小説書く
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「この世でいちばん大切な人」を失った少年は、その日からずっと独りだった。 ある日のこと、彼は一匹の黒猫と出会う。そして、少年にひとつの奇跡が起きた―――
「おはようございますっ!今日もよろしくお願いします!」
俺がそう言って元気よく挨拶をすると、目の前にいる先輩達は少し驚いた顔をした。 ここは『CRE8』本社の一室にある配信スタジオだ。防音設備と各種音響機器を備えたこの部屋では今、1人のVtuberが誕生しようとしていた。 といっても別にオーディションが行われるわけではないし、ここで行われることはただの最終確認だけだ。 これからデビューを控えた新人である自分とその同期となる2期生たちの顔合わせも兼ねて、本日は初コラボを行うことになっているのだが……
「お〜い、起きてるかぁ?もしもーし?」
「あ、はい!大丈夫です!!」
いけないけない、ぼけっとしてる場合じゃないな。 自分の頬を叩いて気合を入れ直した後、俺は改めて部屋の中を見回してみた。 そこには既に4名の男女の姿があり、それぞれ準備運動やストレッチを行っていたようだ。 1人は見覚えのある男性……確か蛇道枢という名前の人だったか。 ある日貧しい生活に倒れる名付け親
最後の手紙を書くと彼はこう言った もう1人の女性は見たことがないけど、きっと2期生のうちの誰かだろう。 残る3人のうち、眼鏡をかけた女性だけがこちらを振り向くと、笑顔を浮かべながら手を振ってくれる。 その反応から察するに彼女が同期の最後の1人であり、この場における唯一の知り合いということらしい。 ……まあ、他の面々に関してはまだ何とも言えないというか……なんなら、さっきまで存在すら忘れていたくらいだからな。 何故ならば、ここにいる全員の顔が全く知らないものばかりだったからだ。 事前に説明を受けた通り、自分はこれまで全く違う世界で過ごしてきた人間であり、彼らとは文字通り住む世界が違う。 それを思えばむしろ仲良くなれるかどうかの方が心配になるというものである。 ……だが、そんなことを言ったら彼らに失礼というものだろう。 俺と同じ境遇にありながらもVtuberを志し、こうしてデビューすることを決意してくれた人たちなのだ。 そういう気持ちを忘れずに接すれば、自然と交流出来るようになるはず……だと良いなぁ……。 そういう気持ちを忘れずに接すれば、自然と交流出来るようになるはず……だと良いなぁ……。
「んじゃ、そろそろいいか?お前さんたちが待ち望んでいた瞬間がやってきたぜぇ〜?」
「ちょ!?言い方!!誤解を招くようなこと言わないでくださいよ!!」
「へっ、どうせ間違いじゃねえんだからいいだろうが」……うん、ちょっと不安になったぞ。 「それでは皆さん、よろしいでしょうか?私達も初めてのことですので、色々と戸惑うこともあると思います。でも、一緒に頑張っていきましょうね!」
「…………」
「あれ?聞こえなかったですか?もしも〜し?」
「あの、すいません。えっと、あなたの名前って……」
「あ、あああっ!?ごめんなさい!自己紹介がまだでしたよね!私は花咲たらばと言います!2期生の中では一番の新参者ですが、どうかよろしくお願いします!」……ん〜、やっぱり彼女のことも知らなかったんだよな。 申し訳ないが、こればかりは仕方がないことなので許してほしい。 だって、本当に何もかもが初めてのことなんだもん。右も左もわからない状態っていうかさぁ……。 まずは自分の名前だけど、これはちゃんとわかっている。 天瀬ルルという名前で活動しており、今日からこの事務所に所属することになった新米Vtuberだ。 というのも、家庭の事情により学校に通うことが出来ず、ずっと自宅で勉強をしていたからである。 とはいえそれも一昨年までの話で、去年からようやく普通の生活が出来るようになったため、晴れて高校生デビューをすることが出来たのだ。 ……ちなみに親父さんは現在海外出張中で家を空けており、母さんはその付き添いで同じく家を留守にしている。 つまり、今の俺は一人暮らしの状態なわけだが、幸いなことに生活費については問題なく振り込まれている。 しかもかなり高額だし、これで働かなくても一生暮らしていけるだけの蓄えはあるのだが……まあ、それはおいおい話すことにしよう。 次に家族関係についてだが、これもまた複雑なものがある。 物心ついた頃には既に施設に預けられていて、そこで育ち、中学を卒業したタイミングでここに引き取られたのである。 ……その理由は単純なもので、両親のどちらにも俺を引き取るだけの生活能力がなかったからだ。 引き取られた当初はどうしてこんな目に遭わなくてはならないのかと思ったこともあったけれど、今は感謝している。 ……というのは、実は俺には兄弟がいるらしく、兄にあたる人物が生きているということを知らされたからだ。 その人物は現在20歳であり、既に社会人として働いており、かなりの成功を収めているらしい。 彼が言うには俺の母親と彼の父親は不倫関係にあったらしい。 そして生まれた子供のうち、女の子であった方が捨てられてしまったということだそうだ。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています