主人公「俺はいつも色んな属性の女の子に囲まれてる。ただし……」
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朝、7時過ぎになると、いつも幼馴染が起こしにくる。
幼馴染「起っきろーっ!」ユサユサ
主人公「……」
この幼馴染、ブスである。 幼馴染「朝食作ってきたからね、食べるでしょ?」
主人公「うん」
幼馴染が笑うたび、彼女のガタガタで黄ばんだ歯並びが俺の気力を萎えさせる。 幼馴染「ほら、あーんしてっ!」
主人公「あーん」
特にひどいのが口臭だ。
幼馴染がしゃべるたび、この世のものとは思えぬ刺激臭が、俺の鼻に突き刺さる。 幼馴染「それじゃ、学校行こっか」
主人公「うん」
ニキビとそばかすまみれの顔面に、亀裂のようなえくぼを作って、幼馴染が微笑む。
俺は先ほど食わせられたトーストをあやうく吐き出しそうになった。 俺たちが登校していると――
近所のお姉さん「あら、主人公君、幼馴染ちゃん、おはよう!」
幼馴染「おはようございます!」
主人公「おはようございます」
けばけばしい厚化粧をした、近所のお姉さんと出会った。
猛獣のような犬歯と、血のように真っ赤な長い舌を持つ彼女は、どう見ても妖怪である。
俺はあまり目を合わせないようにして、学校へ急ぐ。 <学校>
自分の机でぼんやりしていると、眼鏡をかけた女の子が話しかけてきた。
眼鏡「お、おはよ、主人公君」
主人公「おはよ」
もちろん、ブスである。
眼鏡を外したら美人、などというどんでん返しはありえない。 眼鏡「こないだ、私が貸してあげた本……どうだった?」
主人公「面白かったよ」
ちびまる子ちゃんに「みぎわさん」というキャラクターがいるのはご存じだろうか。
この女の子はあれを300倍ぐらいブスにした外見だと思ってくれればよい。
こいつに比べれば、みぎわさんは天使である。 眼鏡「よかったー! つまらないっていわれたらどうしようかと思った!」
主人公「大丈夫だって」
霧吹きのようにツバを飛ばしながら、眼鏡をかけた娘がまくし立てる。
ちなみにこの子に借りた本は、ところどころ濡れたような跡があった。
おそらく、こんな風に本にもツバを飛ばしまくっていたのだろう。 すると――
短髪「ちょっとちょっと、あたしも混ぜてよ!」
陸上部所属のボーイッシュなブスがやってきた。
カマキリのような輪郭に加え、凄まじい出っ歯であり、前歯の長さが3センチぐらいある。 短髪「あたし、こないだの大会で優勝しちゃったんだ!」スルッ
主人公「へぇー」
ブスが自慢の足を見せつけながら、武勇伝を語る。
その足にはアマゾンの密林さながらの剛毛が生い茂っていた。
男性ホルモンでも打ってるんだろうか。それとも男性なんじゃなかろうか。 短髪「しっかも、やっと100メートル12秒を切ったんだよ! すごいでしょ!」
主人公「すごいね」
俺がこのボーイッシュブスを直視できるのも、だいたい12秒前後が限界だ。
いい勝負である。 幼馴染「一時間目は数学だね。ちゃんと予習してる?」
眼鏡「また、貸してあげたい本があるの……」
短髪「次の大会でもきっと優勝してみせるっ!」
主人公「ハハハ」
ブスどもがツバを飛ばし、臭い息を吐きながら、好き勝手にくっちゃべっている。
俺はただただ愛想笑いを浮かべる。 委員長「ちょっとあなたたち! そろそろ授業の時間よ!」ファサ…
幼馴染「あ、ごめん!」
クラス委員長がやってきた。
成績優秀で、クラスの誰よりも厳格、一流大学に合格間違いなしといわれる才女だ。
ただし、ブスである。 委員長「あなたも、あなたよ!」
委員長「女性にちやほやされていい気になってないで」
委員長「彼女たちに席に戻れって注意しなきゃダメじゃない!」ビシッ
主人公「ごめん」
太い眉毛とたるんだ二重あごを力ませて、人差し指を突きつけ、俺を叱る委員長。
その指先をよく見ると、爪の間には黒いカスがみっちりと溜まっていた。 委員長「ま、その優しさが……あなたのいいところでもあるんだけど……」ファサ…
主人公「ありがとう」
長い黒髪をかき上げつつ、委員長がデレた。
黒髪からは大量のフケがまき散らされ、粉雪のようなありさまになった。 授業が始まった。
ギャル「ねーねー、教科書見せてくんない? 忘れちゃって」
主人公「いいよ」
隣の席に座っているギャルに、俺は快く教科書を見せた。
体臭とドギツイ香水の匂いが混ざった、独特の臭みが俺の鼻を破壊しにかかる。 ギャル「アンタってチョーやさしーよねーっ!」
主人公「そんなことないよ」
このギャルはいわゆるガングロである。
ただし、焼き加減を完全に失敗しており、肌は荒野のようにボロボロで、
肌年齢は素人目にもすでに老人のそれと同等だと判断できる。 ギャル「教科書がよく見えなーい!」グイッ
主人公「近いよ」
わざとらしく体を密着させてくるギャル。
それに伴い、ギャルの顔面から剥がれ落ちた黒い垢が、俺の教科書に降り注ぐ。 ギャル「アンタってホントかわいーね! ウブなんだからーっ! キャハハハッ!」
主人公「そんなことないって」
口裂け女の出来損ないのような表情で、ギャルが笑う。
彼女の笑い声は、黒板をひっかいた時に生じるあの音と同じ効力を持つ。
俺は自分の全身が鳥肌まみれになってるのを感じていた。 教師「コラ、なにをしゃべっている!」
ギャル「きゃっ!」
主人公「すみません、先生」
厳しい口調で、ブスな先生が俺たちを注意する。
シミと小ジワまみれの顔をさらに歪ませたその顔は、閻魔大王顔負けの迫力であった。 教師「主人公! 前に出て、この問題を解いてみろ!」
主人公「やってみます」
ちなみにこの先生、いい年をしてミニスカートである。しかも、なぜか教室でハイヒール。
丸太のようにぶっとい足をどうにか支えているハイヒールに、俺は同情と親近感を覚えた。 教師「全然ちがう! どうやら復習の必要があるようだな!」
主人公「すみません」
口で教えれば済むところを、この先生はわざわざ俺の背中に胸を押しつけ、
俺をマリオネットにするような形で教示を始めた。
背中に伝わるヘドロのような感触に、俺は体温が2、3℃下がるような錯覚を味わった。 ブスだけならともかく不潔で臭いのはキツいな
可哀想 ようやく授業が終わり、昼休み。俺の周囲に、わらわらとブスが群がってくる。
幼馴染「ほら、あーんして」
眼鏡「あ、ずるいですよ……幼馴染さんばっかり」
短髪「あたしだって、主人公にあーんしたいのに!」
委員長「いえいえ、私こそがやるべきよ」ファサ…
ギャル「アタシもやるーっ!」
俺に「あーん」させる権利をめぐって、ブスどもが醜くののしり合う。
昼休みが終わる頃には、俺の顔はツバと垢とフケまみれになっていた。 放課後、ようやく一人になれたところに友人がやってきた。
友人「よ、よう」
主人公「おう」
友人「大丈夫か? 日に日に弱ってるような気がするけど……」
主人公「そうかな」
いつも俺のことを心配してくれてる、優しくて頼れる親友である。 友人「ところでさ、今日オレんちにこないか?」
主人公「どうして?」
友人「もしかしたら……お前を助けてあげられるかもしれない」
主人公「へぇ、ホントかい」
友人「いや……気休めとかじゃねえから! 結構マジな話だから!」
俺は努めて明るく返事をしたつもりだったが、バレバレだったようだ。 実は友人も主人公が男と勘違いしてるだけの女子なんだよね・・・ <友人の家>
友人「この本だ」バサッ
主人公「女神降臨の儀式?」
友人「このとおりに儀式をやって、現れた女神様はどんな願いでも叶えてくれるんだとさ」
主人公「……」
友人「ダメで元々、やってみないか?」
主人公「やってみるか」
俺と友人は力を合わせて、女神降臨の儀式を行った。
儀式の難度は高かったが、除夜の鐘の数と同じぐらいチャレンジしたところで、
ようやく儀式が成功した。
すると―― 女神「うっふぅ〜ん」ボワンッ
友人「うげえっ!?」
主人公「……」
美しい羽衣に身を包んだ、絵に描いたような肥満ブスが現れた。
驚いたが、心のどこかでこの展開を予想していたのも事実だ。 女神「どんな願いでも一つだけ叶えてあげるわよぉ〜ん」
主人公「……」
主人公「だったら……」
主人公「俺を……美女だけが寄りつくようなハーレム体質にして下さい」
友人「よくいった!」
ヒマンブスこと女神の言葉に、すかさず俺は積年の願いを口にした。 ところが――
女神「無理ね」
友人「な、なんで!?」
主人公「……」
落胆はさほどなかった。
なんとなく、こうなることは分かっていた。 周りの容姿は変わらないまま主人公の感性が変わりそう 女神「あなたのブス吸引力は強すぎるのよ」
女神「どんな願いでもといった直後に情けない話だけど……」
女神「あたしの力でもどうにもならないぐらいだわ」
友人「だったら、美人の恋人が欲しいっていうのは?」
女神「それも無理」
女神「たとえあたしが美女を呼び出しても、彼のブス吸引力で弾かれてしまうわ」
女神「あと、すでに存在してる美女を恋人にしても、同じことね。すぐに破局よ」
友人「そんな……」 友人「どうにかならないんですか!」
女神「そうねえ……」
女神「たとえば、あなたと絆の強い女性がいたら、その子を恋人にしてあげる……」
女神「ってのはできると思うわ」
女神「絆が強ければ、ブス吸引力をはねのけて恋人関係になれると思うしね」
女神「だけど、そんなのいるわけがないでしょ?」
主人公「そのとおりです」
友人「だ、だったら……だったらっ!」
この直後、友人は思いもよらない言葉を口にした。
これが俺の運命を変えた。 ……
…………
………………
主人公「……」
妻「どうしたの? ぼーっとしちゃって」
主人公「いや……ふと昔を思い出してたんだ」
妻「もしかして、あなたがブスに追い回されてた頃のこと?」
主人公「うん……」
俺の“ブス吸引力”とやらは、このなかなかの美女といっていい妻を恋人にしてからは、
すっかり消え失せてしまっていた。 主人公「お前があの時、『オレを身も心も女にしろ』って願って恋人になってくれなかったら」
主人公「俺のブス吸引力は今でもあのままだっただろう」
主人公「だけど、本当に……後悔してないのか?」
妻「ぜーんぜん」
妻「今から思うと、私ってずっとこうなりたかったのかもって気もしてるしね」
妻「それにあなた、いつまでも昔の思い出に浸ってる場合じゃないわよ」
主人公「え?」
妻「だって、あなた……お父さんになるんだから」ナデナデ
主人公「本当か!? やったぁっ!」
かつて俺の親友だった妻のお腹には、新しい生命が宿っていた。
― おわり ― 容姿や口臭体臭も個性や多様性だよね
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