年間赤字24億円。毎月2億円の無駄金だ。
20代サラリーマン1000人分の月給を浪費している。

建て替え前の国立競技場は収入が9億円あり施設維持費が4億円で5億円近くの黒字だったことに比べれば、差し引き30億円近い赤字施設を1670億円かけて建設したことになる。

東京五輪から1年を経て、施設はどうなったのだろうか。
うだるような暑さの8月中旬、筆者は実際に歩いてみた。

都心の「緑のオアシス」として多くのスポーツ愛好家や公園の散歩者、またトラックやタクシーなどの休憩場所となっていた競技場周辺の森は、今はない。
コンクリートで整備された公開空地には真夏の太陽が照りつけ、アスファルトには陽炎が立っている。

遠目には立派に見えるスタジアムだが、近づいてみると、計画見直しが遅れに遅れた結果、突貫工事によらざるを得なかった影響は払拭されていない。
建物と外苑西通りが接する歩行者空間は、いまだに未完成建物のようなむき出しの鉄骨やデコボコの耐火被覆、設備配線や配管やダクトなどが露出したままだ。
「それがデザインなのだ」と開き直られても、資金の乏しいベンチャー企業のオフィスや、少ない自己資金で頑張る開業したてのカフェや美容院じゃあるまいし……。
1670億円もの巨費を投じた巨大施設において、超ローコスト手法の「スケルトンデザイン」など納得がいくものではない。

さらなる弊害は、緑を生かした施設という場当たり的なコンセプトのために設置された、小さなプランターや薄い表土に植えられた植物たちである。
水持ちが悪く日照りが続けばすぐに枯れ始めるため、常時の水やりが必要なだけでなく、地上20階近い高所に設けられた人工庭園の植物の維持には費用も困難もともなう。

また、今後は木の質感を生かしたといわれる建物の各部位の木の劣化や退色も心配になる。
ところが、一部は木ではなく木目プリントを施した金属製という。
ならば金属部位の錆の発生や汚れも懸念材料となるかもしれない。

施設維持費は今後高まることはあれ、低くなることはないだろう。

国立競技場では4月から、観客席やフィールドを見学できる「スタジアムツアー」が実施されている。
参加料金は大人1人1400円で、これまで約4万5000人が参加したという。
ツアー自体は意義深いが、これで24億円の赤字を“清算”できるだろうか。