尊心を余計に傷付けることになっていた
主人公はそんな中、自分のステータスの低さを活かしてゲームのバグ戦法のようなものを見出して、自分を馬鹿にしていた他の勇者達を出し抜くことに成功する
勿論それだけは終わらせない
そもそもこの世界がなんなのか、何故主人公だけおかしなステータスを持っていたのか
物語は幻想世界の神秘と現実世界との交差、そして主人公の内面の問題へと発展する
プロを練りに練って、今までの全ての失敗を糧にして十万文字分を書き上げた
プロットは既に百万文字分あった
俺はこれまでにない圧倒的な手応えを感じてこれを投稿する 誘導とランキング戦略の甲斐があって初っ端から総合ランキング200位にランクイン
俺は勝利を確信した
笑いが止まらなかった
日に三回更新を一章完結まで続ける準備はできている
一章完結では評価ポイントが集中する
負けるのが難しい状況
そのはずだった
俺は前作に遠く及ばない400ブクマの内にランキングから弾き出された 感想は付いている
「前作も面白かったから期待」、「夢のある世界から不穏さが蓄積していく感じが溜まらない」
「主人公は性格が未熟で好きになれないけど、つい応援したくなっちゃう奴だ」
でも俺は気が付いていた
この作品を書き上げても、ある日突然読者が大きく増えるようなことは絶対にない
俺はこの時点でもう負けたんだ
寄せられる読者の期待
それは俺が飢えていたものの一つでもあったはずだ
プロになるのが全てなのか?
そして残り九十万文字分のプロット
人生のリソースを費やしてこの作品を書き切るのかどうか 自分が何をやってるのかわからなくなった
読者から逃げるのが怖かった
俺は合計百万文字以上の作品を投稿していたなろうのアカウントを消去した
作品のデータの保存も行わなかった
それが俺のけじめだった
新人賞ラノベを送っていたノートパソコンも叩き壊した
正確には俺はニートじゃなくてフリーターだった
(途中ニートだった時期もあるが)
ファミレスのバイトを辞めて、ブラック企業に就職
たまに恋しくなるけど、もう小説を書くためにキーボードを叩こうという気は起きない
かれこれもう十年近く昔のことになる これで俺がラノベ作家になろうと挑んだ結果はお終いだ
読んでくれた人はありがとうな 読んだけど、感想としては「自分一人で完結しすぎ」かな
トレンドを推測したり考えることは良いことだけど、他の作者が何考えてるかも知った方がいい
その辺はなろうのエッセイ辺りで読める
新人賞一次落ちについては下読みに弾かれるレベルだから、その下読みが課した基準に当てはまらなかったんじゃないかな
よく聞くのが最初の5ページで主人公の性格が分かる描写がないと見切るってやつ
一次選考なんて全部読む訳じゃないからとにかく序盤で判別されるよ ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています