「ガイジ」は本来死語でした。とはいえ、一般的な死語と違い流行ではなく成長によって捨てられる単語です。かろうじて中学生までで、大人になってまで言うのはごく少数でした。筆者の記憶でも最後に聞いたのは中学2年の時でした。ある女子生徒が息を吐くように言い出し、先生に叱られるより早く隣の生徒が「お前最悪やな!」と言っていたのを憶えています。人によっては、聞こえた瞬間学級会になったケースもあるようです。

雲行きが変わったのが2011年、Twitter内での「ガイジかな、あれ」から始まる書き込みでした。単なる1ツイートなら流されて終わりでしたが、折悪しくも2ちゃんねる(現5ちゃんねる)の「なんでも実況ジュピター板(通称なんJ)」に見つかってしまいます。

蔑称の創出とプロデュースに余念のない「なんJ民」(最近では「電子障害者手帳」まで言い出しました)のことです。「ガイジ」は瞬く間に大ブレイクしました。スレッドタイトル(スレタイ)検索でも、例のツイートを境目に「ガイジ」でのヒットが千倍以上も膨れ上がったそうです。それでもなお、2ちゃんでひっそり流行っているレベルに過ぎず、大多数の人は知らずに過ごしていました。

爆発的な広がりの決定打となったのは、2014年のマイナーYoutuber発掘ブームです。詳細は割愛しますが、この中で発掘されたある一人のYoutuberが、ズレたセンスと過剰な自信などから茶化す分には面白い動画としてブレイクしました。彼を罵倒する言葉に「ガイジ」が出るや否や、使いやすく強烈な侮蔑語として2ちゃんの外でも認知されるのでした。

現在のネットではいい大人も気軽に言うようになり、全国区で世代を問わずカジュアルに使われています。死語だったのが、高い汎用性を持った共通語として蘇りました。とはいえ完全に市民権を得たわけではなく、「使うやつは人間性を疑う」という声も根強いです。もとが強烈な侮蔑語なので当然ですね。
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