0001jc!ダオ
2022/01/25(火) 22:22:21.170ID:4LBVEaB20トルメキア戦車大隊はその傷つきながらも圧倒的な挑発とともに、ある意味同じ人間としての人情やなんとなく罪の意識とのせめぎ合いの中でただ並列にそっけなく、いつもながらの横一列の陣を不吉な黄色い夕焼けに向け対峙しつつ、その敵の様子を何時間も何時間もただひたすら静かにうかがっていました。隊長車の上に●シャナ。風を受け、甲冑を捨て去った下着ともつかない妙なクリーム色のワンピースを無造作にはためかせながら拳銃を差し込み、その腰に手をやってすべてを険しく睥睨して立っています。付き従うクロトワのそのマントの赤い裏地が、今や神妙に軍旗のように後ろに翻っています。
「梃子でも動きそうにありませんなあ」
●シャナはいかにも傍若無人で、振り向きもせず男の姿ははなからまるで眼中に無いようでした。
「帰りを待っているのだ」
クロトワは金髪の上官の美しい横顔をあらためてくまなく調べるように見直しました。
「帰り…?」
「あの娘がガンシップで戻ると信じている」
なるほど、なかなか面白くなってきたという感じに妙にクロトワは口を歪めて言葉を継ぎました。
「ガンシップはやっかいですなあ。今のうちに、一当てやりますか?」
泰然として依然振り向かず、●シャナはさしで口を一切許さないような口調で返します。夕日の反射に冴えて、ドレスの背中が真っ白に見えました。
「お前はあの船が何なのか知っているのか?」
クロトワは質問に疑いも持たず、まるで主人を迎える犬のように頭に浮かんだ知識をただちにそのまままた披露しました。
「火の七日間の前に作られたやつでしょう。嘘か本当か知らねえが、星まで行っていたとかなんとか。エラくかたいから砲もきかねえが、なあに、穴にぶち込めば…」
「私も待ちたいのだ」
「え?」
「本当に腐海の深部から生きて戻れるものならな」
●シャナはそこでクロトワに振り向き、ながく男の記憶に残るような美しい、でもどこか深刻な微笑とともに柔らかな声で、一種なみなみならない悟ったようなその心を残すようなでもどことなく素っ気ない、迷いのないハッキリとした言葉をそこに吐き捨てました。
「あの娘と一度ゆっくり話をしてみたかった」
自分をあたかもわらうような、少し気の毒な、疲れ切ったような異様な様子で。
残念ながら今日はここまでです。
何らかんらで谷はそのあと何らかんら救われます。予言者のおばあさんもいます。脇を固める子供もいます。
「姫様、青い異国の服を着ているの」
「その者青き衣をまといて金色の野に降り立つべし。おお、古き言い伝えはまことであった…!」
青い服の少女は微笑みながらなおも金の光の上を歩きます。生まれたばかりの天使のように。
おわり