「お母さんとあなたの関係は狂気だと思う」
裁判長は、被告に向けてこんな言葉を発した。
2023年5月、東京地裁で開かれた傷害致死事件の裁判。37歳の被告が問われたのは、55歳の母親に対し殴る蹴るなどの暴行を加え、その後死亡させた罪だ。
病気の母親と無職の息子が、生活保護費を頼りに暮らす日々。
裁判長が“狂気”と表現した親子に何があったのか。法廷で取材を進めると、被告が小学生の頃から家事全般を担う、いわゆる”ヤングケアラー”だったことが明らかになった。
加えて事件の背景には、母親との間にたばこの本数から水を飲む量まで決め事がある、特殊な関係もあった。