日本は世界で唯一、「田舎が都会を搾取する国」であることはあまり知られていない。首都圏に住む多くの人たちはバブル崩壊以降生活が苦しく、一部の富裕層を除いては豊かさの実感がない。政府は増税を繰り返すのに、その税金が自分たちの身の回りに還元されていないのはなぜかというと、田舎に原因がある。

「たとえばアメリカではニューヨーカーの納めた税金はニューヨークの発展のために使われ、テキサスあたりの田舎州に流れることはありません。しかし日本には「地方交付税」という制度があり、事実上都会人の血税が田舎に垂れ流されているのです」(政治通)
地方交付税は全国の自治体にインフラ整備予算などとして配分されるが、東京では1円も交付されておらず、横浜などの大都市はわずかにしか受け取っていない。実質的には人口や経済活動が盛んな都会の人達が納めた税金が、その人の人生と全く関係のない田舎に垂れ流されているだけである。
「東京の区役所や首都圏の市役所は人口規模の割に手狭でオンボロなものが多いですが、田舎県ほど庁舎が無駄に最新の高層ビルだったりします。国道1号線は横浜市内には江戸時代の東海道の道幅のまま対面通行で歩道すらない区間もあるのに静岡県の新天竜川橋は片側4車線で歩行者がだれもいないのに巨大歩道付きです。海外だったらあり得ない話です」(ハコモノ研究家)
実際、アメリカであればニューヨークの一等地などは車線の多い大通りがある一方、田舎に行けばボロボロアスファルトの1本道は当たり前だ。隣の韓国でもソウル市内は100m道路だらけで、ソウルから釜山などを結ぶ主要な高速道路は整備されているが、人口が少なく必要性のない田舎には高速道路はほぼない。大きい街中や大きい街同士を結ぶ経路ほど道が広くなるのは当たり前のことだ。
「ところが日本では、田中角栄元首相の時代から道路族が当たり前で、過疎地の田舎に行くほど人口比ではありえないバイパス道路、高速道路だらけで今も建設中。なのでクルマ社会になり、ローカル線が廃線になり駅前市街はシャッター通りになった。日本の地方の衰退は「都会からの搾取」ではなく自業自得なのです」(道路マニア)

実際、日本ほど田舎の人が豊かな国はないだろう。国土交通省の統計によれば「都道府県別の経済的豊かさ」首位は富山県で、福井が次いでおり東京ではないのだ。東京にはホームレスは山ほど見かけるが、地方都市ではどこにもいない。山谷や寿町のような労働者の街もない。理由は明らかだ。東京の中にいる下層階層の人たちの格差対策に使うべき税金が、東京と無縁の田舎に恒常的に垂れ流され、その安定の利権にあぐらをかいてメシを食う者たちが贅沢三昧をしているのだ。
「たとえば田舎では、偏差値30台の高卒ヤンキーが、土建屋に就職すれば公共事業で食えてしまい、20代前半のうちに4LDKの立派な持ち家を手に入れ、3人の子どもを連れてレクサスを乗り回したりしています。しかし東京では努力して勉強してマーチの大学を出た若者が、スーツを着たサラリーマンになっても30歳でもアパート暮らしで奨学金を返し続けています。結婚・出産する経済的ゆとりがないからです。自頭があり努力する都会の人が不当に貧困状態にさらされ、実力なしに遊んで生きているマイルドヤンキーが跋扈する。長い目で見れば、年齢が若いほど民度が低下していくことは確実です」(田舎ウォッチャー)

なぜこんな腐った構造になっているのか。原因は政治にある。日本では長年自民党の世襲政治家たちが先祖代々田舎に利益を誘導していた。田舎の人たちは頭が驚くほど旧時代で止まっているので、江戸時代の民百姓がお殿様一族に屈服する感覚で政治家を礼賛し、彼らが実際に利益誘導という「再分配」を与えることで蜜月構造を築いてた。政権交代で変えることもできたはずだが・・・、
「ところが民主党も、「民主党王国」と呼ばれる地盤は全部田舎ばかりで族議員だらけでした。政権交代の決め手が田舎を熟知した小沢一郎が「農家の戸別補償制度」をぶち上げて農村票をごっそり自民党から奪ったことにあることからも分かるように、結局は田舎支配の政治構造は変わらず、東京に住む大勢の国民が求めるような政治変革は何もなかった。右左の問題ではなかったのです」(政党ウォッチャー)

仮に政治を切り替えようにも、与野党いずれも田舎の代弁者しかいない「田舎翼賛政治」ではどうしようもない。選挙制度を作っているのも彼らなので、都会ほど有権者が不利になる一票の格差がまかり通る。諸外国なら都心に群衆が押し寄せて革命が起こってもおかしくない状態だが、東京人たちはまさか自分たちを搾取する真の支配者が田舎者たちだなんて夢にも思っていないのだ。