作家というのは作られるものだと思う。生まれついての作家はいないし、
夢や幼児期のトラウマから作家ができるわけでもない
――作家(なり画家なり俳優なりダンサーなり)になれるのも、意識的な努力
あってこそのことだ。もちろん才能もいくらか関係あるはずだが、
才能は些末な要素であって、食卓塩ほどの価値もない。単に才能があるだけの者と
成功する者とを分かつのは、ひとえに日々の研鑽のみだ。
才能だけではなまくらなナイフも同然、とてつもない力で振るわないかぎり
なにひとつ切れはしない。(略)たゆみない努力と修行という砥石が、
才能というなまくらナイフを研ぎ澄ます。(略)だからこそ、われわれは
自分のナイフを自分にぴったりの方法で真剣に研ぐしかないのだ。

――スティーヴン・キング『死の舞踏 恐怖についての10章』(ちくま文庫)より