もし日本が外国に攻められたら、自衛隊は一体どうやって人々を守るのか、そしてどんな作戦を展開するのか――。小説「オペレーション雷撃」で、中国軍の最新兵器によって占拠された沖縄の多良間島を自衛隊がどう解放するか、というシミュレーションを行った経験がある山下氏に話を聞いた。

「戦場になる可能性が高い場所としては、北海道と南西諸島」
「自衛隊は“日本を守る組織”ですが、これまで特定の国を仮想敵国と明言したことはありません。ただ現実問題としては、戦闘になる可能性が高い相手としてロシアと中国を想定しているのは確かです。戦場になる可能性が高い場所としては、北海道と南西諸島。とりわけ沖縄の南西諸島は台湾からも近く、自衛隊は現在も与那国島や宮古島に部隊を配置するなど防衛体制を強化しています」

尖閣諸島周辺海域には中国海警局の公船がたびたび侵入し、緊張した状態が続いている。自衛隊には専守防衛という鉄則があり、「先に撃たれなければ撃てない」とさえ囁かれているが、自衛隊はどんな状況になったら攻撃を開始するのだろうか。

「自衛隊は、政府が防衛出動命令(自衛権に基づき必要な武力の行使ができる命令)を出すまで武力の行使ができません。つまり、目の前に敵軍がいても防衛出動命令が出なければ基本的にこちらから撃つことはできないんです。ただ存立危機事態(日本と密接な関係にある他国が攻撃されたことで、日本国民の生命、自由が脅かされる明白な危険がある事態)として、台湾近海などで活動している米軍の艦艇が攻撃された場合には反撃する可能性もあるでしょう」

無人の尖閣諸島や海上ではなく、人が住んでいる場所への攻撃があった場合はどうなるのだろうか。
「日本は島国なので、突然軍隊が上陸してくるという可能性は低いです。ウクライナのように市街戦になったり、市民が巻き込まれたりする戦闘がいきなり始まることは考えづらい。そもそも現代の戦争では、ミサイルや軍隊の侵攻のような直接的な攻撃の前に、数カ月前から国境付近で軍事演習が行われるなど準備段階が存在します。自衛隊は電波情報なども常時傍受していますから、侵攻の気配は察知することが可能でしょう。衛星や無線の情報などから危険エリアを絞り込み、まずは自衛隊も演習という名目で内地の部隊を集めて対応にあたると思います」

“演習”という名目で集まった自衛隊と他国の部隊が、国境(海)をまたいで睨み合いとなる。そして攻撃の始まりは、実は日常のちょっとした異変から始まるという。

「おそらく最初の異変は“インターネットや電話が使えなくなる”ことでしょう。これは攻撃の準備として通信網を遮断したことによるものです。同時にマルウェアなどのコンピューターウイルスが日本の各省庁や大企業に送りこまれることが予想されます。そのうえで日本の“反撃力”を削ぐために巡航ミサイルなどでレーダーサイトや航空基地を攻撃し、自衛隊の迎撃能力を無力化する。制空権や制海権を確保した後に、兵士や戦車が上陸という手順が予想されます」

敵国の上陸が始まれば、一般市民の被害も出かねない。一般市民の避難が急務だが、山下氏は「早期に住民避難を行う必要があります。作戦準備に入れば自衛隊にその余力はないだろう」と悲観的だ。

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予想されるのは徴兵ではなく“緊急募集”
いままさに“時間を稼ぐ”戦いを繰り広げているウクライナでは、市民兵が組織されて数字の上では100万人規模の軍隊が組織されている。日本でも徴兵が行われることがあるのだろうか。

「日本では法律上、徴兵はできません。市民兵の組織には法律が必要でしょう。ただ、自衛隊の緊急募集は始まるでしょうね。年齢制限を広げたり訓練期間を短縮したりしたうえで、あくまでも戦闘は自衛官として行うことになると思います。組織的な動きは無理でも銃を撃つだけなら数日で習得できますし、ウクライナでも対戦車砲を撃って逃げるようなことはしていますから。とはいえウクライナのように、100万人もの人が手を上げてくれるかどうかは微妙なところだと思いますが」

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https://news.yahoo.co.jp/articles/d112f17cf12ae0b3485b5c6dc88a0c71a736f23d