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(’-’*川ジュンビガツライトキハシナクテモヨイバアイモアル📚🍳🥗ショウセツカイテミタオ🐰マタ🍹♪
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0001jc!ダオ
垢版 |
2022/04/26(火) 21:22:21.628ID:6ySgR2tL0
男は既に訳もなく衰弱し切ったようなその背中の後に、ギクリとなにか得体のしれない嘲笑うような憶えのある気配を感じました。
「彼は純粋よ…」
男がその時、また女性へと振り返ってもふっつりとなぜかその笑顔は消えていて、今は浅黒い影の中に澱んで沈み、責めるようなその狂った光をまた黒い瞳の奥に妙に力強く宿らせて、儚く闇の中へそっと溶け入るようにしてもう今は消え去るのでした。
「純粋だとっ…!」
吐き捨てるような呻きとともに、興奮してベッドに半身を勢いよく起こしながら男はひどく苦々し気に目を覚ましました。そこは極薄暗い簡素に整頓された士官用の船室で、壁には綺麗な観葉植物とともに幾つかの飾り棚がまるで気まぐれのように配されていました。その内の枕元に最も近いくり抜きには意味ありげにコントロールパネルがやや大きめの幾つかのボタンに色々な小さな光を明滅させて、他には長方形のモニターが今は淡い光をそこいら中に放ち、部屋全体を包むように施された壁の衝撃材と同じ真鍮色のその飾り棚を実に心地よく反射させ、それがなにかしら機能性以上の妙な居住性を静かに自然に演出して見せていました。
男はひとり、湿り気をふくむ溜息を続けました。その瞳をたまらず震わせはっきり残った氷のようなその無残な恐れは、柔らかな微妙な光から今は逃れてすべて散り散りの小さな闇の中にすら紛れる夢から秘かに抜け出たひとつの確かな魂、それこそをどこかあたかも求めるようにして逃れ、力なく危険に漂い彷徨うのです。
「また同じ悪夢を見るようになっちまった…!」
男は目を閉じてじっとしました。恐る恐るもう一度また大きめの枕にその頭をうずめめたところで仕方なく、しぶしぶ淡い重力の中へと抜け出ようと男は諦めるのでした。慣れた一連の仕草で力なく、ダウンケットの衝撃に備えたそのジッパーをその不機嫌な表情をそのままに、まだ温かい肌に馴染むような闇の中にひと際濃い呪縛のようなその掛布を狂いなく真ん中からためらいなくゆっくりと唯ふたつに切り裂くのです。その時、男が見向きもせずちょうど離れた枕元が闇の中に光りました。例の長方形のモニターがたちまちにひどく明るく灯って、その中にひとりの美しい若い女性のみずみずしい顔を大写しにひょいとこちらを不躾に覗かせにわかに宿らせるのでした。その光は横合いから、今は青ざめてそわそわする男の顔を妙に物狂おしく激しく照らし、したがって更に激しく不機嫌に歪ませます。女が口を開きました。
「大尉…」
下士官らしいその事務的な一言のうちにも女は柔らかな表情で偶然ではないふたりの今の関係のそのみずみずしい一端をよく表わしているような、あるいは純粋な生命の喜びを唯遊ぶように唄うような、全ての生命の解きがたいまだ目に見えて完成はされないこの世の崇高で複雑で力強い計画的構造というべきようなものに憚りなく、あたかもまたひとつ恭しく当然のことのように疑いなくなにか心のこもったお供え物だけを少々捧げるかのような、安心して温かい、それでいてそれが矢のように落下する青黒い静まり返った幾つもの断崖をただ絶えずのぞき込むような、物狂おしくも伸びやかで明るい非常な緊張を瞬かせるように綺麗に光輝かせるのです。まるでそれはでも男の不機嫌なその例の眉根を、闇夜に瞬時に癒すほどにはほとんど、まだ全く足らないのでした。
「何だっ…!?」
若い女は瞬時ひるんだようにうつむきつつ、真剣に更なる事務的な伝達事項を口に走らせます。
「よろしければ、モビルスーツデッキの方へいらしてください」
唇にはピンクのルージュが赤い軍服の襟に弾くよう。まるで光から逃げるように男は既にモニターを後にしていました。
「十分後に行く…!」
「はい!」
たちまち女も男から逃げるようにしてまた妙に明るいそのモニターを素早く切って連絡を終えるのでした。男の部屋の前でしばらく女は瞬きを繰り返します。
「どうしたんだろう? こわい、こわい…」

おわり
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