子どもの頃の話。
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子どもの頃、僕は２階建ての借家にすんでいた。
母親も仕事をしていたので、学校から帰っても自分一人のことが多かった。
ある日、夕方遅く学校から帰ってくると、家の中が暗い。
「おかあさ～ん」と呼ぶと、２階からか小さな声で「はあ～い」と
応える声がする。もういっかい呼ぶとまた「はあ～い」。
自分を呼んでいるような気がして、２階へあがる。
階段をあがったところでまた母を呼ぶと、奥の部屋から「はあ～い」と声がする。
奇妙な胸騒ぎと、いっこくも母に会いたいのとで、奥の部屋へゆっくりと
近づいていく。
そのとき、下で玄関を開ける音がする。母親があわただしく買い物袋をさげて
帰ってきた。「しゅんすけ、帰ってる～？」明るい声で僕を呼んでいる。
僕はすっかり元気を取り戻して、階段を駆け下りていく。
そのとき、ふと奥の部屋に目をやる。
奥の部屋のドアがキキキとわずかに動いた。
僕は一瞬、ドアのすきまに奇妙なものを見た。
こっちを見ている白い人間の顔だった。 そのとき、僕は恐怖で凍りついた。その白い顔は、いくら考えても母親の顔ではなかった。怖くて、家の中を走り回って逃げたくなったが、母親が帰ってきたので、怖い思いをしたことを伝えた。
母親は僕を抱きしめて、「心配しないで、ただの想像だよ。たまにそんなことあるんだ。」と言って、僕を慰めた。
でも、その恐怖の経験は忘れられず、しばらくは夜になると、奥の部屋のドアを閉めて寝た。後日、母親が友人に話したところによると、その家に前の住人が亡くなったという話があったそうだ。その住人の霊がまだその家にいるのではないかと思うと、ますます怖かった。
今でも、その恐怖の経験を思い出すと、心臓がドキドキと高鳴る。でも、あの経験を通じて、霊的なものにも目を向けるようになった。 その後、その家での怖い出来事は起こらなくなった。母親は「そんなことがあったとしても、怖がる必要はないよ。」と言って、僕を励ました。でも、僕は心の中で、もしもあの白い顔が霊だったら、その霊に安らかに眠ってもらいたいと思っていた。
数年後、その家を引っ越すことになった。引っ越しの前日、僕は奥の部屋に入ってみた。窓から差し込む光が、ほころびた壁に当たって、部屋を優しく照らしていた。そこで、僕はふと、その白い顔を思い出した。そして、その時初めて、自分の中で何かが変わった気がした。
翌日、引っ越し作業が終わった後、僕はもう一度その家を見て回った。庭には大きな木があり、風がそよいでいた。空気が新鮮で、心地よかった。僕は「また、ここに戻って来たいな」と思った。
それから数年後、僕は大学の研究でその地域に戻ることになった。何となく、あの家を思い出し、近くを通るたびに見てみた。ある日、その家の前を通ったとき、僕は思わず立ち止まった。そこには、新しい住人が住んでいるようで、庭にはきれいな花が植えられていた。何となく、心が温かくなり、安心した気持ちになった。
そして、あの白い顔が何だったのか、という疑問が消えていった。もしかしたら、ただの想像だったのかもしれないし、そうでなくても、その霊が安らかに眠ってくれたのかもしれない。でも、それよりも、自分があの家で過ごした思い出が、自分を成長させてくれたことに感謝することができた。
それから、僕は自分自身を取り巻く霊的なものにも、より敏感になり、自分自身の成長にもつながることに気づいた。そして、あの家での経験が、自分をより深いところで成長させてくれたのだと、改めて感じた。
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