先代の知恵を次世代に継ぎ、新しい世界との出会いの場でもある図書館。その場所を支える職員の多くが、非正規で待遇が良くないことを知っていますか。いま、ある司書の「叫び」が注目を集めています。

■「仕事は好き、だけど一人で暮らせない」

 東京都内の公立図書館に務める司書の50代女性は、署名提出の場に駆けつけた。「一生懸命働いても、自立すら難しい状態を何とかしたい。いい仕事をするには、安心して働ける職場でないと」

 この女性は週4回、1日7時間45分働き、月収は手取り18万円程度。低賃金の背景には、「家庭内で男性が稼ぎ、女性は扶養家族になるという前提があるのでは?」と感じてきた。文科省の調査によると、4万3865人の図書館員のうち、約8割が女性。さらにそのうち約8割が非常勤もしくは指定管理者の職員だ。「国は同一労働同一賃金、男女間賃金格差解消を掲げている。仕事にふさわしい賃金と待遇の改善を求めたい」と話す。

 署名に賛同した東京都の司書の40代女性は、職場を去った同僚たちの言葉を思い出した。「司書の仕事は好きだけど、この給料では一人で生きていけない」「家族を養える仕事に就かなきゃ」と話していた。

 女性自身、求人募集を毎日眺め、転職を考えたこともあった。「図書館への情熱や愛情があっても、生活は苦しい。どうか、安心して働かせてほしい」

 文科省によると、司書の数などは把握しているが、賃金や待遇は調べていない。学校司書の中には複数校兼務している人もいる。要望を受け、待遇面を含めた調査ができるか検討するという。