皇帝「あー……反乱でも起きねえかな」
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皇帝「本日の政務はここまでだな」
宰相「鮮やかな仕事ぶりでございました」
皇帝「今日も帝国は平和であった」
宰相「これも全て、陛下のご人徳によるものでございます」
皇帝「しかし、こう平和だとついこんなことを考えてしまうな」
宰相「というと?」
皇帝「あー……反乱でも起きねえかな」
宰相「さっきの人徳云々は無かったことにして下さい」 宰相って別に側近じゃないんだけど
無教養が書いたの? 宰相「なに考えてんですか! 反乱起きねえかななんて!」
皇帝「ほら、帝国といえば反乱じゃん?」
宰相「そんな連想しませんよ!」
皇帝「実は、最近読んだ小説で面白いのがあって」
宰相「は? 小説?」
皇帝「これなんだけど」
宰相「タイトル……『立ち上がる戦士』。なんですかこれ?」
皇帝「今すげえ流行ってる小説だよ。ベストセラーになってる」
宰相「どんな内容なんです?」
皇帝「悪政を行う大帝国を倒すために、勇敢な若者が立ち上がるという内容だ」
宰相「そんなんがベストセラーになっちゃってるんですか!」 皇帝「これがホント面白くてさぁ……。ページめくる手が止まらなくて……」
宰相「はぁ」
皇帝「反乱という行為に強い憧れを抱くようになったのだ!」
宰相「抱かんで下さい」
宰相「それにしても、帝国に反乱を起こす小説なんて……。作者を呼び出して、思想のチェックを……」
皇帝「あー、無理だと思うよ」
宰相「なんでです?」
皇帝「俺も勲章を与えたくて、出版社に問い合わせたんだけど、出版社も作者のことはほとんど知らないみたい」
宰相「なんですかそれ。怪しいなぁ」 皇后「どうなさいました?」
宰相「皇后様! 皇帝陛下が反乱に憧れてまして……」
皇帝「うむ」
皇后「まあ……」
皇帝「反乱はロマン! 妃もそう思うだろう?」
皇后「ええ、思いますとも」
宰相「同意しないで下さい! 止めて下さいよ!」
皇后「まあまあ、陛下は最終的には国のためになる判断をなさると信じておりますから」
宰相「出発点が反乱起これだと、どう足掻いても無理なような気がしますが」
皇后「すぐ自分の中のブームも収まりますよ。見守ってあげましょう」
宰相「皇后様がそうおっしゃるのであれば……」 ……
皇帝「今日は穏やかな気候だな」
宰相「ええ、暖かすぎず寒すぎず、心地よい陽気です。市民たちの笑い声が聞こえてくるようですね」
皇帝「反乱勃発にはもってこいだな」
宰相「そうですね。ってええ!?」
皇帝「というわけで、今日は一日反乱デーにしたいと思う」
宰相「嫌なデーですねえ」 皇帝「さて宰相よ、反乱というのは誰が起こすものだと思う?」
宰相「そうですねえ……。例えば、食うに困った農民が反乱を起こすというのは聞いたことがあります」
宰相「飢えるぐらいなら暴れる、ということでしょうな。ですが我が国の食糧事情は……」
皇帝「農民か……よし、決めた! 農民に頼みに行こう!」
宰相「陛下が農民に頼み事とは……いったい?」
皇帝「反乱起こしてって」
宰相「は!?」 ―農場―
農民「……」ザクッザクッ
皇帝「おお、やってるな」
農民「見慣れねえあんちゃんだな。なんだべか?」
宰相「……この方は皇帝陛下だ!」
農民「えっ……ははーっ!」ガバッ
皇帝(だいぶ気持ちいいな)
農民「皇帝陛下っていうと、もっと威厳のある方かと思って……」
皇帝(だいぶ傷つくな)
農民「それで、そんなお偉いさんがオラになんの用ですだ?」
皇帝「うん……ちょっと反乱起こしてみない?」
農民「へっ?」
宰相(マジで頼んじゃったよ、この人……) 農民「反乱……ですか?」
皇帝「うん、ほら……不満とかあるでしょ? その熱き思いを発散してみないか!」
宰相(なんでスポーツマンのノリなんだ)
農民「不満? ないですだ!」
皇帝「ないの!? 嘘つけぇ!」
農民「本当ですだ!」
皇帝「えっ……」
農民「このところは豊作続きですし、陛下のやった治水事業のおかげで不作の時も助かって……」
皇帝「ど、どうも」
農民「感謝してこそすれ、反乱なんて起こす気ありませんだ!」
皇帝「照れるな……」
宰相(まあ、なんだかんだこの人、やることはやってたからな……) 農民「よかったら、これどうです?」
皇帝「イモ……」
宰相「陛下、そんなもの食べては……」
皇帝「いただきます」ポリッ
皇帝「……ほう! 素朴な味でいける!」
農民「いいイモはそのまま食っても美味い! もちろん料理すればもっと美味いですけど」
皇帝「なるほどなぁ〜」
農民「これもお上がちゃんとしてくれてるからだべ。ありがたいことですだ」
皇帝「こちらこそ、いいものを食べさせてもらった。これからもいい野菜を作ってくれ!」 皇帝「う〜む、農民に反乱させる作戦は失敗か」モグモグ
宰相「イモ食べながら歩かないで下さい。下品ですよ」
皇帝「宰相、農民の他に反乱を起こす勢力といえばなんだ?」
宰相「宗教でしょうか」
皇帝「ほう?」
宰相「宗教団体は自分たちの神を信仰してますからね。それこそ陛下よりも優先して」
宰相「なのでそれを大義名分に、自分たちこそが天下を取るべきなのだと反乱を企てるケースもあるそうです」
皇帝「なるほどな……よし、国内最大の宗教団体のトップに会いに行ってみるか」
皇帝「≪皇帝vs神≫の頂上決戦だ!」
宰相「どことなくB級臭がする対戦カードですね」 ―宗教施設―
宰相「彼が宗教団体のトップです」
教主「これはこれは皇帝陛下、我が教団へようこそ」
皇帝「うむ」
教主「何か御用ですか? それともまさか入信?」
皇帝「あ、いや……反乱を起こしてくれないかな、と思って」
教主「反乱?」
宰相(農民の時も思ったけど、もうちょっと頼み方ってものがさぁ) 教主「帝国に反乱ですって? そんなことしませんよ」
皇帝「なぜだ。お前たちは神を信仰してるんだろう? 上に立ちたいと思わないのか」
教主「信仰してるといっても、我らの宗教は伝統的に“信仰はするけど頼り切りにならないようにしよう”スタイルなんで」
皇帝「ほう」
教主「お布施も求めてはいますが、適度にするよう言ってありますしね」
教主「お祈りの時間なんかほら……ほぼお菓子食べる時間ですし。見て下さい、あそこ。もはやサロンですよ」
マジデー… アハハー… ビスケットタベル?
皇帝「ゆっるいなぁ」
宰相「この緩さが国内最大の宗教になった一因かもしれませんね」
皇帝「勉強や筋トレもあんまり厳格にすると続かんしな」 教主「それに……」
皇帝「?」
教主「ぶっちゃけ神なんていませんしねー!」
教主「長い間教主やってますけど、神のお告げなんて一回も聞いたことありませんよ!」
教主「ゆるくやってないと、やってらんないっすよ! こんなの!」
皇帝「うわぁ……」
宰相「ぶっちゃけちゃいましたねえ……」 教主「もしホントにいるんなら、今すぐ私を罰してみろ〜ってなもんです! ワハハハハッ!」
ピシャァンッ! バリバリッ!
皇帝「うわっ!」
宰相「ひっ!」
教主「あ、あがが……」プスプス…
ドサッ
皇帝「いたみたいだな」
宰相「そうですね」
皇帝「死んではいないようだな」ツンツン
宰相「我々は去るとしましょうか」
皇帝「神様、これからも我が帝国をよろしく!」 皇帝「農民も反乱しない、宗教も反乱しないとは、我が国はたるんでる!」
宰相「たるんでるの使い方間違ってます」
皇帝「となると、他に反乱するのは誰だ!?」
宰相「異民族……でしょうか」
皇帝「そういえば我が国にも、異民族を併合した歴史があるな」
宰相「そういった人々が独立をしようと立ち上がる事例はあります」
皇帝「よし、次のターゲットは異民族だ!」 ―集落―
皇帝「やあ、どうも」
頭領「おぬしは……」
皇帝「この国の皇帝だ」
頭領「皇帝……」
皇帝(この目つき、期待できる!)
頭領「太古の昔、我ら民族を併合した偉大なる帝国のお方がなんの用で?」ギロリ
宰相(うわ、めっちゃ怒ってるじゃん。護衛を連れてくるべきだった)
皇帝「独立とか……興味ないかなと思って」
頭領「独立?」
皇帝「うむ。どうだ、ここらで反乱を起こして、自分たちの国を作ってみないか?」
皇帝「悪しき帝国の支配から脱し、新たな楽園を建国するのだ!」
宰相(なんで演説口調なんだよ) 頭領「独立なんてとんでもない!」
皇帝「え……」
頭領「帝国に併合されたおかげで我らは文明化できたという歴史もあるし」
頭領「自治は保たれているし、虐げられてるようなこともない」
頭領「そんな偉大なる帝国から独立する理由など、まるでありませんな!」
皇帝「なんだと……!?」
宰相(さっきの本音だったのかよ!)
頭領「それに……」
皇帝「それに?」
頭領「我らのモットーは先祖代々『入るなら大きな傘』なもので!」
皇帝「なんて奴らだ……」
宰相「生き残る上で賢い選択かもしれませんけどね」 頭領「よかったら、食事でもしていきます?」
皇帝「そうね。宰相もどうだ?」
宰相「では、お言葉に甘えて」
頭領「さっそく、獣の肉をぶつ切りにして焼いたやつを……」
宰相(うおっ、なんて野蛮な……。宮廷の食事とは大違いだ。陛下の口に合わないんじゃ……)
皇帝「いただきまーす!」ムシャムシャ
頭領「いい食いっぷりですな!」
皇帝「ほう、いけるな。焼き加減が均等でないのがいい味出してる」
宰相「あなたも適応力すごいですね」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています