故郷の村ではスターリンによる集団農場(コルフォーズ)が強制され、農民はつぎつぎと土地や家畜を奪われ、自作にこだわる農民には高率の税をかけて挫(くじ)けさせようとした。
協力しない農民は「人民の敵」と呼ばれ、土地を没収されたりシベリア送りにされた。
全ソ連の台所の3分の1以上をウクライナで賄おうとして強引な食糧調達が開始され、共産党の一団は農家を一軒一軒まわり、床を剥がして穀物を探しまわった。
飢えていない者は食糧を隠しているとみなされ、検挙されていった。

 こうして1932年から33年にかけて、ウクライナでは人為的につくりだされた大飢饉によって350万人が餓死し、出生率も激減し、人口減少は500万人に達したという。
これをジェノサイドと言わずしてなんと言おうか。

 シェフチェンコ家の人びとも例外ではない。
アンドレイの祖父は「共産党は来年の種子までとりあげていった」と息子たちに語っている。
飢饉では母方の祖父の姉ふたりが餓死している。

 こうしたことを聞いてまわった経験からすると、ウクライナは決してプーチンやロシアに屈服しないだろう。
なぜなら彼らの大半が決死の覚悟をもって臨んでいるに違いないからだ。