新型コロナウイルスの影響で収入が減った世帯に国が無利子で資金を貸し出した特例貸付制度で、今年1月に返済期限を迎えた貸付のうち、実際に返済されたのが18・6%にとどまっていることが厚生労働省のまとめでわかった。返済の免除や猶予などの手続きをしないまま未返済となっている割合は44%に上る。借受人と連絡が取れないケースが相次いでおり、総額約1・4兆円以上に及ぶ貸付金の大半が回収できない恐れがある。(福永正樹)

 特例貸付制度は、政府のコロナ禍での困窮者支援策の柱として、2020年3月に始まった。当面の資金を貸し出す「緊急小口資金」(最大20万円)と、生活再建までの資金を貸し出す「総合支援資金」(最大9か月で180万円)の2種類あり、コロナの影響で収入が減少したことが条件。昨年9月まで、無利子、保証人不要で1世帯あたり最大計200万円を借りることができた。

 厚労省によると、貸付は382万件で総額1兆4431億円。緊急小口資金は2年以内、総合支援資金は10年以内に返済する必要があり、今年1月から返済が始まった。返済は、21年度か22年度の住民税が非課税の世帯は申請すれば免除され、収入状況などによって1年間猶予する制度もある。貸し付けと回収業務は全国の社会福祉協議会が担う。

 借りた時期によって返済期限が異なり、厚労省のまとめ(速報値)では、1月に期限を迎えた貸付金は246万件。このうち89万件(36・1%)が低収入などを理由に返済を免除され、3万1000件(1・3%)が猶予された。実際に返済が始まったのは45万件(18・6%)で、免除や猶予手続きがないまま返済されなかったケースが108万件と全体の44%を占めた。詳細な金額は未集計という。

 未返済の一部には社協と相談中のものもあるが、多くは書類が宛先不明で返送されたり、電話がつながらなかったりして、連絡が取れないケースだという。

 5332世帯が特例貸付を利用した大津市社協では昨年12月以降、返済の免除や猶予に関する相談が急増し、多い日に50件近い相談が寄せられ、職員を増員して対応している。

 1月に期限を迎えた約7900件のうち34%が免除などの手続きがないまま、返済されていない。実際に返済があったのは全体の2割ほどにとどまっている。

 手続きがない世帯には、滋賀県の社協と協力して、自宅を訪問したり、携帯電話のショートメッセージを送ったりしているが、反応があるのは1割程度。他にも借金を抱えていて、返済に窮して自己破産の手続きに入る人もいるという。

 大津市社協の山崎晴美・自立支援課長は「相談してもらえれば、就労などを支援することができる。1人で悩まず、いつでも連絡してほしい」と呼びかける。

 厚労省は「返済免除が一定数に上るのは想定されていた。生活再建が進まず、返済が難しい場合は、社協に相談してほしい」としている。

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