0001以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
2022/05/25(水) 07:20:53.386ID:4E1RW2sr0（中略）
侍女「私のような者にもお声をかけてくださるなんて光栄でございます」
藤原道長「うむ。ところでお前は好きな男はいるのか？」
侍女「いいえ。私は父も兄達も同じ職場ですし……」
藤原道長「やはり恋人がいないと悲しいものか？」
侍女「いいえ、道長様に仕えてる方が恋愛よりもよっぽど幸せでございます」
侍女の言葉を聞いた途端に顔を赤らめる藤原道長。
そして侍女に手を伸ばしたその時……
侍女はスッとその手を避けた。そして侍女の顔が青ざめている事に気付く。
侍女「……あぁ、道長様、すみません。私ったら出過ぎたことを…」
藤原道長「良い、それにそちは不器用だ。言いたいことも言えずうじうじしていたら埒が明かないぞよ」
侍女「……あの、もし私が結婚してもいいでしょうか？」
藤原道長「勿論じゃ。お前にはもっと幸せな道を歩んで欲しいからのぅ。まぁお前より不器用な娘がいるのだがな」
すると道長は立ち上がり、侍女に手を差し伸べて「俺には付き合いたいと思うほど心に決めた女がいる。その名は倫子…」
侍女は悲しそうな顔をして言った。
「やはり私じゃ物足りないですか…いや、すみません。私ごときと道長様は釣り合わないです」
そう言うと彼女は去っていった。
しかし彼女の表情は明るくなったように見えたのだ。
数日後。彼女が部屋を訪れるといつものように座布団の上に座った。
そして彼女はいきなり頭を下げてきた。
侍女「本当に申し訳ありませんでした！あの時は取り乱して言葉を慎むどころか言葉を選ぶことすら忘れて…」藤原道長はそれを遮るように言った。
「お前の歳はいくつだ？」
「16歳でございます…」
「ふはは、16歳の子供が22歳の吾に物怖じもせずものを言ったのだ。それをなぜ咎めると思う？」
「…道長様はやはり偉大でございます」
「吾は倫子に恋をした。しかし倫子のお父様の雅信様は吾よりも身分が高い。吾は藤原家とはいえ末っ子に過ぎず身分は低い」
侍女「と言いますと？」
「つまり倫子を口説くには雅信を超える。いや、せめて左大臣くらいにはならなければならぬ」
しかし張り裂けそうな胸を抑えきれず藤原道長は倫子に手紙を送った。
雅信達は…。
雅信「倫子、分かったか？とにかく道長などとの交際は認めない」
穆子「道長とやらの身分は確かにあなたに比べたら低い、でもあなただって親の七光りで得た身分でしかなく生まれて直ぐに左大臣に任命されただけ。むしろ出世も何もせずその地位に居座って満足してるじゃない！」
雅信「穆子、俺はお前と話してなどおらぬ。倫子に現実を教えてるんだ」
倫子「つまり私は身分のために自由な交際すら出来ないのですか？」
雅信「そりゃそうじゃ、面子に関わる問題だからな」
穆子「ではこの子に釣り合う人は誰なの？」
雅信「帝である。申し分ないどころかこの国の頂点に交際を申し込むのじゃ」
倫子「……その方の名前は藤原道長さんですか？」
穆子「そんなことあるわけないわ、だって彼は藤原氏の中でも末席の人間なんだから」
倫子「でも私は彼に会いたいです……」
雅信「それは許さない、たとえ相手がどんな感情を持っておろうと身分というのは恋愛を重視する上で必要だ」
穆子「帝はまだ8歳よ？帝が交際可能になる頃には倫子も30歳になってしまって恋愛どころじゃない」
雅信「分かっておる！物の例えくらい理解しろ！」
穆子「それならあなたは恋愛がどういうものなのか知ってるの！？ただ単に身分が違うとかそういう理由で恋愛しないんじゃない！相手との身分の差を乗り越えようと努力してそれでも叶わないから諦めるんじゃないか！」
雅信は黙ったままだ。そして沈黙を破ったのが倫子だった。
倫子「確かに御国で1番の家柄として君臨する帝と交際できたら光栄ですけど、そんなの現実的じゃない」
雅信「女の発想は全て野望だけだ。男はみんな希望を語る！」
倫子「野望を語ってるのはお父様です…私が一体どのような野望を語ったのですか」
雅信「……道長と結ばれても結ばれることはない、お前が結婚しても幸せになれないと説得しているのだ」
倫子は雅信に抱きついた。そして彼女は涙ながらに訴えかけた。
倫子「私にとってお父様より素敵な方はおりません。私のためにここまで真剣に考えてくださって…だけど、お父様とはいえこれ以上私のことに踏み込むのはやめてください…」倫子が去ったあと、雅信が呟いた。
雅信「全く……」
