0001以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
2023/03/09(木) 12:16:55.314ID:PYfle8Zn0親父が転勤族であったために、どこか1箇所に留まることがなかった。しかし、親父が転勤をしなくなり、一軒家で暮らすことになった。
正直不安で仕方なかった。みんなの身内感、それにより苛まれる僕の孤独感。どう振舞ったらいいのか分からなかった。
そんな時に会ったのが景だった。
出来上がった集団の中に入るのが苦手な僕の為に、景はさりげなくサポートをした。グループ分けの時に上手く入れるようにしてくれたり、あるいは孤立する僕に話の先を向けてくれたり。
景の凄いところは、そういった気遣いを気遣いに見せないところにあった。本当は景が促してくれているだけなのに、クラスメイトは自発的に僕を誘ったり、僕に話しかけたかのように錯覚する。
景はクラスの中心に居ながら、その全員を等しく大切にしていた。思い返せば、景の役割は一介の小学生ではなく、先生か何かに近い。クラスには景の他にも、仕切り役の女の子である氷山さんや、ガキ大将タイプの根津原が居たけれど、寄河景の役割はもっと独特なものだった。基本的に景はみんなと等しく仲が良かった。
景はみんなを愛していたし、みんなも景を愛していた。彼女はいつだって好意の膜に巻かれていた。陽だまりの中で彼女が微笑む度に、教室内の空気が調整される。景はクラスのサーキュレーターだった。
景はみんなを愛していたし、みんなは景を愛していた。
