男「犯行予告はアウトだけど善行予告はどうなんだろう?」
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TV『店に爆弾を仕掛けるとネット上に予告し……』
TV『30歳の男が威力業務妨害の疑いで逮捕……』
友人「アホだね〜」
男「……」
友人「犯行予告でもう何人も捕まってるのに、なんでこういうアホはなくならないんだろ」
男「……」
友人「どうした? 神妙な顔して」
男「犯行予告はアウトだけど、善行予告はどうなんだろう?」
友人「は?」 友人「善行予告って?」
男「まんまだよ。いいことするって予告してから、それを実行する」
友人「うーん……。まあ……罪にはならないかと」
男「よし決めた、やろう」
友人「ええ!?」
男「さっそくネットに予告を……」
友人「ちょ、ちょ、ちょ、待て待て待て!」 友人「善行って具体的に何するつもりだよ!?」
男「肩揉み」
友人「見知らぬ人から肩揉まれて嬉しい人なんていねーだろ!」
男「じゃあ励ます」
友人「それもどうかと」
男「だったら、なんかいいのあるか?」
友人「掃除ぐらいにしとけ。汚い場所を綺麗にして、迷惑がる人もいないだろ」
男「掃除か。それもいいな。そうしよう」 男(さっそくネット上に……)カタカタ
『○月×日、△□駅前で清掃します』
男(これでよし、と)
男「善行予告の始まりだ」 △□駅にて
男(おー、結構汚れてるな)
男(清掃員がいる駅構内はともかく、周辺はあちこちにゴミが散らばってる)
男(とりあえず、掃き掃除から……)サッサッ
男(ゴミ拾い……)サッサッ
「なにやってんだあいつ?」
「ボランティアかな」
「写真撮っちゃお」パシャッ 男(うん、善行するとなかなか気持ちいいな。これは癖になりそうだ)
男(次の休日に第二回をやろう)カタカタ
『○月□日 △△川の清掃をします』
男「川は危ないから、しっかり準備していかないとな」 △△川にて
男「あちこち空き缶が落ちてるな……」ヒョイヒョイ
男「こっちには釣り竿が捨ててある……」
釣り人「おや、掃除ですか」
男「ええ、ちょっと善行予告をしてまして。予告通りに掃除をしてます」
釣り人「立派な方ですなぁ」
男「いえいえ、好きでやってることですから」 男(やり始めたら、案外面白いな善行。予告をすることで自分を引き締めることもできる)
男(よぉし、どんどんやろう)
『○○森でゴミ拾いします』
『×△通りを清掃します』
『□□公園で掃除を行います』
……
…… ボランティアは悪
清掃員を雇いまくることで世の中の金回りが良くなり好景気が訪れるだろう 男「……」サッサッ
男「……」フキフキ
男「……」ゴシゴシ
ギャラリーA「あ、予告通り来てる!」
ギャラリーB「撮ろう撮ろう!」パシャッ
ギャラリーC「いつも予告通りちゃんと掃除して立派だよな〜」 友人「おーい」
男「おお」
友人「今日もやってるな、善行予告」
男「まあな」
友人「すっかりハマっちゃったか?」
男「ああ、どうやら俺は掃除好きだったみたいだ」
友人「意外な発見だな。だけど、ギャラリーも増えちゃって大変だろ」
男「別に。俺は予告をこなすだけさ」
友人「淡々としてんなぁ」 記者「ちょっとすみませーん」
友人「!(やっぱり来た……マスコミ!)」
男「なんでしょう?」
記者「あなたはこのところ犯行予告ならぬ善行予告をされてますよね」
男「ええ、そうですが」
記者「なぜこんな事をやってるんです?」
男「なぜ、でしょうね。きっかけは何となくとしか言いようがありません」 記者「ひょっとしてもっと大きな目的があって、売名行為のためにやってるのでは?」
男「そんなつもりはありません」
記者「しかし、あなたをそういう風に見てる人もいますよ? それについてどう思います?」
男「そういう人にはそう思わせておけばいいと思います」
記者「特に反論するつもりもないと」
男「時間の無駄ですから」
記者「いつまでやるおつもりですか?」
男「とりあえず自分が満足するまではやるつもりです。まだ当分は続けるでしょうね」
記者(ちっ、つまんねえ回答ばかりだ。もっと裏の顔があるのを期待してたのに)
友人(おお、すげえ。本当に予告して善行することにしか興味ないんだな) ……
青年「……」カタカタ
PC『今日も善行予告! 大勢のギャラリーが集まり……』
青年「クソがっ!」ガンッ
青年「なんでこいつばかりチヤホヤされるんだ!」
青年「たかが掃除してるだけのくせによ! ムカつくぜ!」
青年「こいつはチヤホヤされるためにいいことしてるだけの偽善者だ! みんな騙されてるんだ!」 青年「よぉし、あいつの見えるところに……」カタカタ
『次善行予告したら、ナイフで刺してやる! 覚悟しとけ!』
青年「へへへ……これでビビって、もう善行予告なんかやらねえだろ」
『△月□日 ×△川の土手を清掃して、綺麗にします』
青年「!?」
青年「おもしれえ……だったら俺もホントにやってやる! 善行予告vs犯行予告だ!」 友人「おーい」
男「なんだ?」
友人「今日も予告通り掃除に行くのか?」
男「そうだけど」
友人「やめといた方がいい」
男「なんでだ?」
友人「お前だって分かってるだろ。犯行予告してた奴がいるじゃんか」
友人「マジで刺されるかもしれないし、今回はやめとけ!」
男「やめるわけにはいかない。予告したんだから」
友人「ったく、お前も頑固だなぁ」 ザワザワ… ガヤガヤ…
友人(今日の掃除はいつも以上に人が集まってるな……)
友人(あんな犯行予告があったんだ。当然か……)
友人(中には刺されるところを見に来た、なんて奴もいるんだろうな……)
男「……」テキパキ
友人(一方、あいつはいつもと変わらない調子で、掃除の準備してる……) 男(さて、掃除するか)
男(まずは土手の掃き掃除から)サッサッ
「いいぞー!」
「かっこいー!」
「手慣れてるなぁ」
「一枚撮っておこう」パシャッ
友人(いつも通りの展開だ……。このまま終わってくれればいいんだけど) 青年「うおおおおおっ!」バッ
友人「うわっ!?」
青年「ビビりながら掃除すりゃ許してやろうと思ったのによぉ!」
男「君は?」
青年「俺は犯行予告した者だぁ!」ギラッ
ザワッ……!
友人(マジで来やがった! ナイフ持ってやがる!) 青年「俺はてめえみたいな偽善者が一番ムカつくんだよ! 偽善者のくせに目立って、みんなに注目されてよォ!」
青年「てめえみたいな奴は罰せられるべきなんだ!」
青年「刺してやる! 刺してやるぞぉ!」
男「……」
青年「どうした!? ビビれ! 謝れ! 命乞いしてみろ!」
男「やれよ」
青年「なに!?」
友人(おい、挑発してどうすんだ!? こいつはマジでやりかねないぞ!) 男「俺は善行予告する時、掃除してる最中にダンプカーが突っ込んできて、それで自分が死んだとしても」
男「それで構わないと思ってる。場所と時刻を予告したからには、そこで何があろうと受け入れる覚悟だ」
男「もちろん、刺されることもな」
男「お前もそれぐらいの覚悟で来てるんだろ」
青年「そ、そうだ!」
男「じゃあ刺すといい。俺はいつも通り、掃除するだけだ」サッサッ
青年「さ、刺してやる!」
男「……」サッサッ 男「……」サッサッ
青年「ブッ刺してやる!」
男「……」サッサッ
青年「刺してやるぅぅぅぅぅ!」
友人(勝負……あったな)
青年「う、ううっ……」
青年「かなわねえ……かなわねえよぉ……」ガクッ
男「……」サッサッ 青年「俺の……負けだ……」カラン
男「おい」
青年「は、はい」
男「せっかく綺麗にしたところにナイフを捨てるな」
青年「すみませんっ!」
男「それと刺すのをやめたなら、手が空いたはずだな?」
青年「ええ……まぁ」
男「なら手伝え。この土手はかなりゴミが多い」
青年「はいっ!」 男「すごい量の空き缶だな。ポイ捨て禁止の看板を立ててもらおう」
青年「それはいいアイディアですね!」
男「どうだ、楽しいか?」
青年「楽しいです!」
男「たまには善行もいいもんだろ」
青年「ええ、今日ここに来てよかったです!」
友人(あれだけ荒んでた青年の顔が……まるで見違えるように……) 男「ふぅ、終わった」
友人「善行お疲れ」
男「ああ、一日頑張ったら土手はすっかり綺麗になった」
友人「土手だけじゃないだろ」
男「え?」
友人「お前の善行予告はついに人の心まで綺麗にしちまったな」
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