彼は有名な作家だった。
彼の小説はベストセラー。ドラマ化されて映画にもなった。
世界的な賞をいくつも受賞し、インタビューや講演会で引っ張りだこだった。

彼は幸せだった。
けれどもそれはただの夢だった。

目を覚ますと彼は無名の作家だった。
彼の小説は一冊も売れず、出版社からは締め出され、それでも書き続けたが神は報いてくれなかった。

「わたしはなんて不幸なんだろう」

彼はため息をついてまた布団に横になった。



ある売れない作家が眠りに落ちたころ、地球の反対側で一人の男が目を覚ました。

彼は有名な作家だった。
彼の小説はベストセラー。ドラマ化されて映画にもなった。
世界的な賞をいくつも受賞し、インタビューや講演会で引っ張りだこだった。
だが彼は不幸だった。

彼はかつて自分の中に確かに輝くものを持っていた。
その光の指す方にはいつだって楽しい世界が広がっていて、彼はそれを小説にするのが大好きだった。
けれども今はもう何もない。
世界中の誰もが彼の作品を褒めるが、彼の中の輝きはすでに消えて跡形もない。

「わたしはなんて……」

彼の苦しみを知るものは一人もいない。



ある有名作家が眠りに落ちたころ、地球の反対側で一人の不幸な男が目を覚ました。
彼には味方が一人もいない。
彼の中の輝き以外は。

彼は今日も書き続ける。
彼の世界をまっすぐに。
その幸せは、地球の裏側の誰かしかしらない。