(=゚д゚)Ammo→Re!!のようです
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正義や神や奇跡の有無よりも、私は正義の味方の存在を信じている。
あの人がまた私を救ってくれることを、信じている。
だって、あの人は私を救ってくれたのだから。
――とある少女の日記より
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September 25th AM11:49
足場が激しく上下し、風が何もかもを吹き飛ばそうとする過酷な環境下での射撃など、トラギコ・マウンテンライトは経験したことがなかった。
しかもそれが追われる身であり、空中でとなると体験した人間は世界中どこを探してもほとんどいないだろう。
彼は今、ニョルロック上空からクラフト山脈を経由し、ジュスティアを目指すヘリコプターの中にいた。
そのヘリコプターはジュスティアと因縁の関係にあるイルトリア軍の所属だが、操縦士も、そこに乗っているトラギコも今は過去の遺恨は頭にない。
(=゚д゚)「やっぱり全然当たらねぇラギ!!」
ライフルを構え、弾倉を一つ撃ち切ったトラギコが、操縦席に向かってそう叫ぶ。
操縦士は後ろを見ることなく、的確な答えを告げる。
(::0::0::)『ローターだ!! ローターを狙ってくれ!!
パイロットを狙うのは無理だ!!』
(=゚д゚)「よーく分かったラギ!!」
空になった弾倉を、後ろから迫ってくる敵のヘリ目掛けて投げつける。
当然それは当たらないが、少しは気が晴れた。
新たな弾倉に交換し、狙いを定める。
光学照準の先にいるのは、20機からなる攻撃ヘリの群れ。
双方の距離は徐々にだが、確実に広がりつつある。
飛行性能ならば間違いなくこちらの方が優れている。
だが相手は両翼に機銃を取り付けた攻撃ヘリだ。
距離が開けば開くほど、相手にとっては照準を合わせやすくなる。
可能ならば頭上を飛ぶのが一番だが、そのような余裕はないだろう。
不規則に揺れる状態で照準を安定させることが出来ないため、トラギコは思わず悪態を吐く。
(=゚д゚)「くっそ!!」
こちらの持つ弾の数と、相手の持つ弾の数は圧倒的な差がある。
その差がある以上は、こちらが一方的に撃たれ続けるという展開が濃厚だ。
どれだけ逃げ切れるか、そして、どこで相手が限界を迎え、ジュスティアに到着する前に全滅できるか。
一種のチキンレースだ。
(=゚д゚)「……あれは」
その時、トラギコの視界に入ったのは青空に向かって立ち上る巨大な黒煙。
雷を纏い、青空を異形の色に染め上げようとする暴力的な爆発。
海に近い陸で起きたその爆発は、あまりも巨大で、以前にティンカーベルで見た物とは比較にならなかった。
ティンカーベルで起きた爆発とは、何かが根本的に違う。
今トラギコの目に映っている爆発は、暴力的、そして無秩序なものだ。
以前のものはどこか調整された、控えめと言っていい爆発だった。
上空に向かって立ち上るその煙は瞬く間に空を黒に染め上げていき、徐々に明るさを失っていく。 (=゚д゚)「なぁ、俺たちは大丈夫ラギか?!」
ヘリコプターは繊細な乗り物だ。
風の影響を受ければ簡単に傾き、場合によっては墜落の危険性さえある。
(::0::0::)『大丈夫だ、あんたは絶対にジュスティアに送り届ける』
衝撃波を一度切り抜ければ、後はどうにでもなるということなのだろう。
(::0::0::)『しっかし、あんな爆発をお目にかかれるとはな』
光学照準器を覗き込み、トラギコは改めて敵の攻撃ヘリに狙いを付ける。
曳光弾のないトラギコにとって、自分の弾の軌道が分からないというのは極めてやりづらいものだ。
(=゚д゚)「曳光弾でもあればよかったラギ」
そう心の声を嘯きながらも、トラギコの目は自分の放った弾がどうなっているのか、先ほどの弾倉一つ分の射撃でつかめていた。
相手のドアガンナーがこちらを狙っているのを見るに、安定した距離を確保したということだろう。
ならば、急激な移動はないはず。
トラギコは息を深く吐き、狙いをやや上に調整して銃爪を引いた。
メインローターの一部で火花が上がった。
狙いは合っているということだ。
更にそこから狙いをずらし、ドアガンナーに狙いを付ける。
ジェットエンジンを搭載しているこちらのヘリに被弾すれば、空中で大きな花火が上がることになる。
体を固定するベルトに体重を預け、トラギコは更に体を外に乗り出し、風の吹きすさぶ中で射撃を行った。
最初の数発は外れたが、ドアガンナーに命中し、力なくうなだれるのが見えた。
弾倉を更に一つ使いきり、新たな弾倉に交換する。
次はローターに狙いを変え、三発ずつ発砲した。
ローターから火が吹きあがり、空中で機体が回転を始める。
高度が落ち、地上に落ちる前に空中で爆散した。
(=゚д゚)「1機落としたラギ!!」
続けて撃とうとした時、銃弾がヘリの横を掠め飛んで行った。
後続のヘリが攻撃を始めてきたのだ。
(=゚д゚)「やりやがったな!!」
それでも、トラギコの狙いは怒りにぶれることは無かった。
一発ごとに調整を加え、放った銃弾が操縦席のガラスに穴を穿つ。
続けて放った銃弾はその上に着弾し、ローターが火を噴いた。
二機目を落としたが、安心はできない。
(=゚д゚)「もっと速度でないラギか?!」
トラギコが三つ目の弾倉を空にして叫んだのとほぼ同時に、操縦士は唖然とした声色で言った。
(::0::0::)『クラフト山脈が見えてき……
……おい、ランディ、あれが見えるか?』
(::0::0::)『マジか……
あんなの、ありかよ……』
つられて、トラギコは視線を前に移す。
(=゚д゚)「あぁ?! あぁ……」 それを見た時、トラギコも言葉を失った。
まるで巨大なビルが荒野に立っている様に見えたが、それは間違いなく人の形をしていた。
巨大なキャタピラ。
巨大な砲塔。
目に映る全てが規格外の巨大さであり、まるで現実感が湧かない。
だがそれは紛れもなく、兵器だった。
(;=゚д゚)「あれが……ハート・ロッカーか」
近づくにつれ、その全容が明らかになってくる。
だが同時に、その姿の不自然さも明らかになった。
(::0::0::)『だが砲撃してないってことは、何かが起きてるってことだ。
……あれ、倒れてないか?』
転倒しづらいものほど、起き上がるのが困難な構造をしていることが多い。
あれだけの巨体が転倒し、起き上がるとなると相当な時間がかかるだろう。
腕が付いているのはそのリスクを軽減するためだろうが、巨体故に時間を失うのは必然だ。
(;=゚д゚)「あ、本当ラギ。
さっきの爆発に関係してそうラギね」
(::0::0::)『何にしてもラッキーだ、ジュスティアが砲撃されずに済む』
機体が前傾姿勢になり、更に速度を出して進んで行く。
眼前に迫るクラフト山脈が徐々に視界を埋めていく。
しかし、機体は確実に高度を上げ、クラフト山脈を飛び越える態勢を整えていた。
距離が離れたこともあり、トラギコは後ろのヘリに銃撃を浴びせることを止めた。
(;=゚д゚)「さっむっ!!」
一気に風が氷の様に冷たくなったことに、トラギコは思わず間の抜けた声を上げた。
先ほどまでとは比べ物にならない冷気は、彼の体から容赦なく力を奪っていく。
(::0::0::)『あぁ、悪い。 反対側の扉を閉じるのを忘れてた』
(;=゚д゚)「そ、そういう、レ、レベルじゃないラギ!!」
あまりの寒さに歯の付け根が合わない。
ライフルを構える手からも熱が一気に失われ、構えることが出来ない。
その代わり、追手との高度と距離が瞬く間に離れていく。
曳光弾が飛んでくることがないのがせめてもの救いだった。
(;=゚д゚)「こっちも閉じるラギ!!」
(::0::0::)『おう、早く中に入ってくれ!!』
高高度になればそれだけ空気が薄くなるため、ヘリはその飛行性能を落とすことになる。
それはどちらの機体も同じことが言えるが、こちらのヘリにはジェットエンジンが搭載されている。
このクラフト山脈を越えるため、そしてジュスティアへ最高速で向かうための装備だ。
扉を閉め、トラギコは叫んだ。
(;=゚д゚)「頼むラギ!!」
(::0::0::)『マスク忘れるなよ!!』 言われて息苦しさを思い出し、トラギコは天井から下がる酸素マスクを口に当てる。
既にクラフト山脈の白い壁が目の前を覆い尽くしており、機首がはるか頭上を向く。
ジェットエンジンが点火したことを、トラギコは音よりも先に強烈なGで理解した。
座席に体が押し付けられ、呼吸が止まる。
(;=゚д゚)「おおおお!!」
(::0::0::)『刑事さん、今クラフト山の頂上を越えるぞ!!
なんだったらよく見ておきな!!』
機体が一瞬だけ水平を向き、その拍子に周囲の景色が目に入ってきた。
クラフト山脈の頂上よりも上からしか見られない、圧倒的な光景だった。
たなびく雲の群れ。
深い青色の海の彼方に見える大きな入道雲さえ、あまりにも小さい。
まるで、巨大なハードルを乗り越えたかのような、そんな浮遊感を覚える。
その直後の事だった。
(::0::0::)『あっ』
操縦士のつぶやきは一瞬。
その理由は、ほぼ同時に襲った衝撃が答えた。
見えない手によって機体が背後から殴られたかのような、でたらめな衝撃。
ベルトで座席に固定していたトラギコの体が天井に叩きつけられ、機首が真下を向く。
(::0::0::)『……くっそ!!』
様々な警告音が一気に鳴り響く。
操縦士の二人は天井のパネルを操作し、手元のレバーを動かす。
(::0::0::)『刑事さん、大丈夫か!?』
(=゚д゚)「何とかな!!」
(::0::0::)『しっかり掴まっていてくれ!!
エンジン再始動、ジェットエンジン再点火準備!!』
(::0::0::)『各数値問題なし、制御系も問題なし!!
エンジン再始動、ジェットエンジン再点火準備ヨシ!!』
(;=゚д゚)「おいおいおいおい、大丈夫ラギか?!」
垂直にクラフト山脈沿いに落下していくヘリの中、トラギコの体は席に押し付けられ、声を出すので精一杯だった。
操縦士たちは冷静さを微塵も失わずに、冷静かつ大きな声で答えた。
(::0::0::)『あんたは絶対にジュスティアに連れて行く、安心しろ!!』
(::0::0::)『エンジン再始動、ローター回転数問題なし!!
姿勢制御開始、後方確認を頼む!!』
(::0::0::)『姿勢制御をオートモードからマニュアルモードに切り替え!!
雪崩よりも早く頼むぞ!!』
(;=゚д゚)「雪崩?!」
振り返ろうにも、落下による加速がトラギコを座席に縫い付けるように押さえつけ、身動きを許さない。
だが機体の横を通り過ぎていく雪の塊が、背後で起きている自然現象を物語っている。
(;=゚д゚)「爆発の影響ラギか……?」 空中のヘリを叩き落す勢いで発生した爆発は、ニューソクの爆発と考えていいだろう。
問題はその威力だ。
ニョルロック付近で遠くに見た爆発とは、明らかに威力が違う。
それはつまり、距離が関係しているはずだった。
最も高い可能性は、ハート・ロッカーが爆発したという可能性だ。
(::0::0::)『ジェットエンジン準備!!
一気にジュスティアに向かうぞ!!
どうせ機体がもたないんだ、限界まで届けてやるぞ!!』
(::0::0::)『予備タンクからの接続を開放!!
刑事さん、少し我慢してくれよ!!』
機体の向きが思いきり上向きになる。
機首が地面と平行になった瞬間、再びトラギコの背中が座席に押し付けられた。
(::0::0::)『ジェットエンジン点火!!』
その時に発生した加速は、筆舌に尽くしがたい物だった。
目玉が飛び出すのではと思うほどの急加速は、トラギコの肉体を遥か彼方に置き去りにしつつ、それでも前進させるような強引さがあった。
その加速度に思わず目を閉じてしまう。
クラフト山脈を越える時とは、明らかに速度が違う。
(::0::0::)『速度上昇。 機体制御補助装置をオートモードで起動。
数値安定、高度確保。
……ふぅ、どうにかなったな』
(;=゚д゚)「な……にが……」
(::0::0::)『多分だが、ハート・ロッカーが爆発した。
その熱と衝撃波でクラフト山脈の雪が溶けたんだ。
で、雪崩が起きた。
あの爆発の規模だ、山越えできないのに俺たちを追ってきたヘリは全滅だな』
機体側面の鏡に気づき、それを見る。
クラフト山脈の白い姿が遠ざかる中、その背後に立ち上る黒い煙がニューソクの生み出した爆発であることを示唆している。
空が灰色から黒に染まる中、三人を乗せたヘリはまっすぐにジュスティアを目指す。
ようやく体が加速に慣れてきたらしく、トラギコは深呼吸をする余裕が生まれた。
(::0::0::)『スリーピースについて訊いていいか』
(=゚д゚)「あぁ」
(::0::0::)『何か仕掛けがあるんだろ?
空からの侵略にも対抗できる何かが』
(=゚д゚)「そうラギね。
仕組みは知らないけど、とりあえず飛んでくるものなんかは撃墜されるラギ」
スリーピースはジュスティア防衛の要だ。
あらゆる侵略者から市民を守る為に建造されたその三重の防壁は、例えジュスティアの高官でさえも詳細を知らない。
街に入ろうとする人間を調べるための検問所はあるが、そこにいる人間も詳しいシステムなどは分かっていない。
だが、分かっていることは複数ある。
過去に侵入を試みた輩は後を絶たないが、その度にスリーピースに備わった防衛機構が分かるようになっている。
トラギコが知っている対空防御の手段は、彼の上司から聞かされた情報だけだが、真実味はあった。
(::0::0::)『射程距離とかは分からないか?』 (=゚д゚)「いいや、俺も又聞きだから詳細は分からないラギ」
(::0::0::)『刑事さんが中に入る手段とか手筈ってのは、特にないんだよな』
(=゚д゚)「ないラギね」
(::0::0::)『最高にヤな感じだ。
賭けに出て死ぬのも嫌だが、どうしたもんか』
(=゚д゚)「だけど、大丈夫ラギよ」
そのことだけは、断言出来た。
この先の戦況がどうなるかは分からない。
敵が何を狙いにしているのか、その真意も分からない。
だが、それだけは言い切れる自信があった。
(=゚д゚)「こいつぁ、市長が用意した筋書きラギ。
あんたらがイルトリア市長を信頼しているのと同じように、俺はフォックスを信頼しているラギ」
フォックス・ジャラン・スリウァヤがトラギコをジュスティアに呼び戻すということは、そのための準備は全て済んでいるということだ。
彼が保険としてトラギコを指名した以上、それは絶対だ。
彼の描く筋書きは全て規則正しく進行する。
(::0::0::)『分かった、ならその言葉を信じよう』
(=゚д゚)「割とあっさりラギね」
(::0::0::)『あんたは有名人だからな、俺達軍人の間でも知らない奴はいないよ。
何だったら、あんたのファンもいるぐらいだ』
(=゚д゚)「そりゃどうもラギ」
(::0::0::)『俺も、その一人だ。
あんたをジュスティアに連れて行くってのは、名誉な話だ。
そのあんたが信じるっていうんなら、俺もそれを信じるよ』
(=゚д゚)「恩に着るラギ」
(::0::0::)『今の内に装備を整えておいてくれ。
着陸に成功したとして、その時のジュスティアが安全とは言い切れないからな』
(=゚д゚)「あぁ、分かったラギ」
そして、彼らを乗せたヘリがスリーピースを視認できる距離に来た時。
海に浮かんでいた巨大な戦艦が、波しぶきを上げながらスリーピースに直進する姿が見えた。
(;=゚д゚)「突っ込む気ラギか?!」
(::0::0::)『潔いやつだな』
ジュスティアまで、もう間もなくとなったところで、ヘリが減速する。
急激なブレーキに体が前のめりになるが、どうにか耐える。
(;=゚д゚)「こっちはいつでも行けるラギ!!
ここから降下するから、あんたらは逃げて――」
(::0::0::)『駄目だ、連中の部隊が下に集まってるし、ジュスティアからしたら俺たちは不法侵入者だ。
あんたが空中で撃ち殺されたら、この作戦が無意味になる。
ヘリで中に降ろすから、それまでどうにか死なないでくれ』 (;=゚д゚)「……分かったラギ!!」
そしてヘリはスリーピースを越え、ジュスティア上空へと侵入に成功する。
高度を下げ始めた時、戦艦が座礁し、大爆発を起こした。
直前に誰かの声を聞いた気がしたが、爆風に揺られる機体の中でそれを詳しく考える余裕はなかった。
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Ammo for Rebalance!!編
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γ´ γ ̄l  ̄ ̄ l ‐ ‐ { .l└ ┘'―' | ii
ヽ、__ ヽ- ´ ィzzz 「l____|__ ______.....
 ̄ ̄ ̄`ィフ、 ̄``.ィZヽ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ \
ヽ_ノ ヽ.ノ
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September 25th PM00:17
迅速に降下を果たした一行は、周囲の状況を確認しながらヘリから降りた。
長時間の飛行で疲弊しながらも、トラギコはライフルで周囲の状況を確認するのを怠らない。
操縦士の二人も座席の下から取り出したH&K MP5Kを構え、安全を確認している。
街は酷いありさまだった。
幾度も撃ち込まれた砲弾で街並みの半分が崩壊し、ピースメーカーは瓦礫の山となっている。
ハンマーで殴りつけて壊した玩具の城の様な有様を見て、相手が質量弾でスリーピースの防御網を突破したのだと悟る。
普通の砲弾であれば防御装置によって迎撃される。
間違いなく、ジュスティア内部からの情報漏洩があったのだ。
(::0::0::)「まだ侵入はされていないみたいだな」
(=゚д゚)「だけどこりゃあ……酷い有様ラギ」
(::0::0::)「エライジャクレイグの到着までに市民を誘導するって言っても、この状況じゃぁな」
(=゚д゚)「何より、暗さが厄介ラギ。
これじゃまるで嵐の前の天気ラギ」
黒々とした空は、それまであった夏空をかき消している。
九月にしては肌寒い風が吹き、思わず身震いしてしまう。
スリーピースの外側から聞こえてくる銃声と爆発音は、並の戦闘ではないことを意味していた。
ジュスティア陸軍が街への入り口を文字通り死守していれば、民間人が脱出するための時間を稼ぐことが出来る。
人の気配が消えたジュスティアの街並みは、戦争で負けた街の姿そのものだった。
(=゚д゚)「あんたら、本当にいいのか?」
(::0::0::)「あぁ、いいに決まってるさ。
言っただろ? 俺はあんたのファンなんだ」
(::0::0::)「俺はファンって程ではないが、まぁ、ここで戦うのは嫌じゃない。
むしろ、楽しみでさえあるさ」
安全がある程度確認されたところで、二人がヘルメットを外す。
彡 l v lミ「俺はランディ・スズキ・ゴードン、スズキでいい」 ( l v l)「俺はゲイリー・ムネオ・シュガートだ。
ムネオって呼んでくれればいい」
(=゚д゚)「よろしく頼むラギ。
とりあえずは、シェルターに向かうラギ」
彡 l v lミ「分かった。 ちょっと待っていてくれ、ヘリを無力化する」
そう言って、スズキがヘリに戻り、いくつかのケースを運び出してからスイッチを操作した。
離れるように指示が出され、ほとんど時間を置かずにヘリが爆発四散した。
彡 l v lミ「敵に利用されたら元も子もないからな。
とりあえず、あんたにお願いしたいのが、この街の人間に俺達が味方だって伝えることだ」
(=゚д゚)「俺がいればどうにかなるラギ」
( l v l)「そりゃ頼もしい。 シェルターってことは、地下か」
(=゚д゚)「あぁ、行き方があるラギ」
彡 l v lミ「案内は入り口まででいい。
俺達が入り口を守っておけば、後はあんたが市民を誘導するだけでいいだろ?」
(=゚д゚)「そこまでする義理、あるラギか?」
彡 l v lミ「ははっ、面白いことを言うな、刑事さんは。
これは義理じゃない。
俺たちは、これがしたいから軍隊に入ったんだ」
( l v l)「そういうこった。
ジュスティアの人間には理解がし辛いだろうが、発想は同じだ。
だから俺たちが死んだとしても、あんたが何かを感じる必要はない。
この作戦はジュスティア市民を避難させればいいんだ。
俺たちの生死は作戦には加味されていない、そうだろう?」
(=゚д゚)「……そうラギね。
なら、利用させてもらうラギよ」
片手にライフルを、もう片方の手にアタッシェケースを持ったトラギコの前後を囲むようにして、二人が位置につく。
シェルターに通じる経路は複数あるが、最終的にその道は一つに集まる様になっている。
その入り口があるのが、ピースメーカーの地下深くに作られた空間なのである。
既に住民の気配がしないことから、ある程度の避難が完了していることがうかがえる。
戦える者は武器を手に、街のどこかに散っていることだろう。
現在地から最寄りの避難経路を使おうとしたが、すでに封鎖されていたことに、トラギコは違和感を覚えた。
この封鎖という処置は、以降人的災害や自然災害がシェルターを襲わないようにするためのものであって、シェルター側から行うものだ。
街の人間が全員避難を終えているのならば正しい判断だが、果たしてそうだろうか。
(=゚д゚)「……何かあったラギね」
こうなると、恐らくは他の入り口も全て封鎖されていることだろう。
向かう手段はただ一つ。
ピースメーカーにある直通の避難経路を使い、地下に向かうことだ。
シェルターからどうやって列車に乗るのかはまだ分からないが、とにかく、フォックスが残した保険を信じるしかない。
瓦礫の山と化したピースメーカーに向かう途中で、ようやくトラギコたちはジュスティア人に遭遇することになった。
(,,゚,_ア゚)「あっ……!!
トラギコさん!!」 その男は、群青に近い青の制服を着ていた。
それは、非常時に着用が義務付けられている警官の戦闘服だった。
防弾繊維で作られたその服は、衝撃を殺すことは出来ないがナイフや小口径の銃弾であれば防ぐことができるものだ。
(=゚д゚)「状況は?」
幸いなことに、相手はトラギコの事を知っている様だった。
(,,゚,_ア゚)「生き残った全員でシェルターへの直通路を確保しようとしておりまして、その間に生存者を探しているところです」
(=゚д゚)「お前たちが逃げ遅れることになるラギよ」
(,,゚,_ア゚)「それでも、です」
その目は決して絶望に濁ってはいなかった。
これがジュスティア人の強みだと、トラギコは内心で満足する。
少なくとも彼は警官として腐ってはいない。
腐っていない警官がいれば、まだ大丈夫だ。
(=゚д゚)「いい心がけラギね。
警官はどれぐらい生き残れたラギ?」
(,,゚,_ア゚)「ほとんどが生き残れました。
連中が攻めてくる直前に、市長からありったけの武器を持って街中に散る様に連絡がありました。
おかげで、市民の誘導が十分に行えています」
人がいても武器がなければ戦いにならない。
相手の兵器と対等に戦うためには、それなりの装備が必要だ。
運び出した装備がどの程度の物か、それが重要だった。
(=゚д゚)「連中は棺桶を使っているラギ。
こっちも用意しないと、ジリ貧になるラギ」
(,,゚,_ア゚)「軍の補完していた棺桶は陸、海軍共に軒並み駄目になりました。
直前にタカラ・クロガネ・トミー元帥の指示で移動させたらしく、そこに砲撃が……」
(=゚д゚)「内部の裏切りラギね。
で、ツーとジィは生きてるラギか?」
警察長官ツー・カレンスキーと副長官のジィ・ベルハウスの生存は、生き延びた警官たちにとっては重要な問題である。
指揮官の有無だけでなく、シェルターにいるジュスティア人にとっても希望になり得る。
市長が瓦礫の下にいる今は、それが重要だった。
よほど強い精神を持っていない限り、指揮官を失った組織は瞬く間に疲弊する。
(,,゚,_ア゚)「はい、現在は街の中で生存者を探しています。
とにかく、誰もこの場に残さないようにとの命令を受けています」
だが、その二人が生きている限りは、警察が折れることはない。
(=゚д゚)「なるほどな。
シェルターの警備は?」
(,,゚,_ア゚)「腕に覚えのある警官隊がついています。
軍属は皆、スリーピースの外側で迎撃に向かいました。
海軍がかなり押されていて、壊滅は時間の問題かと」
敵の巨大戦艦が沈んだとはいえ、物量は圧倒的なまでの差がある。
棺桶の性能が高ければ高いほど、海軍は不利になる。
むしろ彼らは、敗北を覚悟した上で市民が逃げるための時間を稼いでいるのかも知れなかった。 (=゚д゚)「分かったラギ。
俺と一緒にいるこの二人は、イルトリアからの援軍ラギ」
(,,゚,_ア゚)「い、イルトリアから?!」
(=゚д゚)「不思議じゃないラギ。 俺たちは今んところ、同じ敵を相手にするラギ」
(,,゚,_ア゚)「と、トラギコさんがそうおっしゃるなら」
その時、瓦礫の影で悲鳴に似た歓声があがった。
「し、市長?!」
「市長だ、市長がいたぞ!!」
(;=゚д゚)「……え」
歓声と共に、重々しい跫音が近づいてくる。
〔::‥:‥〕『概ね予定通りの時間だね』
それは、重装甲の棺桶の代名詞である、トゥエンティー・フォーだった。
通常と異なるのは、装甲の節々に突き出した複数のパイプ状のフレームだ。
棺桶を脱ぎ捨て、中から出てきたのは紛れもなく、ジュスティア市長、フォックス・ジャラン・スリウァヤその人。
爪'ー`)y‐「ふぅ、生き埋めの後の一服は格別だな」
葉巻を口に咥え、フォックスはまるで風呂上がりの様に呑気な言葉を口にする。
(;=゚д゚)「あんた、良く生きていたラギね」
爪'ー`)y‐「あぁ、そりゃあそうだ。
私は世界中の悪党から嫌われる街の市長だよ?
執務室に備えをするのは当然だろう。
他の部屋よりも頑丈だし、落下しても生き延びる可能性を作っておくぐらいのことはするさ」
(;=゚д゚)「そりゃあ、まぁ、そうラギね……」
堅牢さならばトゥエンティー・フォーは間違いなく棺桶の中でも五指に入る。
彼が使用していた機体は落下の衝撃を殺すためのダンパーが大量に備え付けられており、ビルの崩落に巻き込まれても体が押しつぶされないように考慮されていた。
緊急時に執務室で己を守るのであれば、それだけの備えをしておかなければならない。
だが、落下の衝撃を完全に殺せない。
棺桶だけでなく、執務室の設計その物に秘密があると考えられた。
瓦礫の山と化したスリーピースを前にそのようなことを考えても、全く意味はないのだが。
爪'ー`)y‐「残念だが、タカラは連中の細胞だったよ。
軍も、そう長くはもたないだろう。
何をどう細工していたのか、その全ては分からないからね。
だが、円卓十二騎士もいる。
市民を逃がすまでの時間は、絶対に確保できる。
だから安心したまえよ」
(=゚д゚)「第一騎士が殺されたらしいが、それでも平気ラギか?」
第一騎士、“魔術師”の名で呼ばれるシラネーヨ・ステファノメーベルの死は、ジュスティアにとって大きな打撃だ。
言わば円卓十二騎士の中でも最強格の人間が殺されたのだ。
相手の実力を推し量るのに、これ以上ないぐらいの話である。 爪'ー`)y‐「あぁ、平気だ。
彼を含めて、レジェンドセブンが三人死んだとしても、だ」
(;=゚д゚)「んなっ?!」
爪'ー`)y‐「ハローも、ワカッテマスも死んだよ。
幸いだったのは、二人とも爆死したことだな。
これで死体を弄ばれる心配はない。
それに、二人のおかげでもう砲撃の心配がなくなったのも幸いだ」
第二騎士、“影法師”のハロー・コールハーン。
第十一騎士、モスカウの統率者である“ロールシャッハ”こと、ワカッテマス・ロンウルフ。
いずれもトラギコにとっては知らない仲ではない。
どちらもモスカウとは縁の深い存在であり、彼らに世話になった人間は数知れず、解決された事件はその倍以上あるはずだ。
だが今は感傷に浸っている時間はない。
爪'ー`)y‐「何より、ワカッテマスは敵戦艦を安全に沈めてくれた。
ニューソクに誘爆したら、今頃辺り一帯は消し飛んでいただろうさ。
連中の空母、という種類の船は全てがニューソクで動いている。
あれはこちらへの牽制だったらしいが、おかげでどうにかなった」
ハート・ロッカーと敵戦艦の砲撃がなくなれば、スリーピースが時間を稼いでくれる。
籠城戦が出来るならば、まだ市民を逃がすことは可能である。
爪'ー`)y‐「というわけで予定変更だ。
君はギリギリまで戦ってくれ。
何せ人員が少ないものでね」
(=゚д゚)「それはいいけどよ、市長。
俺たちは何時まで踏ん張ればいいラギか?」
爪'ー`)y‐「最低でも午後四時きっかりまでは、持ちこたえなければならない。
逆を言えば、その前にシェルターに侵入されれば終わりだ。
連中の侵入を防ぐためにも避難用の入り口は一か所だけにしている。
最悪はそこを守り切ればいいようにした」
(=゚д゚)「後3時間半とちょっと……
それまで俺たちは持ちこたえられるラギか?」
物量戦に持ち込まれている以上、スリーピースの北と南にある二か所の出入り口が突破される可能性は十分にある。
街の中に侵入されることは避けられないだろう。
それからシェルターの入り口を見つけるまでにどれだけの時間がかかるのか分からないが、余裕はないはずだ。
最後の守りが必要になることは決定事項。
つまり、ジュスティアは今日で――
爪'ー`)y‐「あぁ、絶対の自信がある。
軍だけでなく、円卓十二騎士がいる。
作戦が狂う要素がない。
だがそれは、君がいてくれればの話だ」
(=゚д゚)「……分かったラギ。
だけど、市民を全員移送できるラギか?」
エライジャクレイグの助力があるとしても、輸送できる人間には限りがある。
列車に乗ることのできる人数を考えれば、一度で送り出せるのは3000人程度だろう。
車輌の編成数にもよるが、1万人を送り出せれば御の字だ。
避難している人間の数は恐らく、10万人を下回ることは無い。 ならば、少なくとも10回は輸送作業を行う必要がある。
円滑に乗車、退避が出来るという前提で計算は出来ない。
そのため、一度の輸送でかかる時間を考えても、1時間は見積もっておかなければならない。
爪'ー`)y‐「詳細は省くが、大丈夫だ。
私の保険が遅れることは絶対にない。
何があろうとも、絶対に定刻通りに到着する。
検問所が突破されるまでの間に警官の君たちは、とにかく取りこぼしのないように街中を見てほしい」
それでも、フォックスの自信は揺るがなかった。
街を守り切るのではなく、街から逃げ出すという選択を受け入れられないのか、近くにいた警官が恐る恐る口を開く。
(,,゚,_ア゚)「街は……街はどうなるのですか?」
爪'ー`)y‐「街が人を作るんじゃない。
人が、街を作るんだ。
この場所にあるジュスティアは捨てざるを得ない。
君たちが市民と共に生き残れば、その場所がジュスティアになる。
さぁ、頼んだよ」
そして、生き残った者たちによって生き残るための最後の作戦が始まったのであった。
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同日 午後02:44
夕方から夜に切り替わる寸前の暗さの中で、ジュスティアでの戦闘は行われていた。
ピースメーカーの北部にある検問所前での戦闘は、最後の一人が倒れたことによって終わりを迎えた。
\(^o^)/「……く……そ」
最後の一人となった男の名前は、オワタ・ジョブズ。
そしてその男に拳銃で引導を渡した男の名前は、ジョルジュ・マグナーニだった。
_
( ゚∀゚)「……」
ジュスティア陸軍の大将であるオワタは指揮官でありながら最後まで戦い、そして最後に死んだ。
軍人の姿勢としては合格だが、結果としては不合格だった。
戦争は結果が全てであり、過程は最後の清算時に手向ける花束みたいなものだ。
陸軍と合流し、ティンバーランドの陸軍との戦闘に参加し、善戦したが決め手となったのは所有している棺桶の質だった。
両者ともに多大な犠牲を出したが、それだけの価値があった。
o川*゚ー゚)o「躊躇がなかったね」
拍手と共に、ジョルジュの背後から姿を現したのはキュート・ウルヴァリン。
彼女の棺桶がなければ、結果は違っていたことだろう。
_
( ゚∀゚)「同郷だろうが、今更躊躇するかよ」 彼女の棺桶で陸軍の主戦力を軒並み無力化し、最後に生き残ったオワタをジョルジュの拳銃で殺したのだ。
棺桶を防衛の要としていたのが災いし、北部の防衛を任されていた部隊はキュートの参戦をもって全滅したのであった。
呆気のない決着だが、もしも彼らが棺桶に頼らず、生身でいたならばここまでもたなかっただろう。
全てはキュートの持つ棺桶の性能と、彼女の特技がもたらした結果だ。
o川*゚ー゚)o「まぁいいさ。
……しっかし、やられたね」
確かに、陸軍を全滅させることには成功した。
だが、彼らが最後に見せた維持は、ティンバーランドにとってはあまり歓迎できるものではなかった。
その点では、完全な成功とは言えなかった。
彼らの視線の先にあるのは、街に通じる検問所の前に積み上がった車輌と棺桶、そして死体の山で作られたバリケードだ。
オワタはそのバリケードの前で両手を広げたまま仰向けに息絶え、無言で地面を見つめていた。
入り口を封じればそれだけで時間稼ぎになることを知っているからこそ、兵士たちは最後にこの形になる様に死ぬ瞬間を決めていたのだ。
戦車や車輌の隙間を埋めるように手をつないだ棺桶が並び、死体が積み重なる姿は、不気味なオブジェそのものだ。
ジュスティア人の持つ矜持こそが、世界で最も邪悪な存在なのかもしれない。
そうでなければ、このような造形のオブジェが世に生まれるはずがない。
o川*゚ー゚)o「動ける棺桶はどれぐらい残っている?」
_
( ゚∀゚)「増援がまだ到着してないから、精々30ってところだ。
生き延びた連中の数を考えれば十分すぎるぐらいだ。
円卓十二騎士が来る前に、このバリケードを退けなきゃならねぇ。
お前も手伝えよ」
彼らは早い段階で見切りをつけていたのか、検問所の奥に戦車が停められ、砲身を動かし、互いに絡み合うようになっている。
まるで、負けることが決まっていたかの様な手際の良さだった。
o川*゚ー゚)o「断るね。 この先、絶対に私の棺桶の力が必要になる。
少なくとも、ジュスティアへの侵入は私がいなければ成り立たない。
そんなことぐらい分かっているだろう?
さぁ、仕事をしなよ」
この作戦における自分の重要性を知っているだけに、キュートの発言力は絶大だ。
彼女がいなければ作戦の成功はなく、彼女がいなければこの先の作戦が進まない。
_
( ゚∀゚)「……分かったよ」
不満げな態度を微塵も隠すことなくそう言い、ジョルジュは一歩前に踏み出した。
その時である。
<_プー゚)フ『好きにさせるか』
機械の作った声が、どこからともなくジョルジュの耳に届いた。
その声は紛れもなく、円卓十二騎士の一人、ダニー・エクストプラズマンのもの。
棺桶は身に着けていないが、その体には力と怒りが満ちているのが分かる。
ここに到着するまでに時間がかかったのは、恐らくだが移動手段が途中でダメになったか、襲われたかだろう。
彼ほどの実力者が襲われて時間を失うことは考えにくいため、棺桶のバッテリーが切れたことが原因に違いなかった。
o川*゚ー゚)o「おやおやおや!!
そんな恰好でどうしたのかな」
嬉しそうにそう言ったキュートは、両手で部下に手を出さないように指示を出す。
まるで彼の存在が脅威ではないと言わんばかりの行動に、流石のジョルジュも呆れ顔を禁じ得なかった。
手負いとはいっても、円卓十二騎士内でも1、2を争う武術派だ。
女の筋力で勝てる相手ではない。 棺桶の力で円卓十二騎士に勝てても、生身で勝てる道理はない。
電子機器の無力化に特化した棺桶ならば、対人戦闘では意味をなさない。
<_プー゚)フ『お前は、俺が殺す』
o川*゚ー゚)o「やれるものなら、どうぞ。
そう言って、第一騎士は無様に死んだけ――」
<_プー゚)フ『邪ッ!!』
電光石火の加速。
エクストの姿勢は地を這うように低く、迎撃が困難な状況を作り出している。
高速で接近して繰り出したのは足払いとは言い難い、膝関節を狙った強烈な回し蹴り。
関節を狙ったその一撃は、その後に続く連撃の合図。
流れるように繰り出されたその一撃は、まるで嘘の様にキュートの足が受け止めていた。
拮抗する力で的確な位置に、的確なタイミングで放たれた一撃はエクストの動きを完全に止めた。
o川*゚-゚)o「……まぁ、流石は円卓十二騎士か。
だがこの程度では、私は殺せないぞ」
直後にキュートの放った殺意は、ジョルジュでさえ戦慄を禁じ得ない物だった。
これまでに彼女の存在と実力はあまり気にしたことがなかったが、この攻防で分かったことがある。
o川*゚-゚)o「つまらないな」
腰からいつの間にか取り出した大口径の拳銃の銃腔は、すでにエクストの眉間に向けられていた。
撃鉄は起き、銃爪には指がかかっている。
距離、タイミング、共に回避は不可能。
o川*゚-゚)o「避けてみな」
<_プー゚)フ『なっ……!?』
奇襲などせずとも彼女の実力は――
o川*゚-゚)o「犬は犬らしく、地を這えばいいんだよ」
<_プд゚。゚ ・ ゚『ごっ、あ……?!』
――円卓十二騎士以上。
o川*゚-゚)o「……何をぼさっとしている?
さっさと押し入るぞ」
淡々とそう言い放ったキュートの雰囲気に、ジョルジュは既視感を覚えた。
その正体は、すぐに分かった。
_
(;゚∀゚)「……お前、デレシアと何か関係があるのか?」
その問いに、キュートは無言でジョルジュに冷たい視線を向けただけであった。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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同日 同時刻
スリーピース南側では、北側よりも大規模な戦闘が継続していた。
上空からの侵入が不可能と判断したラスト・エアベンダーの大部隊はオセアンからの部隊と合流したが、迎え撃つのはジュスティア陸軍の中でも精鋭部隊。
陸軍、そして海兵隊の大将が判断した防衛の要となる検問所は、南側だった。
オセアンが敵の手に落ちている以上、大規模な増援が可能となる。
対して北側にあるのはシャルラ地方。
数と質を考えれば、南側と比べては危険視する程の物ではなかったのだ。
北側の部隊が全滅したことを知らないまま、南側の兵士たちは地上と上空から襲ってくる敵兵に対して一歩も引かずに応戦している。
だがこの状況は、ティンバーランドの上層部にとっては予定通りの展開だった。
南側での戦闘は突破できれば御の字、戦力を削るのが目的で、もっと言えば時間稼ぎをすることが狙いだった。
更に、もう一つの狙いがあった。
それは、円卓十二騎士を戦場に引きずり出すことである。
( `ー´)「連中の指揮官、見えるか?」
( ノAヽ)「見えないノーネ」
( `ー´)「やっぱり、こいつらは捨て駒じゃネーノ?」
( ノAヽ)「そうだと思うノーネ、兄ちゃん」
バリケードで物理的にも封鎖された検問所を守る最後の要として、スリーピースの頂上部に二人の騎士がいた。
歴代唯一の双子、ネート・グッチとノーネ・グッチである。
第九、そして第十騎士である双子は対物ライフルを使い、遠方から攻撃を行いつつ、敵の指揮官を探し続けていた。
圧倒的な物量に隠された敵の指揮官を見つけ出せれば、戦況を変えられると思ったのだが、それは徒労に終わりそうだった。
数機紛れていた名持ちの棺桶を射殺したが、攻撃の勢いは変わらなかった。
敵味方の死体の数で言えば、間違いなく敵の死体の方が多い。
5度の増援に耐え、4度の挟撃に耐え、3度の自爆攻撃にも耐えた。
それでも、敵の勢いが萎えることはなかった。
まるで馬鹿の一つ覚えの様に攻撃を続け、死体の数を増やしていく。
この勢いが続けば最初に全滅するのはこちらだが、その展開は考えにくい。
いくら敵が無尽蔵の金を持っていたとしても、人員と兵器には限りがある。
( `ー´)「だけど、守るしかないんじゃネーノ」
( ノAヽ)「そうだね、兄ちゃん」
そう言って、二人は深く息を吐き、同時に同じ言葉を口にした。 ( `ー´)
『これは語られざる者達の物語。 これは謳われぬ者達の物語。 これは、我らの物語』
( ノAヽ)
その言葉は、一対のコンセプト・シリーズの棺桶を起動するためのコードだった。
“レター・フロム・アイランド”、そして“フラッグズ・オブ・ファーザーズ”。
完全な復元には成功していないが、コンセプト・シリーズの所以たる特化した機能は復元に成功している。
フラッグズ・オブ・ファーザーズは右腕に、そしてレター・フロム・アイランドは左腕に通信用の装置が収納された円盤状の端末が取り付けられている。
背中にはその稼働を支える大型のバッテリーがあり、装置がついていないもう片方の腕は筋力補助の機能だけが生きている。
( ノAヽ)「いくノーネ!!」
直後に鳴り響いたのは、曇天とは相反する澄み切った独特のソナー音。
レター・フロム・アイランドは左腕にのみ装着され、その特化した機能は索敵だ。
場所を問わずにその効果を発揮するアクティブソナーにより、電子妨害やステルス設計に影響を受けずに敵の位置を把握することが出来る。
有効範囲は半径1キロ。
敵味方識別信号に関係なく、ソナーが反応した兵器の全てがその位置を晒すことになる。
把握した情報を共有するのが、フラッグズ・オブ・ファーザーズの役割である。
だが、共有するための機構が復元できていないため、把握した情報を利用できるのはネーノだけ。
フラッグズ・オブ・ファーザーズの右腕にある受信機は、反応のあった存在の距離と方角を振動と微弱な電流によってネーノに伝える。
( ノAヽ)「変な奴、見つけたノーネ!!
……こいつ、バリケードの中にいるノーネ!!
生身なノーネ!!」
( `ー´)「そいつが本命じゃネーノ!!」
本来であれば視覚情報となって共有されるのだが、不完全な復元が原因で性能の半分以下の力しか発揮できていない。
しかしそれでも、彼らにとっては十分だった。
不完全な棺桶を使っているからこそ、彼が得意とする単独の戦闘が可能になるのである。
( `ー´)「各位、防衛を優先しておけ!!
侵入者は俺が殺る!!」
スリーピースから飛び降りたネーノの右手には対物ライフルが握られており、その弾は機関銃のそれと同じように弾薬箱から弾帯で供給される形をとっている。
極端に切り詰められた銃身からも推測できる通り、単純に威力だけを意識した銃であり、遠距離からの狙撃性能は全く考えていないことが良く分かる。
更には、銃身下部に取り付けられた銃剣が近接戦闘を想定した物であることからも、離れた場所で戦いを挑む気がないのだと分かる。
地面に激突する前にパラシュートを開き、落下速度を落とす。
着地と同時に検問所へと走り出し、ノーネが見つけた異常な存在へと接近する。
どのような手段を使ったかは分からないが、こちらの防御をいともたやすく掻い潜り、侵入を試みた胆力は賞賛に値する。
たった一人を侵入させる為にこれだけの攻撃を仕掛けてきた可能性も視野に入れ、ネーノは気を引き締め、バリケードの前に立つ。
積み上げた車輌を、まるで玉座か何かの様に使って座る女が、そこにいた。
从'ー'从「はぁい」
若い女だった。
防弾ベストを着ているが、その服装は極めて軽装。
銃を持つ代わりに背負ったコンテナが、その目的を如実に物語る。
女が浮かべた笑みに、ネーノの全身が総毛立った。
( `ー´)「……糞ッ!!」
刹那に感じ取った相手の殺意、そして危険性は、森の中で猛毒を持つ蛇を見つけた時のそれに酷似していた。
放つ雰囲気が、女の積み重ねてきた死体の数の多さを物語っている。
腰だめに構えたライフルをフルオートで放ったのは、彼なりの慈悲でもあった。
痛みを感じる間もなく絶命し得る暴力の驟雨は、だがしかし、女の肉を穿つことはなかった。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています