その過程で池田氏が目にしたのは、一般企業に就職するも、他大卒の上司や同僚と馴染めず、苦しむ彼らの姿だった。

「営業成績が張り出されて、みんなの前で上司に『短大卒のアイツがあれだけの数字をあげているのに、天下の東大を出ているお前の数字はなんでパッとしないの?やる気が足りないのかな』なんて詰められると、プライドはズタズタだよね。いまでも思い出すだけで死にたくなる」

これは、池田氏の友人・加瀬良介さん(仮名・30代後半)がこぼした愚痴だ。

加瀬さんは東大法学部を卒業後、メガバンクに就職。配属された支店で言い渡された業務は、中小企業や個人向けの営業だった。

会社の社長や資産家の自宅を一軒ずつ訪問し、保険や投資信託の購入を打診する。客の機嫌を窺い、断られても粘り強く訪問を続ける。学生時代の大半を机に向かって勉強することに費やしてきた加瀬さんにとって、それは想像を絶する「苦行」だったという。

「俺が並の数字しかあげられないなかで、マーチ(明治・青山学院・立教・中央・法政)卒の『学生時代はイベント系サークルやテニスサークルでひたすら楽しんでいました』みたいな連中が、口のうまさと体力にあかしてガンガン契約をとってくる」

最終的に加瀬さんは精神を病み、会社を無断欠勤。産業医との面談の末、休職を余儀なくされた。