神奈川県大磯町の港で、車イスに乗った79歳の妻を海に突き落とし、殺害した罪に問われている81歳の夫の初公判が5日、横浜地裁小田原支部で開かれました。泣きながら座っていた夫は起訴内容を認めました。夫は事件前、「俺ちょっと頭がおかしくなった」と周囲に漏らしていたといいます。

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「介護に疲れました」と話し、妻の照子さんを殺害した罪に問われている藤原宏被告(81)。5日に開かれた初公判では、次のようなやりとりがありました。

裁判官

「あなたがしたことに間違いありませんか?」

藤原被告

「間違いありません」

40年以上、妻を介護していたという藤原被告は、泣きながら座っていました。

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事件があったのは去年11月、藤原被告は「長男に会いに行こう」と話し、妻の照子さんを連れ出すと、冷たい海に車イスごと突き落としたのです。照子さんは身体に障害があり、車イス生活でした。泳ぐことはできず、病院で死亡が確認されました。

近隣住民

「すごくいい感じの人でしたよ。一生懸命やられてましたし、介護のお手伝いとか」

「旦那さんがよく福祉の方へ連れて行くみたいで。一生懸命やっていたから」

熱心に介護をしていたといいます。なぜ、最愛の妻を海に突き落としたのでしょうか。

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検察側によると、藤原被告は約3年前から力が出なくなり、介護が困難になったため、照子さんを施設に入所させるよう長男らが説得を続けていたといいます。

検察側は「施設に入所させるくらいなら殺害してしまおうと決意した」と指摘し、犯行に及んだと主張しました。

一方、弁護側は「(照子さんの)首に手をかけたこともあった。2人で死ぬしかないと思った。俺が最後まで面倒をみたい」と、将来への不安から、藤原被告が追い詰められていたと主張しました。

時折「うっ…うっ…」とうめき声を上げながら、涙が止まらなかった藤原被告。涙を拭いたティッシュが山積みになっていました。

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追い詰められていたのでしょうか。藤原被告は事件前、周囲に次のように漏らしていたといいます。

近隣住民

「“俺ちょっと頭がおかしくなった”なんて、この(事件の)前言ってた。なんでもっと、みんなに助けを求めなかったかな」

6日の裁判では藤原被告の息子が出廷し、証人尋問が行われます。