首都圏を代表するJR近郊通勤路線である東海道線。その停車駅には疑問符も多い。特に今すぐ廃止すべき駅が大船駅だという。専門家に聞いた。

――大船駅停車はなぜ不要なのでしょう。
東海道線の別名は「湘南電車」だ。現在のおもな輸送を担っているのは湘南地域に住むベッドタウン住民の横浜・東京都心への通勤輸送だが、湘南在住者にとって大船は、横浜駅や東京駅のような降りる用事が一切ない駅だ。大船駅がある鎌倉市は三浦半島地域に該当し、湘南とは別の地域なので地域内移動の需要もほぼない。それなのに、朝のラッシュ時は大船で大量の乗客が乗り込んでくるし、下り列車では大船下車民のせいで窮屈な思いを強いられ続ける。存在が害悪だ。

――では大船駅で降りる人はどうすればいいのですか。
東京から大船までは横須賀線が並行している。単に東京・横浜と大船を結ぶだけなら横須賀線に乗ればいいが、本数は少なく朝晩のラッシュも東海道線ほどひどくはない。理由は東海道の方が線形が良く少し所要時間が早いからだ。こうしたずるい心理から、三浦半島の人たちが乗るための路線はすでに別にあるのに、湘南の人のための電車に勝手に乗り込んでいる。湘南民からすれば「インフラただ乗り」であるし、JRからすれば経営効率が悪い。東海道線の混雑を緩和させ、空いている横須賀線の利用を促進する分散を進めた方が、お客にも経営者にも都合がいいのだ。

――大船駅に東海道線が止まらないことで不便はあるのですか。
ほぼないだろう。仮に湘南の人が鎌倉旅行をしたいとか、横須賀に行楽に行きたいなら、戸塚駅で乗り換えればいい。彼らが普段お台場に行くとき品川駅からりんかい線で大井町駅まで引き返すのと同じことだ。たまの行楽なのでそのくらい許容できる。横須賀線以外では、江の島に行く湘南モノレールと根岸線が接続しているが、江の島なら藤沢から乗り換えるし、根岸線は横浜まで海回りで行く以外に意味がなく、だったら東海道線に乗り続けた方がはるかに早く着く。大船駅が存在する意味は、湘南には何もない。

――大船駅はそんなに疎まれる存在なのですか。
東海道線の「大船問題」は根深い。たとえば特急踊り子は大船には停車するが、藤沢・茅ケ崎・平塚はぜんぶ通過する。大船がある鎌倉市は人口17万人で、40万都市の藤沢や20万都市の茅ケ崎・平塚より明らかに沿線民が少ないのに、これはおかしい。湘南もベッドタウンで首都圏なのに、電車特定区間による割安運賃適用は大船までだというのもずるい。最新式の電光掲示板や接近放送の導入など、新しい取り組みがあると大船駅でただちに実装されるが、藤沢以西は後回しだったり最後までやらない。軽んじるべき駅と重きを置くべき駅が逆転している。

――普通列車の駅を減らすことは暴挙と言えそうです。
そんなことはない。いまでは並行路線の停車駅となっている大森駅や保土ヶ谷駅などは、元は東海道線の駅として開業したが、よそでことたりるので全列車廃止に切り替わっている。時代に合わせて駅設置状況を見直すということは鉄道事業者の責務だ。東海道線は湘南の地域輸送路線であり、湘南と横浜・東京を結ぶ湘南電車なのだから、湘南ではない大船駅は今すぐ廃止した方がいいのだ。