おふたりの交流について伺いたいのですが、まず互いの作品を読んだ際の第一印象はいかがでしたか?

椎名高志 僕は中学生のときに連載が始まったばかりの「うる星やつら」を読んで、「すごいものが始まっちゃったな」と驚きました。SFコメディというジャンルが大好物だというのももちろんありましたが、それ以上にキャラクターの生々しさみたいなものに衝撃を受けたんです。そこで「マンガって絵空事ではなく、これだけ存在感のあるキャラクターが描けるならなんでもできるんじゃないか」と思ったのがきっかけでマンガの世界に入ろうと決めたくらいで。高橋先生の作品にはそれくらいのインパクトがありました。

高橋留美子「うる星やつら 新装版」1巻
高橋留美子「うる星やつら 新装版」1巻

──衝撃を受けたことについて、もう少し具体的に教えていただいていいですか。

椎名 例えばそれまで僕が読んでいたマンガのキャラクターは「俺はこう思ってるんだ」と言ったら、割とそのままの意味なのが普通でした。でも「うる星やつら」や「めぞん一刻」のキャラクターがしゃべっていることは自分に対する嘘だったりするんです。そういう裏表のあるところや、欲望をわかりやすく表現はしないけど実はそれに沿って動いてるとか。そういう深みがキャラクターにありながら、でも話自体はスラップスティックで非常に楽しい。これを両立していることに僕は本当に驚いたんですよ。

高橋留美子 描いている私にはそういう意識はなかったけど……(笑)。自分が楽しく描いて、読者も笑ってくれればいいかなと思っていたくらいだし。でも椎名先生がおっしゃっていたような、従来のマンガと違っていた部分があるなら、私がそれまで読んでいた小説などからインスパイアされて溜まりに溜まっていたものが、うまくハマったのかもしれません。私もデビューしたてだから、そういうものをどんどん出していこうとしていたし。

椎名 そうなんですね。

高橋 私が椎名先生の作品で初めて読んだのは「(有)椎名百貨店」でした。サンデー増刊号でしれっと4コマが始まっていたので読んだらすごく上手で、「今まで何をしていた人なんだろう? ベテランではなさそうだけど」と思ったのを覚えています。そして「GS美神 極楽大作戦!!」の連載が始まったら、とにかく勢いがいいし、それでいてキャラクターにすごく気を配っているのがわかって。その後の作品もそうだけど、椎名先生の作品はそのハーモニーが美しいですよね。