海沿いの高台に立つ神奈川県横須賀市の久里浜医療センター。この春に大学生となり、東京で寮生活を始める長野県内の男子高校生(18)が今月下旬、父親(61)、母親(58)と一緒に樋口進・名誉院長と向き合った。「大学に行っても、しっかり自分をコントロールできるかい?」。高校生は背筋を伸ばして、「はい」と答えた。

 センターは、インターネットやゲーム依存の治療を全国に先駆けて始めたことで知られる。男子高校生がはまったのはオンラインのゲームだった。最もひどかった中学2年の頃は学校に行かず、朝から晩までパジャマ姿のままプレーし続けた。両親に連れられて3か月間入院し、その後も月に1回の通院を続けてきた。

 「1日でいいからゲームをやめようよ」。母親の懇願に、男子高校生も「やめないと」と思ってはいた。

 だが、ゲームは頻繁にアップデート(更新)される。彼が好きなゲームは3か月に1度新しいステージやキャラクター、アイテムが増えた。プレーヤーが飽きてきた頃合いを見計らうように、細かい変更もあった。その度に、画面上に通知が出る。プレーヤーの関心(アテンション)を誘う仕掛けだ。「終わりがなく、抜け出せなかった」と話す。

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