0001jc!ダオ
2022/01/12(水) 22:26:32.272ID:ZVuVwEdr0カッと一時昼のように荒れ狂った嵐の火も、少女の恐れを知らない慈悲の心に何か皮肉な微笑を浮かべながら、夜の帳の陰に身を隠して一時悪戯な目で特別、様子を見ているような恐ろしい時でした。少女が火の中央へ中央へと敢然に歩を進めてそこら中を歩き回っていると、そのうちがれきに埋もれてべっとりとうなだれかろうじて息をする歳の同じころな絶望的な表情の少女が一人、涙も枯れたようにホッと小さく息をつくのを見つけました。
ナウシ●は全身から元気がみなぎるのを感じました。ところがその少女の半身を隠すがれきは非常に重く、熱くて堅い鋼鉄の扉でした。力一杯かろうじてそれをどかすと、それからナウシ●は彼女の手に物々しい鉄の鎖がつながれているのを見つけ呆気にとられました。その時垢じみた、妙に肉の焼ける匂いに息が詰まります。とにかく、ナウシ●は彼女を何とか介抱しようとようやく運び出します。
「あ、ああ…、こ、ここは…?」
少女が目を開きました。
「ここは風の谷よ。しゃべってはダメ、身体に障るから…」
しばらくそうして肝心な少女の胸の具合を診てみると、それはもくもくと血管がもちあがって少し赤黒く、それはすでにどんよりとして真っ赤な死の腐臭がはやくも漂うようでした。思わずぞっとして、そのまま少しはだけた服を直してあげると、ナウシ●はもはや人間の業や見捨てられたようなその運命を前にただ首をうなだれる一人の異様に暗い当然の感傷を禁じえませんでした。細い指が思わず、抑えても抑えても震えました。
「わ、わたしは…、わたしはペジテのラステル…。ぅうっ…! お願い、積み荷を、積み荷を燃やして…!」
何らかんらで谷はそのあと何らかんら救われます。予言者のおばあさんもいます。脇を固める子供もいます。
「姫様、青い異国の服を着ているの」
「その者青き衣をまといて金色の野に降り立たん。おお、言い伝えは本当であった」
青い服の少女は微笑みながらなおも金の光の上を歩きます。生まれたばかりの天使のように。
おわり