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2022/05/17(火) 06:00:51.471ID:vvwhBvKN0動画の内容はよくあるもので、バーチャルな世界で活動するアイドルや俳優などのコスプレをした動画を投稿してみるというもの。
もちろん最初は人気もなく、再生数もゼロのままだったが……ある日を境にその動画は爆発的に伸びることになる。
そう、なんとこの動画には「本物の人間にしか見えないほど精巧に作られたアバター」が使われていたのだ。
この技術自体は昔からあったのだが、人間の容姿をそのままトレースするというのは技術的にも費用的にも非常に難しく、まだ一部の企業でしか実用化されていなかった。
しかし、この動画ではそんな難題をクリアしてしまっている。これは画期的なことだった。
そしてここからは怒涛の展開だ。
この技術を使ったコスプレイヤーの動画が次々と投稿されていき、あっという間に人気が出るようになる。
そうなると、当然他の企業のコスプレイヤーたちも黙ってはいないわけで……。
企業間の争いが激化した結果、とうとう大規模な炎上が起きてしまったようだ。
その結果、今まで順調に人気が出ていた企業は全て撤退してしまい、残っているのは『猫ノ瀬タマキ』のような個人勢のみとなってしまった。
しかも、悪いことは続くようで……この騒動をきっかけにして、いくつかの企業が倒産してしまったのだという。
つまり、企業側はもう二度とこのような事態にならないようにするために、これ以上の人気を出すことを規制したのだ。
企業側からすれば、この技術を悪用されるようなリスクを考えれば仕方がない措置だろう。
『猫ノ瀬タマキ』の場合は、元々個人勢として活動していたため問題なく活動できていたが、それでも大手企業の参入が無くなったことでかなり苦しい状況になっているそうだ。
『猫ノ瀬タマキ』自身も、今回の件を受けて引退を考えていたようだけど……どうしても諦められない理由があったみたいで、今も活動を続けているんだとか。
そして、その理由というのが……
「私ね、実は憧れている人がいるんです！その人は私なんかよりも全然凄くて、顔出しせずにずっとゲーム配信だけやってるんですよ！」
俺の隣にいる白髪の少女―――『猫ノ瀬タマキ』こと、星川理沙さんだった。
彼女は俺の顔を見るなり、「やっぱり、あなたでしたか……」と言って嬉しそうに微笑む。
俺は彼女が憧れているという人物の正体を知り、思わず苦笑いを浮かべてしまう。
「えっと、それでですね……私、どうしてもその人にもう一度会いたいんです！だからお願いします！協力してくれませんか？」
「……まぁ、事情は分かりましたけど、どうして俺なんですか？もっと他に頼れる人がたくさんいると思うんだけど」
「だって、あなたはあの『黒騎士』ですよ！？『黒騎士』ならきっと私の力になってくれると思ったからです！！」
目をキラキラさせながら言う彼女を見て、俺はまた困った表情になってしまう。……まさか、『黒騎士』である俺を頼ってくるなんて思ってもいなかった。
