リニア「27年開業」断念、34年以降に…座長が「小異を捨てて」と呼びかける場面も

 JR東海は29日、リニア中央新幹線の品川―名古屋間について、2027年を目指してきた開業時期の目標を断念する方針を明らかにした。静岡県が着工を認めず、工期は大幅に遅れており、開業は早くても34年以降となる。

 JR東海の丹羽俊介社長が国土交通省の有識者会議に出席し、「27年の開業を実現できる状況にはない」と明言した。JR東海はこれまで、27年の開業は困難だと説明してきた。早ければ37年としてきた大阪までの延伸も、影響は避けられない見通しだ。

 南アルプスでトンネルを掘る工事は、山梨、静岡、長野の3県にまたがる。15年に山梨側で、16年に長野側で工事が始まったが、静岡工区は周辺環境への影響を懸念する静岡県が着工を認めず、当初の計画からすでに6年以上遅れている。

 静岡側の着工から完成まで10年かかると見積もっており、工期短縮は簡単ではないと判断した。静岡県の同意が得られなければ、新たな開業時期を示すのも難しい。

 会議では、座長の矢野弘典・ネクスコ中日本元会長が「小異を捨てて大同に」と呼びかける場面もあった。静岡県を念頭に置いた発言とみられる。国の支援を得て、静岡県と対話を進めるほかに打開策はない。

 林官房長官は29日の記者会見で、「引き続きJR東海に対して早期開業に向けた努力を促すとともに、関係自治体との対話を促すなど、早期開業に向けた環境整備を進めていきたい」と述べた。

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20240329-OYT1T50177/