JT女性社員逆恨み殺人事件は、1997年(平成9年)4月18日夜に東京都江東区大島六丁目の団地で発生した殺人事件。1989年(平成元年)12月に強姦致傷事件などを起こし、懲役7年の刑に処された男M(本事件当時54歳)が、同事件の被害者である女性A[本事件当時44歳:日本たばこ産業 (JT) の社員]が被害を警察に届け出たことを逆恨みし、出所後にAを刺殺した事件である。

本事件で殺害された被害者は1人だが、刑事裁判では殺人の高度な計画性、犯行動機の悪質性、Mに殺人前科があることなどが重視され、Mは2004年(平成16年)に最高裁で死刑が確定、2008年(平成20年)に死刑を執行されている。

エレベーターに乗ったまま、被害者Aが乗り込んでくるのを待った。そして、エレベーターに乗ったAに「何階ですか」と声を掛け、「4階をお願いします」という返答に応じて4階のボタンを押した。エレベーターが上昇を始めると、加害者Mは「Aさんですか」と尋ね、彼女がA本人であることを確認した後、「俺のことを覚えているかい」と話し掛けた。Aは思い出しかねる様子で、首を傾げながらMの顔を見ていたが、Mは隠し持っていた包丁の柄を右手で掴み、鞘からゆっくり引き抜きつつ、「7年前の事件のことは覚えているか」と低い声で脅した。これに対し、Aは悲鳴を上げながら、突然Mに飛び掛かり、Mの右手から包丁を奪い取った。エレベーターが4階に到着してドアが開くと、AはMから奪い取った包丁を手にしたままエレベーターから降り、「助けて、殺される」などと大声で叫びながら、4階エレベーターホール北側の壁際まで後ずさりしていった。このようなAの思わぬ抵抗に動揺したMだったが、「Aを殺害する機会は今しかない。少しくらい怪我をしてでも殺害しよう」と考え、自分を近づけまいと小刻みに包丁を突き出すなどしていたAに飛びつき、エレベーターホール北側の壁に抑える蹴ると、その左手から包丁を奪い返した。そして、包丁でAの左下腹部・腹部中央部・右胸・左胸を続けざまに力いっぱい突き刺し、心臓に達する致命傷を負わせた。