\(^o^)/Ammo→Re!!のようです
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信念の為に死ぬことが出来る、などという言葉は嘘だ。
我々は信念の為に死ぬのではない。
未来の為に死ねるのだ。
我々の死が未来に繋がりさえすればいい。
その未来こそが、我々の憧れた明日なのだ。
故にこそ。
嗚呼。
今日は、死ぬにはいい日だ。
――エドガー・ランボー著 『最初で最後の血』 最終章より抜粋
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September 25th AM09:28
何もかもが時間の問題だった。
ハート・ロッカーの上半身は既に朝日を拝んでおり、残すは脚部のみとなっていた。
イーディン・S・ジョーンズはエスプレッソを飲んでから溜息を吐き、再度腕時計を見た。
予定に変更はないまま、ここまで来てしまった。
せっかくの侵入者も、彼らの地上進出を防ぐことは叶わなかった。
何かを起こしてくれることを期待していただけに、極めて残念だった。
(’e’)「残念だなぁ」
その声は部下たちにも聞こえているはずだったが、誰も反応しようとはしない。
彼の言葉に反応すれば、たちまち講義が始まってしまう。
彼との会話は、一般人にはあまりにも退屈な物であり、一方的な物になってしまう。
大学での講義に似た部分があるのかもしれないが、それが彼という人間なのだ。
彼に歯向かう人間はあまり多くない。
誰もが彼との会話を忌避し、当たり障りのない言葉だけを返してくる。
彼が欲しいのは対話なのだ。
なんなら、苦手だが行動でもいい。
彼の意見に対して異を唱える存在が欲しかった。
(’e’)「ねぇ、侵入者がどうなったか分かる?」
カメラに映る青空とクラフト山脈は、いつもと変わらない色をしている。
これから世界が変わるというのに。
これまでの世界が終わるというのに。
世界は、人間の思惑などまるで気にせずに回り続ける。
「電波障害は依然として継続しており、報告はありません」
(’e’)「そっか」
唯一、彼の思惑を裏切ってくれるのは人間だけだ。
人間の意思というものだけが、いつの日もジョーンズに驚きをもたらしてくれる。
しかしどうやらそれもあまり長く続かないようだ。
ティンバーランドの夢が形となれば、彼らに反抗する人間はいなくなる。
仮にいたとしても、“国”に歯向かう人間の力も数もたかが知れている。
そこに驚きがあるとしたら、そのような無謀なことを考える愚か者がまだ生きていたということだけだろう。
目標の達成はいつでも空しいものだ。
夢の達成の為に努力する日々は失われ、一歩を踏みしめる喜びも彼方に消えてしまう。 「脚部、地上に到着します」
(’e’)「最後まで油断しないでよ。
接地完了後、念のために試射するから」
「了解しました。
目標はジュスティアですか、それともイルトリアですか?」
(’e’)「いいや、ここだ。
ストラットバームを砲撃する。
こんなデカイ穴が開いたままにしておけば、何が起きてもおかしくないだろう?
それこそ、ここにはニューソクがあるんだ。
悪用されたら大変だ」
ニューソクの威力はティンカーベルで見ることが出来た。
実際に目撃したあの威力は、島一つを吹き飛ばすのには十分すぎるものだったが、指向性を持たせれば安全に観測が出来るはずだ。
ストラットバームは極めて分厚い壁に覆われた太古のシェルターだ。
その頑丈さは第三次世界大戦中でさえ、中の設備を損傷することなく守り抜いたほどだ。
詰まるところ、ストラットバームはそれ自体が頑丈な箱であり、指向性を持たせた爆発ならばハート・ロッカーは被害を受けない計算になる。
勿論、爆発させないことにこしたことは無いが、今一度あの爆発を目にしたいという欲もあった。
「で、ですが同志がまだ大勢います。
せめて通信が回復してからの方が」
(’e’)「じゃあ通信が回復するまでは好き放題、ってことかい?
あのねぇ、それじゃあダメなんだよ。
リスクは最速で管理すればするだけメリットになる。
ナパームを撃ち込めば火葬の手間も省けて一石二鳥だ」
「防壁はレッド・オクトーバーが到着すれば閉鎖できます。
どうか、ここへの攻撃は……」
(’e’)「ふぅん…… レッド・オクトーバーが無事なら、ね」
恐らく、レッド・オクトーバーは無事ではないだろう。
侵入者がどこの所属なのか、考えるまでもない。
それが可能なのはイルトリアかジュスティアだけだ。
しかもその中でも選りすぐりの人間が派遣されたはずだ。
ならば地下の更に地下にある埠頭の存在にも気づいているはずであり、対策をしていないなど、考えられないのだ。
故にこそ、この基地は放棄しなければならないのだ。
船着き場を見つけられたということは、地下道も見つけられたということ。
つまり、侵入者にとっては逃走経路と同時にこちらの地上部隊の背中を狙う道が両方手に入るということになる。
ヴェガとニョルロックに通じる二つの道の存在が明るみに出れば、いずれにしてもストラットバームは壊滅することになる。
先んじてこちらが手を打っておけばリスクは最小で済むが、味方を思う優しい心が彼の想像とは違う結末をもたらしてくれるかもしれない。
(’e’)「分かったよ。 ただし、何かあった時にはガス弾を撃ち込んででも殲滅するように。
試射は見送ろう」
「了解いたしました」
(’e’)「それと、万が一がある。
ハート・ロッカー内の警備を強化しておいてくれ。
ほら、よくあるだろう?
油断していたらすでに敵に取りつかれている、なんてさ」 それは彼にとって、残された数少ない希望の内の一つだった。
期待と予想を裏切る存在が現れるとしたら、今しかない。
だから。
(’e’)「万が一にも、奴らに希望を与えるなよ」
その言葉の直後、ハート・ロッカー全体が大きく揺れる。
ハート・ロッカーの巨体が立ち上る積乱雲のように、完全にその姿を地上に見せたのであった。
それはハート・ロッカーがこの世に生み出されてから初めてのことであり、ジョーンズの能力が開発当時の人間達を凌駕したことを証明していた。
(’e’)「各部動作確認を行い、その後砲塔を展開。
電波障害のない場所まで移動後、観測手からの情報を得て砲撃を開始する。
照準はジュスティアに向けようか」
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 同日 AM09:40
戦艦“ロストアーク”内は興奮で満ちていた。
彼らの乗るロストアークの艦長である、スパム・シーチキンを称える声が艦内に木霊する。
ロストアークの主砲を操作する方法は二つある。
一つは、コンソールを用いては発射する方法。
そしてもう一つは、ほとんどの“強化外骨格”にも使用されている人と機械とをつなぐ装置を使い、より直感的に武器と船の操作を行う手段である。
この戦艦を始動する為に艦長が起動コードを入力する必要があるのはそのためだ。
ロストアークを囲む形で配置された13隻の原子力空母“オーシャンズ13”もまた、起動コードが必要であると同時に人間の思考による直感的な操作を全艦同時に行える仕様だった。
13隻の巨大な空母が得る視覚的情報は膨大であり、その全てがロストアークへと集約され、精密な砲撃を行うことが出来たのだ。
ヽiリ,,゚ヮ゚ノi「……ふん、他愛ないな」
しかし、彼女は満足感を覚えていなかった。
街を砲撃するよりも先に旗艦を狙ったのは、彼女の私怨だった。
彼女は小さな港町で漁師の親を持つ、平凡な子供だった。
小さく、古く、そして丁寧に使い込まれた漁船に父親と共に乗り、沖で漁をするのが日課だった。
彼女の18歳の誕生日の時、事件は起きた。
両親が漁から帰ってこなかったのだ。
数か月前から漁に行く頻度が増え、時間が遅くまでかかるようになったのが彼女の学費とプレゼントを稼ぐためというのは分かっていた。
だが、どれだけ遅くても両親は家に帰り、彼女の寝顔を見ては愛を囁いた。
後日、両親の乗っていた漁船の残骸が漁師仲間によって発見され、何が起きたのかを説明された。
ジュスティア海軍の軍事演習に巻き込まれ、殺されたのだ。
その日から彼女はジュスティア海軍に対して復讐の機会を伺いつつ、力を溜めることにした。
ある町では海賊として奇襲戦法を学び、また別の街では海兵として戦術と技術を身につけた。
そして、ティンバーランドからの誘いが彼女の人生に大きな意味をもたらすことになった。
復讐の対象が現海軍大将のゲイツ・ブームであることが分かってからは、彼女は来る日も来る日も実戦と訓練に明け暮れた。
世界最大の戦艦にして、強化外骨格と同様の技術を使用した最新鋭の戦艦である、“ロストアーク”の艦長を任され、計画実行日を言い渡された時、彼女は泣いて喜んだ。
だが蓋を開けてみれば、結果は呆気のないものだった。
最初の砲撃が失敗してから、彼女は戦艦を護衛する“オーシャンズ13”と飛行部隊による情報収集を行った。
必要だったのは相手の位置と、目の精度だった。
それを把握するために大勢の命を使うことになったが、その結果、スパム率いる艦隊に死角はなくなった。
情報を統合し、戦況を詳細まで理解できた今、彼女たちが恐れるものはない。
第一陣は捨て駒。
大勢が海に散り、そして、種を蒔いた。
機は熟した。
収穫の時は、今。
ヽiリ,,゚ヮ゚ノi「予定変更だ。 連中の技量が知れた今、オセアンに寄る必要はない。
ここで転じるぞ!!」
その言葉が引き金となり、海が爆ぜた。
撃墜された第一陣のラスト・エアベンダーには大量の高性能爆薬が取り付けられており、任意のタイミングで爆破させることが出来る。
使用者である彼らは、最初から死ぬことを覚悟していた。
重要なのは、その死体が爆破対象の近くに存在することだった。
海面に浮いていた残骸が爆ぜ、その近くにいたジュスティア海軍の軍艦に打撃を与える。
種は蒔かれ、芽吹きの時を待ち続けている様に。
取りつかれていた船は直接爆破され、合えなく轟沈することになった。
最も不運だったのは、補給中に近くで爆破の直撃を受けた船だった。 補給中の弾薬が誘爆し、巨大な爆発を起こしたのだ。
次々と爆発が起こり、軍艦の動きに明らかな動揺が見られる。
旗艦を吹き飛ばしたことで指揮権がグルジア・“ストーム”・セプテンバーに移行することも想定通り。
今日までの日々は、この時のための準備に費やしてきたのだ。
今や彼女率いる部隊は、ジュスティア軍を凌駕するのに必要なあらゆる準備を済ませた状態にある。
今のところ想定外だったのはスリーピースの防衛機能と、海軍の力が想定以下だったことだけ。
体勢を整える前に一気に攻め入れば、ジュスティアは落ちる。
市街戦に発展するかはまだ分からないが、砲撃だけで終わる可能性は十二分にある。
ヽiリ,,゚ヮ゚ノi「“ダニー”、損耗報告を」
『予定よりも被害は少なく済みました。
“ラスティ”が被弾しましたが、問題ありません』
ヽiリ,,゚ヮ゚ノi「よし。 では、“ワイヤード――有線式――”を出撃させつつ、ジュスティアに向かうぞ。
なぁに、ノックもアポも必要ない」
『了解。 ワイヤード部隊出撃』
そして、オーシャンズ13の甲板に待機していたラスト・エアベンダー達が一斉に飛び立つ。
しかしその姿には、これまでのラスト・エアベンダーとは大きく異なる点があった。
背中のジェットパック兼バッテリーに細長い線が繋がっている点である。
その線は甲板に繋がっており、その先にあるのは発電装置“ニューソク”だ。
バッテリー容量の限界で10分しか飛べないラスト・エアベンダーだが、こうして電源を確保してしまえば、非常に優秀な攻撃手段に転じる。
特に空母の様に巨大で足元への攻撃に対処できない艦に関しては、理想的な防御手段ともなる。
一本の巨大な植物から無数の蔦が伸びるようにして、ケーブルのつながったラスト・エアベンダー達が飛翔する。
その手に持つのは徹甲焼夷弾が装填されたM134ミニガンだ。
強力な銃弾の驟雨が接近していたジュスティア海軍の船に降り注ぎ、次々と爆発炎上させる。
既に敵の動きについてはパターンが確認されており、事前情報殿すり合わせも終わっている。
こちらの方が圧倒的に有利だ。
ヽiリ,,゚ヮ゚ノi「進路をジュスティアに変更。
各艦、各位、前戯は終わりだ。
本 番 用 の 砲 弾 を 装 填 し ろ」
ロストアーク、オーシャンズ13が一斉に進行方向を変える。
艦首がジュスティアを向く間も、ジュスティア海軍は一切の手出しが出来ないでいた。
事前に得ていた内部情報によれば、ロストアークの主砲はスリーピースの壁を破壊できるほどに強力である。
しかし、ワカッテマス・ロンウルフからの情報が確かであれば、相手はこちらの砲弾に対して正確に砲弾を当ててくるそうだ。
迎撃装置がどこまでの精度で、どこまで動けるのかを想像し、スパムは獲物を前にした肉食獣の様な笑みを浮かべた。
用意している本番用の砲弾はあらゆる壁を貫通することに特化させた物。
砲弾が当たったところで、その砲弾の威力を減退させるのは困難だ。
減退した砲弾でもスリーピースの壁を貫通させられるか、実際に試してみなければ分からない。
再び、主砲が火を噴いた―― ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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同日 同時刻
――スリーピースの防壁は長い時間をかけて建造され、改築された物だ。
その内部は勿論だが、外部に至るまで常に点検が行われ、一切の不備もない状態が維持されていた。
いつイルトリアが攻めてきても平気なよう、極めて分厚く特殊な合金を使っていた。
爆発反応装甲は勿論だが、衝撃に反応する特殊素材を使用するなどの更新を密かに行っていた。
その情報はイルトリアの諜報網にさえ網羅されなかった秘中の秘。
つまりは、ジュスティアの守りの要だった。
しかし。
だが、しかし。
その壁が、三枚同時に撃ち抜かれ、街の建物に被弾することは当然だが歴史上初のことだったのは勿論だが、市長の想定を遥かに超えた事態だった。
報告よりも先に目視と衝撃によって事態を把握し、フォックス・ジャラン・スリウァヤは口に咥えていた棒付き飴を噛み砕いた。
爪;'ー`)y‐「馬鹿な!! 防御装置が効かないだと?!」
彼にとって、防御装置とスリーピースは心の壁でもあった。
絶対の自信の表れであり、それを保証するものだった。
その壁とジュスティアの歴史に今、大きな穴が開いた。
爪;'ー`)y‐「糞ッ、質量弾か……!!」
スリーピースの壁に埋め込まれた防御装置は同時に200以上の標的を捉え、迎撃することが出来る優れた装置だが、弱点が1つだけある。
それは、レーザーによる迎撃装置であるため、対象となる物が爆発しない場合はその効力を発揮できないのだ。
単純な硬度、速度、重量による質量兵器が相手に対しての迎撃装置は備えがない。
その為の壁が、スリーピースなのだ。
絶対的な硬度と特殊な設計があれば、予想していた質量兵器――戦艦の主砲レベルの物――でさえ防げるはずだった。
予想以上の威力を持つ弾が放たれ、スリーピースに大きな穴が開いた。
つまりそれは、防御装置のいくつかが失われただけでなく、相手の攻撃が通用してしまうことを意味していた。
最高速に達した砲弾を止め得る設計だったが、それを破る手段が一つだけある。 高周波振動だ。
軍用第三世代強化外骨格と比較すると大人しい平気だが、その実、単純な破壊力で言えば現代では最高の物と言える発明だ。
現に、棺桶と戦う際に攻撃にも防御にも転用し得るその発明があるとないとでは状況が大きく違ってくる。
高周波振動ナイフ一本で棺桶と戦える生身の人間の存在が何よりの証明だ。
それを砲弾に転用すれば、吹き飛ばせない壁はない。
規格外の財力と開発力を持つ組織であれば、それを開発している可能性は大いにある。
爪;'ー`)y‐「手段は問わない、敵戦艦の主砲を今すぐ無力化しろ!!」
悲鳴じみたフォックスを嘲笑うように、二発目の砲弾がスリーピースに再び大きな穴を開け、街の建物を吹き飛ばした。
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| |ト、i |i ヾ ,' |i / /
\ノ l |、 i|ト、 i |i i| i/
、ノ\ | ∨ {/i 、 i i|/ iノ|i /| i/|
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第八章 【 Ammo for Rebalance part5 -世界を変える銃弾 part5-】
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同日 AM09:44
常に。
そう、常にその男は悩み続けていた。
騎士としての称号を与えられてから、果たして何が自分の本性なのかと。
与えられた仕事を全て果たし、完璧以上を追求してきた。
気が付けば階段を上る様に、エスカレーターに乗っているだけで登頂できるような感覚だった。
彼にとって困難は非日常の存在だった。
何度も求め続けても、彼の手をすり抜けていった。
満たされることのない日常は、難事件を解決する部署に配属されても変わらず、いつの間にかその責任者になっていた。 やがてその実績が買われ、騎士としての地位を得た。
彼の生まれた街でその地位を得ることは、夢を叶えることに等しい出来事だが、彼にとっては日常の一つだった。
実感も、満足感も、何も得られない人生の中で唯一、彼を満たすものがあった。
それは、未知の存在だった。
――デレシア。
その名前は、ジュスティアの深部に触れない限り聞くことのない名前だった。
それはまるで、神話の中の存在のように圧倒的な物だった。
当初、彼はその存在をただの書類上の名前でしか記憶していなかった。
名前は彼にとって覚えるのにわけのないものだった。
それが現実のものとして彼の耳に届いた時、彼の興奮が始まった。
あり得ない、あるいは、その名を語る偽物とだと思っていた。
期待が常に裏切られ続けてきた処世術だった。
だがしかし、現実のものとして目の前に現れた時、彼の心は決まった。
積み重ねてきた何もかもを失っても構わないと思えるほどの、圧倒的な興奮。
組織から与えられた任務は、彼にとって極めて都合のいい物だった。
二重スパイとしての役割を与えられたが、その実、彼はどちらにも組しない存在として立ち回る自由を得たのだ。
( <●><●>)「何の用ですか、いきなり呼び出して」
ロストアークの食堂に呼び出されたワカッテマス・ロンウルフは、目の前で腕を組む禿頭の男に溜息交じりにそう言葉をかけた。
その声には明らかな怒りが込められ、それは言葉にも表れていた。
度重なるストレスと心労で、その目は以前よりも小さくなっているようにも見えたが、瞳の奥にあるどす黒い執念の炎は揺らぎがない。
(´・ω・`)「お前の目的は何だ?」
ショボン・パドローネの語気はどこか穏やかですらあったが、それは間違いなく嵐の前の静けさと呼ばれる物の類だった。
潮風と爆風が壁を隔てた向こう側から聞こえてくる。
二人の世界にあるのは、静寂と緊張、そして密かな興奮。
( <●><●>)「……何の話ですか」
(´・ω・`)「今、報告があったんだよ。
ラヴニカが蜂起したそうだ。
お前が殺したはずの人間が先導している。
死を偽装できたのはお前だけだ」
( <●><●>)「おや、それは不思議ですね。
亡霊でも出たんじゃないですかね」
しかし、ワカッテマスの冗談を無視し、ショボンは続ける。
(´・ω・`)「ところが、だ。
お前は俺ですら知らない、ジュスティアに不利な情報を流した。
まぁそれが真実かどうかはさておいて、現実に起きていることだからな。
お前は、何がしたいんだ」
お互いに、利き手がそれぞれの得物を潜ませた場所に自然に向かう。
そのことをお互いが視野の中に入れている。
後は機会だけだ。
機会が訪れれば、自ずとやるべきことをやるだけだ。
( <●><●>)「私が何を言っても信じないのでしょう?」
(´・ω・`)「円卓十二騎士がジュスティアを裏切るなんてこと自体があり得ないが、今回は状況が状況だ。
お前が本当のことを話せば、俺は安心してお前を殺せる。
話さなければ少し痛い目を見てもらってから殺す」 静かに。
ただ、極限まで集中した二人の世界からは、音が消えていた。
( <●><●>)「真実から逃げ出した男が、私を殺すと?
そうやってまた、真実を一つ手放すつもりなのですか」
(´・ω・`)「饒舌な野郎だな。 そういう男は嫌いだ」
( <●><●>)「妻子の仇に組している哀れな人間を前にしたら、誰だって饒舌になります」
(´・ω・`)「お前は前から嘘の吐き方は一流だが、交渉術は三流だな」
緊張の糸。
両者の間にある、あるいは、両者が乗る極めて細い均衡が音を立てて切れる寸前の気配。
今まさに、坩堝が溢れ返ろうとしていた。
( <●><●>)「二人が死んだ内戦は、内藤財団が原因だというのに」
(´・ω・`)「もう黙れよ!!」
ショボンの叫び声とほぼ同時。
二人の頭上で主砲が爆発し、衝撃波と振動が二人を襲った。
その爆発に備えることが出来ていたのは、爆発がいつ起きるのかを正確に知っていたワカッテマスだけ。
爆発の衝撃と音でショボンは耳を押さえてその場に膝を突くが、辛うじてワカッテマスを睨み上げるだけの気力は残っていた。
だが爆発音の影響で彼の聴力は著しく低下し、三半規管に影響が出ていた。
視線の先にある拳銃の撃鉄が起きているのを見て、ショボンは忌々し気に歯ぎしりする。
暗い銃腔の奥に待ち構える銃弾の気配を、ショボンは確かに感じ取ってしまったのだ。
(;´・ω・`)「……くそっ!!」
( <●><●>)「大丈夫ですか? 私の声、聞こえていますか?
争っても仕方がないんですよ」
(;´・ω・`)「うるさい……
仇なんてのはな、最初から知ってるんだよ」
( <●><●>)「なのに手助けをするなどと、あなたらしくない」
ショボンといえば、多くの犯罪者を牢屋に入れ、然るべき罰を受けさせてきた熟練の警官だった男だ。
腐っても警官だった過去を考えれば、怪しげな新興宗教の様な類に騙される人間ではない。
引退後、住んでいた街で起きた内戦に巻き込まれ、妻子を失ったことが組織に入るきっかけとなった。
しかし、その内戦が起きたのは内藤財団が持ちかけた商売の話が原因だった。
賛成派と反対派。
その二つの意見と鬱憤が武力という形でぶつかり、最悪の結果を生んだ。
ならば、最初に内藤財団が声をかけなければよかったのでは、と考えるのが人間だ。
復讐の為に世界を敵に回そうとする人間の思考などどこか狂っている物だが、根底は人間の持つ感情に根差したものである。
だが――
(;´・ω・`)「仇討ちをしたら世界が変わるのか?
正義を成せば世界が正しいものになるのか?
いいや、違うね。
ルールが変わらない限り、世界は変わらない。
復讐なんてのは、海を変えようと海に小便をするようなもんだ。
海の本質が変わらない限り、ただの自己満足で終わるんだよ。
死者への最大の弔いは、その死を無駄にしないことだ!!」 ――土壇場で彼の理性が復讐の無意味さを悟り、それを別の何かに転化させたのであれば、一応の説明はつく。
実に人間らしく、正義の都に長くいた男の発想といえる。
むしろ、倫理的に考えて彼の言葉は非常に模範的でさえある。
( <●><●>)「その為であれば、妻子の仇に手を貸す、と。
いやはや、随分と素晴らしい人間性ですね」
(;´・ω・`)「二人の死に意味を持たせる。
ワカッテマス、お前も気づいているんだろ?
この世界のルールが、どうしようもなく正義から遠ざかっていることに」
( <●><●>)「あなたたちのしていることも、大分正義から遠いように思えるんですがね。
奥方、あぁ、この場合は何と言えばいいんでしたっけ?
まぁひとまず、隠居生活を送る場所を間違えたのは、あなたのミスです。
自分たちも同じようなことをしているのに、随分と虫のいい話ばかりしますね」
ショボンに非があるとしたら、やはり隠居先だった。
長らく争いから離れていた街ではあったが、歴史を紐解けばその争いがいつ再発しても不思議ではないことは明らかだった。
言わば、着火の瞬間を待っている爆弾の様な街だ。
表向きは平穏な街だが、ほんの少し対立の要素を投げ込めば、それだけで街の人口が半分以下になるような場所なのである。
(;´・ω・`)「何?」
( <●><●>)「耳付きに対しての強い差別は、あなたの奥方が殺されたのと根底が同じです。
差別するという気持ちがある以上、あなた方が掲げる新ルールも今のルールも、大差はありませんよ」
内戦で殺されたショボンの妻は、その実、性自認が逆転している人間だった。
表向きはただの夫婦だが、実際にはジュスティアの法律では認められていない同性婚なのだ。
そして、内戦では徹底して敵対する人間と異端者が殺されることになった。
特に、外部から移住してきた人間は街に余計な物を持ち込んだ存在として、保守派の人間の標的となってしまった。
結果、ショボンの妻子はその標的となり、彼は家族を奪われたのだ。
(#´・ω・`)「耳付きとあいつを一緒にするな!!」
( <●><●>)「差別、という点が一緒なんですよ。
自分と異なる物を排除することが続く限り、世界の名前を変えただけで終わりです」
(#´・ω・`)「何だ、お前。 分かってないな。
耳付きは差別の対象じゃなくて、駆除の対象なだけだ。
病原菌を根絶やしにする、それだけだ」
( <●><●>)「その発想で言えば、同性愛者も同じことかと。
あなたが率先して自分の頭を撃ち抜けばいいのでは?」
(#´・ω・`)「個人の性は自由であるべきだ。
だが耳付きは人間じゃない。
正常な人間の遺伝子に異常が出た、突然変異種だ。
ここで絶やさなければ、人間はいずれ獣に落ちぶれる。
だから、ジュスティアでも耳付きは人間としては扱わない。
お前もその内の一人のくせに、よくも好き放題言えるな」
( <●><●>)「まぁ正直、私も耳付きを気持ちよく思ってはいませんよ。
ですが、だからと言って根絶やしにしたりする必要はないと考えています。
ほら、私はトマトが苦手ですが、それを絶滅させようとは思っていないのと同じですよ。
嫌な物は無関心が一番です」
(#´・ω・`)「やっぱりお前はぶっ殺す」 ( <●><●>)「正義の味方で在り続けられなかった人に、私は殺せませんよ」
ワカッテマスの持つ拳銃が火を噴いた。
無慈悲に放たれた銃弾。
それは彼の狙い通りの場所に撃ち込まれたが、その場にショボンはいなかった。
( <●><●>)「……マックスペインですか」
懐に入れていたのが銃だと勘違いしていたが、彼が使用したのは身体能力を劇的に向上させる薬物だった。
一瞬にして銃腔から姿を消したショボンは、ワカッテマスのすぐ隣に移動しており、容赦のない鉄拳をその顔に放った。
寸前でその攻撃を手のひらで受け止めつつ、威力を殺すために自らその場を軽く飛ぶ。
驚くほどあっさりとワカッテマスの体が宙を舞い、テーブルに激突した。
そのままテーブルの上を滑り落ち、姿勢を整える間もなくショボンが両腕を鎚のように振りかぶって頭上から襲い掛かってくる。
丸椅子を投げつけ、牽制する。
それはショボンにかなりの速度で当たったが、着地後の彼に怯む様子はなかった。
(´・ω・`)「効かねぇよ」
( <●><●>)「そんなことは分かってますよ」
牽制はフェイント。
本命は拳銃。
二発の銃弾はむなしく虚空を貫き、辛うじて視界の端にショボンの姿を捉える。
反応速度だけでなく、肉体の挙動も通常のマックスペインでは考えにくいレベルだ。
マックスペインを2本使用した、もしくは濃度の高い物を使ったのだろう。
( <●><●>)「ドーピングのし過ぎは脱毛を早めますよ」
(´・ω・`)「ははは!! もうねぇよ!!」
( <●><●>)「毛だけに?」
(#´・ω・`)「やかましい!!」
今度はショボンが椅子を投げつけてきた。
ワカッテマスの数倍の速度で放られた椅子は、それだけで十分な威力を持つ。
殺傷力は文句がないだろう。
手近な椅子を蹴り上げ、それを空中で椅子に激突させる。
その隙にワカッテマスは牽制射撃を行いながらキッチンに逃げ込み、適当な武器を見繕う。
銃弾が当たらなければ近接戦しかない。
シンクの上にあったラックから包丁を手に取り、躊躇いなく連続で投擲する。
(´・ω・`)「……刃物は駄目だろ。
男らしく殴り合いだ」
だが最初に投擲された二本の包丁の柄を掴み取ると、残った全ての包丁が冗談のように打ち払われ、地面に転がった。
腕力だけで人間を殺せる状態にあるショボンの提案に、ワカッテマスは苦笑交じりに答えた。
( <●><●>)「自前の筋肉ならいいのに、ドーピングしている人間にそれを言われても」
(´・ω・`)「いいじゃねぇか」
( <●><●>)「良くないですね、そんなゴロツキみたいな真似」
シンク下に隠していた小型コンテナを掴み、ワカッテマスは挑発的に言った。
( <●><●>)『私がゴロツキでないことを、この拳が証明する』 その起動コードは近接戦闘用の棺桶の中でも、非常に異色なコンセプトの元に設計された“拳闘用強化外骨格”。
名持ちの棺桶として量産されたが、その利点は拳の一撃を強化することだけで、他にはない。
腕力の強化という点で言えば、他にも優れている物は多々ある。
つまり、棺桶としての魅力は極めて低く、使用者の自己満足を満たす目的が非常に強い物だ。
合計で6種存在する“ロッキー”の名を持つ棺桶は非常にコンパクトで、尚且つ携帯性に優れている。
こうしてキッチンの調理器具の間に隠しておくことが出来るのが、数少ないメリットだろう。
一瞬にして両の拳を覆うのは、ハンマーのように武骨な指を持った手甲だ。
それを振るうための補助はなく、人間の力のみで使わなければならない。
言わば金属製のグローブだ。
あまりの重さに、棺桶の筋力補助を受けていないワカッテマスの両肩が下がってしまう。
最も軽量かつ秘匿性に優れる最初期のロッキーは、拳を保護することに重きを置いている。
故に、使いこなすためにはそれなりの筋力が必要になる。
( <●><●>)「これでフェアですね」
(´・ω・`)「使い慣れてない武器で、どこまでやれるかな」
( <●><●>)「こう見えても、私は円卓十二騎士ですからね」
(´・ω・`)「仮に“ロールシャッハ”だろうが何だろうが、武器の優劣は覆せない。
得意不得意も同様だ」
( <●><●>)「……ふふっ、あなたも随分と可愛らしいことを言いますね」
(´・ω・`)「あん?」
( <●><●>)「私と殴り合うのが怖いんでしょう?
鶏 野 郎」
激怒した人間がその怒りを暴力として速やかに実行出来る時、そこに言葉はいらない。
結果を生み出す。
ただ、それだけの為に動く。
椅子を手に持っているはずのショボンの姿は一瞬にして移動し、キッチンにいるワカッテマスの胸倉を掴み、片手で空中に放り投げた。
身動きの取れない空中にいるワカッテマスに向け、やり投げの要領で椅子が投擲される。
装甲の付いた両腕で顔を守っていなければ、彼の顔は奇妙なオブジェと化してロストアークの天井に縫い付けられていただろう。
落下する寸前に再びショボンが現れ、殺意のこもった後ろ回し蹴りを繰り出した。
狙いは頭。
命中すれば脳への深刻なダメージは避けられず、頚椎が折れることは間違いない。
仮にかすったとしても脳震盪によって動きが鈍り、そこに追撃を加えれば十分に絶命させ得る一撃だ。
腕の上からでもその威力は十分であり、何の装甲もない生身の体に受ければ最低でも骨を砕く。
(;´・ω・`)「何?!」
だが、彼の足裏が感じ取ったのは骨を砕く感覚ではなかった。
硬い金属か、もしくはそれに準じる硬度を持った何かの存在に思えただろう。
( <●><●>)「重要なのは筋力だけじゃないんですよ」
離れた位置に互いに着地し、睨み合う。
(;´・ω・`)「棺桶をもう一つ使っているな、お前。
何だ、“キャッツ”か?」
( <●><●>)「小説の悪役じゃないんですから、そんなもの、35分前にとっくに装着してありますよ」
(´・ω・`)「何かしてくると思ったが、やっぱり狡い真似をしてきたか」 ( <●><●>)『私は世界が滅びようとも妥協はしない。それが私とあなたとの違いですね』
それは、起動していない時は衝撃によって硬化し、その表面にモノクロの迷彩を施すことが出来る特殊繊維で作られた棺桶の起動コード。
一度起動すれば筋力補助と光学不可視化迷彩を使用することのできる、名持ちの棺桶“ウォッチメン”のそれだった。
しかしそれがコードであることを、ショボンは認識できていなかった。
既に着用した状態のウォッチメンへのコード入力は特に目立った動きも何もなく、特徴的な何かがあるわけでもない。
ましてやその存在を同僚の前で晒したことは一度たりとも無い。
“モスカウ”の統率者は秘密を暴く人間であると同時に、最も秘密の多い人間でもあるのだ。
複数の棺桶を同時に使うことに関して、彼ほど長けた人間はジュスティアにはいない。
会話中に自然に起動コードを織り交ぜ、戦闘能力の低いAクラスの棺桶を使い分ける。
簡単そうな動作だが、実戦で実施するとなるとその難易度は極めて高い物となる。
そんな彼の功績も能力も、モスカウ内で知る人間は一人としていなかった。
彼は謎の中に生き、謎を追い、謎を蓄える存在なのだ。
( <●><●>)「さぁ、拳で語り合うんでしょう?」
(´・ω・`)「あぁ、丁度いいハンデだ」
直後、ショボンの足が床に固定されていた金属製のテーブルを蹴り上げ、ワカッテマスに蹴り飛ばした。
それを拳で撃ち落とすと、その向こう側からドロップキックが襲い掛かってきた。
(;<●><●>)「っと?!」
(´・ω・`)「実戦経験の差だな!!」
テーブルを盾のように掴んで後退したワカッテマスに対し、テーブル越しにショボンの蹴りが連続で襲い掛かる。
全てを防ぐことが出来ないと判断したワカッテマスは、左の拳を握り固め、力強くテーブルに向けて放った。
呆気なくテーブルは砕け、両者の攻撃が直に激突する。
競り勝ったのは当然、ワカッテマスだった。
(;´・ω・`)「ちっ……!!」
攻撃において、硬度、重量、そして速度は破壊力に直結する重要な要素だ。
ショボンに欠けているのは硬度と重量だった。
三つの要素の内、二つで劣っているショボンがワカッテマスの攻撃に勝る道理はない。
理屈をねじ伏せるための技術を発揮しようにも、両者の間にあるテーブルという壁が搦め手を許さない。
それはワカッテマスも同様であり、勝っているとしても、追撃をかけることができない。
床にテーブルが落ちて互いの姿が見えた時、両者は示し合わせたように距離を取っていた。
(´・ω・`)「案外、動けるんだな」
( <●><●>)「言ったでしょう? 妥協はしないんです。
……では、遊びはこのぐらいにして、本気で行きましょうか」
(´・ω・`)「面白い、かかってこい!!」
ショボンが身構える。
それを見て、ワカッテマスは悪戯っぽく笑みを浮かべた。
( <●><●>)「やるべきことはやったので、私はさっさとこの船から逃げさせてもらいますね」
(´・ω・`)「……え」
――唖然とするショボンを置いて、ワカッテマスは何の躊躇いもなくその場から走り去った。
(#´゚ω゚`) 残されたショボンは呆然としたが、瞬時に顔を赤くして激怒し、その後を追ったのであった。
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同日 AM09:48
海上で異常が生じている間、ジュスティア陸軍はオリノシという町で大規模な戦闘を強いられていた。
北から接近してきた大規模な部隊を相手に、陸軍は最初から全力を出さざるを得なかった。
相手の指揮官が元イルトリア軍人で尚且つ、対ジュスティア戦に並々ならぬ意欲を持つ人間だったことがその原因だった。
先行していた偵察部隊から、敵がオリノシを横断してイルトリアに向かうという情報を得たことで、戦場は必然的に町の中で行われることになった。
オリノシの町はどの建物も薄汚れており、耐久性は低い物ばかりだが、その密集率は大規模な部隊の展開を拒む姿をしている。
だがそれは、両者にとって同条件だった。
互いに率いる車輌部隊は町の道を一列になって横断せざるを得ず、戦車はその砲塔を自在に使うことが出来ない。
数年前から増え続けた家屋が町そのものを飲み込むような形となっており、優劣を決するのは市街戦に長けているかどうかという点に絞られた。 敵がオリノシをあえて通過するということがジュスティア陸軍への挑戦であることは明白であり、オリノシそのものが内藤財団によって買収されているのは明らかだ。
それでも、陸軍は正面からそれを迎え撃つことに何一つ躊躇うことはなかった。
罠があったとしても、それを踏み越えることが出来るという自負があったのだ。
そして今、陸軍大将のオワタ・ジョブスはライフルと無線機を手に、最前線にいた。
その顔は土と砂利にまみれ、汚れた姿をしていた。
一般人と戦闘員の区別がつかないことは最初から分かっていたため、陸軍は自軍以外全てを敵として対応することを徹底した。
女子供が相手であっても、彼らは攻撃の手を緩めることはしなかった。
最初、民間人に攻撃を加えることに躊躇いがあったが、対戦車ロケット砲を持っている子供が民家から現れた時、その気持ちは霧散した。
陸軍は部隊を二分し、敵が町の外に出ないように車輌部隊でオリノシを囲うことにした。
そして、オリノシの中で戦うことになったのは歩兵だった。
強化外骨格という鎧があれば、例え戦車が相手でも戦い方次第では圧倒的な力で排除することが出来る。
最新の対強化外骨格用の武装を与えられた民兵を相手に、陸軍は当初の予想に反して苦戦を強いられていた。
敵の指揮官を探そうにも、相手の正確な位置が分からないため、小隊に分かれて戦闘を行った。
町の構造をよく知る相手を前に、一人、また一人と兵士が倒れていく。
オワタ率いる小隊は一時的に近くのアパートを退避場所に選び、即座に制圧した。
ようやく安全を確保した二階建てのアパート内で、オワタは周囲の銃声と爆発音にかき消されないよう、無線機に向かって怒鳴り声をあげた。
\(^o^)/「砲撃支援はどうなってる?!」
一応はコンクリートで作られた建物だが、爆風で絶えず振動しており、天井から埃や粉塵が降っている。
『観測手からの通信が来ません!!
それに、味方に当たる可能性が高いです!!』
敵の攻撃に対抗するには、砲撃をするしかない。
建物を吹き飛ばし、敵の潜伏している場所を減らしていくのが最適解だった。
幸いなことに味方の位置は分かっているため、敵のいる可能性のある場所だけを攻撃することが出来る。
問題があるとしたら、攻撃地点に敵がいない可能性があることと、倒れた建物に味方が巻き込まれないかどうか、という点だ。
その為の観測手が各小隊に配置されているが、通信による指示が可能な状態ではないのだろう。
通信兵でさえ戦闘に積極的に参加しなければならない程の苛烈な状況になるとは、当初は考えられていなかった。
\(^o^)/「ならこっちで座標を指示する!!
超至近距離着弾でもいい!! とにかく、連中を吹き飛ばしてくれ!!」
指揮官が最前線で戦わなければならないという彼の信念は誰よりも素早い決断を可能にし、軍全体の指揮の向上につながった。
オワタの指示から1分もせず、砲撃が行われた。
ジュスティア陸軍の砲兵隊による砲撃は味方を巻き込みかねない超至近距離への攻撃ではあったが、それは極めて精密なものだった。
砲撃は町の外から行われ、指定された座標にある建物が吹き飛ぶ。
しかし、砲撃の間でも敵は姿を現し、攻撃を続けてきた。
敵部隊の戦車、装輪装甲車が道を塞ぎ、歩兵がそれを乗り越えようとすると撃たれてしまう。
対強化外骨格用の銃弾が雨のように降り注ぐため、Bクラスの棺桶が生身の人間に撃ち殺されるという事態が生じている。
オワタのいる建物の近くに着弾し、爆風が窓ガラスを割った。
\(^o^)/「いいか、絶対に町から外に連中を出すなよ!!」
『了解です!!』
この場所を通過させてしまえば、ジュスティアに残されたのはスリーピースだけになる。
ここで食い止めなければならないことは、兵士全員が分かっている。
それでも、飛び交う銃弾が負傷者を増やし、死体を増やす。
更なる攻勢に出るためには、砲撃支援が欠かせない。
『こちらゼロナナ小隊、弾薬がそろそろ尽きそうだ!!
連中の銃を鹵獲して使う!!』 それは初めての報告だった。
弾薬が尽きれば、残された道は白兵戦しかない。
敵の使う武器を鹵獲するのは最後の手段だったが、この状況でその判断は正解だ。
対強化外骨格用の弾が装填されていれば、こちらの武器としても十分に使える。
しかし、それを急いで否定する通信が入った。
『駄目だ、あいつらの銃には罠がある!!
使ったら弾倉が暴発する仕組みだ!!
さっき部下の手首から先が吹き飛ばされた!!』
\(^o^)/「ちいっ……!!」
戦闘開始から絶えず発砲すれば、いくら予備の弾を装備していても弾薬が尽きるのは時間の問題だった。
そして、補給路がないことも問題だった。
分散した結果、一時退却するにも時間がかかってしまう。
戻ろうとする小隊の背中からは銃弾と砲弾が飛んでくる。
相手は町中に弾薬を隠し持っているらしく、補給路を作る必要がないのだ。
ジュスティア軍が採用している銃と相手の銃では弾薬の規格が異なり、現地調達も不可能だった。
これがオリノシを戦場に選んだ理由なのだとしたら、大した相手だ。
戦いの舞台としてこの町を用意し、こちらが誘い込まれることを想定して行動していたのだから。
この状況を悲観する兵士は恐らく一人もいないだろう。
むしろ、これまで培ってきた技術の全てを出せるとあって、喜んでいる者もいるはずだ。
オワタ自身、久方ぶりに戦場に足を運んで指揮を執っているが、高揚感は否めない。
\(^o^)/「……」
不意に、オワタは首筋に悪寒を感じ取った。
彼と部下は建物を完全に制圧していた。
敵となり得る存在は全て排除した。
一階と屋上に通じる通路には部下を配置し、敵の侵入には細心の注意を払っている。
しかし、彼が感じた悪寒は間違いなく殺気の類だ。
部屋に持ち込んだ棺桶を背負う。
直後、足元が揺れたかと思うと、視界が一気に傾く。
\(^o^)/「な、何だ?!」
彼と小隊のいたアパートは根元を切り払われ、倒壊した建物に小隊全員が埋もれることになった。
[,.゚゚::|::゚゚.,]『いい墓標になったな』
瓦礫の山の前に、一機の棺桶が立っていた。
左腕からは排熱した湯気が立ち、地面には使い果たしたバッテリーが転がっている。
大出力の戦術高エネルギーレーザーによる比類のない一刀両断。
障害物除去に特化したその棺桶は、市街戦でこそ、その力を発揮できる。
その声は瓦礫の下にいる人間には届かなかった――
[,.゚゚::|::゚゚.,]『ん?』
――だが、声が届かなくとも問題はなかった。
オワタにとって必要だったのは、相手の位置であり、姿であり、そして何よりも指揮官の存在だった。
瓦礫の山が、巨大な爆発によって吹き飛ぶ。
男は反射的に右腕で顔を庇い、カメラへの損傷を防ぐ。
爆炎の中、1機のユリシーズが仁王立ちになっていた。
追加装甲と追加武装によって歩く爆薬庫と化した、オワタ専用のユリシーズ・カスタムだ。 〔 <::::日::>〕『お前が指揮官だな』
[,.゚゚::|::゚゚.,]『驚いた、生きていたのか』
巨大な爪を持つ白い棺桶の使用者が、心底驚いた風に声を上げた。
倒壊する直前に棺桶の装着を完了させていたため、オワタはこうして生還することが出来たのである。
彼の使用するユリシーズは全身に大量の榴弾を装備しており、彼の体に乗っていたコンクリートの山も容易く吹き飛ばすことが出来る。
通常のユリシーズよりも堅牢な対爆装甲で全身を覆っているのは、榴弾を多用する彼の戦い方を支援するためだ。
〔 <::::日::>〕『……その声、聞き覚えがあるな。
イルトリア人だな』
[,.゚゚::|::゚゚.,]『陸軍大将に覚えてもらえているとは、光栄だよ。
だが俺は覚えてない』
〔 <::::日::>〕『あぁ、思い出したよ。
小便を漏らしながら命乞いをしたクソッタレだ』
すかさず戦闘が始まるかに思われたが、男は寸前で踏みとどまった。
踏み込みかけただけで足元の瓦礫が砕けていた。
そのまま飛び込んできていれば体勢を崩し、その隙に間違いなく高威力の打撃が襲ってきたことだろう。
それと同時に、勝敗は決していたはずだ。
[,.゚゚::|::゚゚.,]『見えすいた罠だな』
〔 <::::日::>〕『そう思うか? 臆病者』
[,.゚゚::|::゚゚.,]『安い挑発は買わないことにしている』
〔 <::::日::>〕『はははっ、なるほどな。
遊び心のない奴だ。
いいさ、別に』
両腕を胸の前で交差させ、オワタは静かに言った。
〔 <::::日::>〕『お前が逃げなければ、別にいい』
全身に仕込んでいた榴弾が四方八方に射出される。
着弾と同時に爆発が起き、炎が上がり、周囲一帯を瓦礫の山と火の海に変える。
[,.゚゚::|::゚゚.,]『派手な演出だが、陸軍大将の葬式にはちょうどいいな』
〔 <::::日::>〕『お前の葬式になるかもしれないぞ。
どうした、参列者は呼ばなくていいのか?』
[,.゚゚::|::゚゚.,]『人望のある方の参列者が来るのが常識だろ』
〔 <::::日::>〕『ほう』
ならば、とオワタは声なく続ける。
ならば、最も熱烈な参列者が来るのはオワタの方だ。
オワタの意図にようやく気付いた男が、震える声で言った。
だが遅い。
既に榴弾に紛れて信号弾を打ち上げており、味方の行動が始まる頃だ。
[,.゚゚::|::゚゚.,]『……お前、まさか』
〔 <::::日::>〕『もう遅い。 さぁ、勝負といこうか!!』 二人の頭上から、砲弾が雨のように降り注いできた。
砲撃によって地面は抉れ、瓦礫が砲弾のように水平に飛んでいく中、炎の嵐が吹き荒れる。
防爆に特化した装甲を持つオワタの戦い方は非常にシンプルだ。
自分のいる場所に敵を集中させ、自分ごと砲撃させる。
僅か3分。
しかし、苛烈極まりない3分間だった。
周囲500メートルは全て更地と化した。
Cクラスの棺桶の装甲でも無事では済まない。
〔 <::::日::>〕『……ほう』
だが、彼の目の前にいる敵は健在だった。
それどころか、もう1機棺桶が増えていた。
まるで傘のように頭上に薄い装甲が展開され、その下にいる先ほどの棺桶は無傷の状態だった。
間違いなく防御特化の棺桶だ。
[,.゚゚::|::゚゚.,]『危うく泣かされるところだった』
〔 【≡|≡】〕『ああいう爆弾馬鹿は痛い目を見せたいと思っていた。
見ろ、味方まで巻き込んでやがる。
さっさと殺るぞ』
確かに、更地と化した場所には味方がいたかもしれない。
崩れた建物の下に生存者がいたかもしれない。
それでも、正義執行のためには誰もが命を懸ける覚悟があった。
せめて彼らが安らかに死ねた事を願うばかりだ。
〔 <::::日::>〕『面倒だ、まとめてかかってこい!!』
――その時、頭上から飛来した物体の存在に気づいたのは僅かに一人だけだった。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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同日 同時刻
『……着弾確認、恐らくこれで全滅です』
(’e’)「そっか、ありがとう」
オリノシが瓦礫の町と化すのに必要だった砲弾は、僅かに二発だけだった。
着弾地点は観測手のおかげでずれはなかった。
ジュスティア陸軍内部に潜んでいた細胞は砲兵として所属しており、戦闘を通じて詳細な情報を手に入れ、蓄積していたのである。
皮肉にも、陸軍大将は自らの正確な位置を信号弾で教えており、その地点に対しての一斉砲撃で更に詳細な情報が手に入っていた。
砲兵部隊と戦車隊による集中攻撃によってオリノシにいた人間はほとんどが死んだが、ティンバーランドの人間の被害は予定よりも少なく済んだ。
こちらの想定した通り、こちらが手に入れていた情報通りに陸軍は動き、そして壊滅した。
使用した砲弾はDAT内に保存されていた資料を基に、長年研究と実験を繰り返し、現代に復元した気化爆弾を詰め込んだものだった。
通常の砲弾や爆弾とは違い、爆発の継続力が桁違いであり、街中で使用すればかなりの威力を発揮できる。 一発を復元するだけでも数億ドルの費用が必要であるため、まだ100発程度しか量産に成功していない。
小規模な町であれば二発で壊滅させられることが分かったのは、あまり実りのある情報とは言えない。
それはジョーンズの予想と同じであり、何一つ面白くない。
何より、味方であったとしてもその砲撃を生き延びた人間がいる以上、この砲弾は完璧ではないのだ。
〔 【≡|≡】〕『危うく死ぬところだったんだ、何かないのか?』
それは、ミルナ・G・ホーキンスからの通信だった。
彼の持つ“マン・オブ・スティール”があれば、気化爆弾の衝撃からも身を護ることが出来る。
装甲を展開すれば味方を守ることも出来る。
ただし、失われる酸素のことを考えていなければ保護下にあっても十分に死に得る状況だった。
(’e’)「君達なら大丈夫だと思っていたよ」
[,.゚゚::|::゚゚.,]『どうだかな。 俺たちを消耗品――エクスペンダブルズ――だとでも思ってたんじゃないのか』
クックル・タンカーブーツの声に感情はあまり感じられないが、内心で憤っていることは流石のジョーンズでも分かる。
ミルナの防御が間に合わなければ、町で唯一の生存者はミルナだけになっていたはずだ。
(’e’)「はははっ、上手い事を言うね。
君たちはかけがえのない存在だと思っているんだよ、僕ぁ」
実際に戦闘を行っていたのは、最初に動員した半分の兵士と町の人間だけだ。
ジュスティア陸軍を町に釘付けにし、そこを試射がてら遠距離から砲撃する。
消耗品がいるのならば、それはミルナとクックルを除いた人間達のことだ。
量産機の棺桶に大した価値はない。
コンセプト・シリーズは替えが効かず、一度失えば二度と戻らないのだ。
クックルが使用している物も一度は壊されたが、修理と改良を施すことでこうして戦場に戻ることが出来ている。
[,.゚゚::|::゚゚.,]『あぁ、そうかい。
とにかく、残党を処分したら次は本丸だ。
頼んだぞ』
(’e’)「任されよう」
こちらが本気を演じ、哀れにも陸軍兵士がそれに応じて全滅したというのは、あまりにも滑稽だった。
複雑に入り組む形をあえて取らせていた町がこちらの戦力を相手に錯覚させ、結果として一網打尽にすることが出来た。
町の外に待機している砲兵部隊と戦車隊が滅びるのは時間の問題だ。
積み重ねていた準備と作戦が、一つずつ消化されていく。
結局、世界最強に名を連ねるジュスティアでさえも、ジョーンズの予想を裏切りはしなかった。
(’e’)「焼夷弾を装填しておけ。
次はジュスティアに撃ち込むぞ」
しかし。
ジョーンズの計算は完璧ではなかった。
人間とは常に予想外の動きをするものであり、そして何より、ジョーンズが計算に入れていない要素を持つのが人間なのだった。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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∨/⌒ーミ ≠=ミx从.:.:.:. 〉 「紅茶、誰か淹れてくれるかな?」
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同日 同時刻
通信障害に気づいたのは、クックルだった。
味方にいくら話しかけても通じず、ジョーンズにもつながらない。
ジュスティアの砲兵隊が妨害電波を使用しているのだとしたら、少し遅すぎる。
何か意味のある通信障害であると考えた時、背後の瓦礫がゆっくりと持ち上がった。
[,.゚゚::|::゚゚.,]『……驚いた、まだ生きていたのか』
恐らく、ジュスティアで最も爆破に慣れている人間を前に、ミルナは冷静に分析をした。
〔 【≡|≡】〕『体に仕込んでいた榴弾が、爆発反応装甲の役割を果たしたらしいな』
そこに立ち上がっていたのは、装甲の大部分が炭化したユリシーズだった。
機敏さはなく、まるで各関節が錆びついているかのように、動きに繊細さはない。
気化爆弾の爆風に耐えるために、己の持つ爆薬を使って防御に使った機敏さは流石だ。
陸軍史上最も死地に立った回数が多いと言われるだけあり、彼が正当な評価を受けていることは間違いないだろう。
〔 <::::日::>〕『行かせるか!!』
〔 【≡|≡】〕『その体で止めるつもりか?
せっかく拾った命だ、祈る時間ぐらいはくれてやるよ』
〔 <::::日::>〕『はっ、そいつはいいな。
お前らの魂とやらが地獄に行くことを祈ってやる』
強がりを言っているが、棺桶の要であるバッテリーも損傷を受けていることは間違いない。
装甲を取り外さなければ、文字通りの棺桶と化し、誰かに救助されるまでそのままになる。
[,.゚゚::|::゚゚.,]『減らず口はそこまでだ』
エクスペンダブルズの両腕にある爪を一つに束ね、クックルは容赦なくその両腕を振るってオワタを切り裂く。
胴体が二分された棺桶が地に伏す姿を、その場にいた誰もが幻視した。
[,.゚゚::|::゚゚.,]『……ちっ』
だが、その一撃は寸前で防がれた。
クックルの懐に入り込んだ棺桶によって両腕が空に向けられ、無駄撃ちをすることになったのだ。
バッテリーが排莢されなければ次の攻撃が出来ない。
目の前にいる小柄な棺桶は、的確にこちらの腕を掴み、排莢作業を防いでいる。
似`゚益゚似 棺桶の性能に頼らず、己の四肢を鍛え抜き、そして武術を極めた人間の動き。
驚くほど真っすぐな肉弾戦を仕掛けてくるタイプだと一目で分かったが、それ故に、クックルは身動きが取れない。
〔 【≡|≡】〕『気をつけろ、そいつは円卓十二騎士の“番犬”だ』
[,.゚゚::|::゚゚.,]『分かってる!!』
クックルの攻撃を防いでいた棺桶が一瞬で深々とその場に屈みこみ、後ろ回し蹴りを膝関節に向けて放った。
[,.゚゚::|::゚゚.,]『くそっ!!』
辛うじて避けつつ、両腕からバッテリーを排莢する。
それと同時に鉤爪を展開し、近接戦に備えた。
[,.゚゚::|::゚゚.,]『名乗るんなら今の内だ』
クックルのその声に対し、“番犬”ダニー・エクストプラズマンは返答しなかった。
似`゚益゚似
無言のまま、その拳を握り固める。
どこまでも武人。
しかし、その真っすぐな気持ちは戦場では命取りになる。
全身が高周波振動兵器である“ダニー・ザ・ドッグ”に対抗できる棺桶がこちらにはいるのだ。
〔 【≡|≡】〕『俺がそいつを抑える。
その間に殺せ』
[,.゚゚::|::゚゚.,]『あぁ、そうする』
ジュスティア最高戦力の一人とこうして戦えるのは、元イルトリア軍人としてはこの上のない喜びだった。
時代錯誤な称号を与えられて喜んでいる様な人間を暴力で組み伏せることの楽しみ。
これは、持つ者にしか分からない優越感だ。
力が全てを支配できるというこの世界のルールに則った、いわば許容された暴力の正しい使い方だ。
似`゚益゚似
武術など、優れた兵器の前には無力なのだ。
いくら拳を鍛え上げ、拳足を刃の様に武器化したところで、銃弾一発で人は死ぬ。
兵器の使用に長けていることの方が、肉体の研鑽よりも遥かに意味がある。
〔 【≡|≡】〕『悪く思うなよ』
全身の装甲が花弁のように広がり、制圧の構えを取る。
似`゚益゚似『……哀れな』
ようやく放った一言は、憐みの言葉だった。
それは所詮、騎士としての一言。
矜持の鎧を心にまとった人間の言葉など、響きはしない。
マン・オブ・スティールの巨躯が一気にダニー・ザ・ドッグに向かって疾駆した。
展開した装甲でダニー・ザ・ドッグを包むようにしてやれば、活路は前か後ろだけに絞られる。
物理的に捕まえた後は、エクスペンダブルズのレーザーで首を切れば終わりだ。
この上なく分かりやすい作戦に、だがしかし、円卓十二騎士の男は正面から迎え撃つ形で駆けだした。
見た目には勇ましいが、結局のところ、自ら掴まりに行くだけの行為だ。
[,.゚゚::|::゚゚.,]『耄碌したか』 そう、思った。
そう思ったからこそ、そう口にした。
だが。
だが――
〔 【≡|≡】〕『ぬうっ?!』
捕まえようと伸ばした両腕が内側から払い除けられ、胸部に拳が押し当てられる。
身長の差は歴然だったが。
頭三つ分はマン・オブ・スティールの方が高く、拳は垂直ではなく斜め上を向いていた。
それを辛うじて目視した次の刹那、マン・オブ・スティールの巨体が宙を舞った。
似`゚益゚似『イルトリア軍人だと思って少しは期待していたが、兵器の力を己の力と過信した類の間抜けとはな』
[,.゚゚::|::゚゚.,]『しっ……!!』
両腕の合計8本の爪の先端からレーザーが放たれ、ダニー・ザ・ドッグを八方から襲う。
高熱で物質を焼き切るこの攻撃は、高周波振動で防げるようなものではない。
サイコロステーキのようにバラバラに切り裂かれる姿を想像したが、それは一瞬で打ち砕かれた。
似`゚益゚似『その攻撃の報告は受けている』
全身が振動したかと思うと、レーザー光が装甲の表面で霧散し、淡い光がダニー・ザ・ドッグの周囲を照らす。
驚く間もなく距離を詰められると、拳が腹部に押し当てられ、馬鹿げた衝撃が内側にまで貫通してきた。
[,.゚゚::|::゚゚.,]『うがっ?!』
高周波振動による打撃。
その本質は破壊力の向上だが、装甲を貫通しての一撃は聞いたことがなかった。
内蔵に重い一撃を食らったクックルは呼吸を乱し、その場に膝を突く。
棺桶の体格差、重量を無視したような打撃は体だけでなく、心にも傷を負わせた。
似`゚益゚似『装甲の頑丈さ、レーザーの破壊力。
そんなもの、誰が使っても同じだ。
で、ある以上はそれを使う人間の技量に帰結する』
言葉を置き去りに、ダニー・ザ・ドッグの姿がクックルの視界から消失する。
培った戦闘本能に従い、視線を上方に向ける。
飛び蹴りを放つ仕草を、ただ茫然と見つめるしかなく、防御行動に入る前に胸部に強烈な打撃。
重量級のエクスペンダブルズが呆気なく蹴り飛ばされ、瓦礫の山に背中から激突する。
〔 【≡|≡】〕『なめるなよ、犬の分際で!!』
ミルナの怒号と重なった突進。
その一撃は戦車すら横転させ得る砲弾並みの威力を秘めた物だったが、ダニー・ザ・ドッグは回避行動にすら移ろうとしなかった。
左腕をただ静かに、舞うような優雅ささえ感じさせる動きで空に向けて払う。
直後、マン・オブ・スティールは宙を舞い、優に10メートル離れた瓦礫に突っ込んだ。
似`゚益゚似『……』
クックルは否が応でも思い出さざるを得なかった。
ジュスティアが誇る最高戦力の12人。
その実力はイルトリア二将軍にも匹敵すると言われ、与えられた称号に決して恥じない者で構成されていると。
以前相対した“左の大槌”は生身でこちらを圧倒したが、目の前にいる男の力は間違いなくそれに迫るものだ。
[,.゚゚::|::゚゚.,]『ジョルジュ!! どこにいる?!
こっちに来て援護しろ!!』 二人で分が悪いなら、三人がかりで対応するしかない。
しかし、その声に答えたのは切羽詰まった様子のジョルジュ・マグナーニの声だった。
_
(;゚∀゚)『駄目だ!! 今こっちも戦闘中だ!!』
無線機の向こうからは銃声だけでなく、爆発音がいくつも重なって聞こえてきている。
ジョルジュがこれほどまでに慌てた様子を見せているのは、これまでに初めてのことだった。
[,.゚゚::|::゚゚.,]『何?!』
回り込まれるような愚策はしていなかったはずだ。
ジュスティア陸軍が移動したのであれば、その連絡が入り、即応している。
つまり、相手は軍隊ではなく個人。
個人で軍隊を相手にするということは必然――
_
(;゚∀゚)『円卓十二騎士だ!! それも、レジェンドセブンの!!
くっそ、さっさと……!!』
[,.゚゚::|::゚゚.,]『たった二人の援軍で、俺たちを止めるつもりなのか?』
追加の砲撃支援を要請しようにも、今は味方も巻き込みかねない状況だ。
それに、まだジュスティア陸軍には残党の砲兵隊がいる。
この見晴らしがよくなった状況であれば、さぞや狙い撃ちやすくなることだろう。
入り込ませた細胞は5人。
その5人がどう動くのかは、こちらでは指示が出来ない。
彼が行うのは精確な座標を小型端末を使用して伝えることであり、基本としては怪しまれないよう、陸軍として動いてもらうことになっている。
[,.゚゚::|::゚゚.,]『なめられたものだな、流石に!!』
新たなバッテリーを装填し、クックルは呼吸を整えた。
[,.゚゚::|::゚゚.,]『本気でやれそうだ、久しぶりに!!』
左右八本の爪を展開。
レーザー攻撃が対策されているのならば、肉弾戦だ。
技術をねじ伏せる膂力を見せれば、こちらが負ける道理はない。
〔 【≡|≡】〕『あぁ、騎士を相手にできるなんて、願ってもみなかった!!』
そうだ。
この時を願っていたのだ。
イルトリア軍人として生きていた時も、除隊してからも。
胸の中に生まれるざわめきだけは、どうしても消えなかった。
長年にわたって積み重ねられてきた戦闘衝動はやがて夢となり、願いとなり、そして実現すべき目標と化した。
強者のための世界の実現。
それこそが、二人がティンバーランドに参加する理由だった。
似`゚益゚似『……そうか。
ぬんっ!!』
気合を込めた一声が響いたかと思うと、いつの間にか傍に立っていたオワタの棺桶の装甲が左右に分かれて落ちた。
恐ろしく速い手刀。
クックルでなければ見逃していただろう。
\(^o^)/「ふぅ……!!
モナーじいさんと殺りあった時以来だ、ここまで追い詰められたのは」
似`゚益゚似『まだ動けますか?』 \(^o^)/「あぁ、勿論だ」
似`゚益゚似『では、この場はひとまず私が。
ジュスティアに戻り、陸軍への指示を継続してください』
傷で歪んだ顔を更に歪ませ、不承不承、オワタは頷いた。
\(^o^)/「……ここは頼んだ」
[,.゚゚::|::゚゚.,]『大将を逃がすと思うか、しかも生身の』
〔 【≡|≡】〕『石で殺してやろう。
部下と同じように、な!!』
生身の人間であれば石を投擲してやるだけで殺せる。
ミルナが拳大の瓦礫をオワタの後頭部目掛け、目にも止まらぬ速度で投げる。
それをエクストプラズマンが投げた石で撃ち落とした。
拳をゆっくりと前に出し、言った。
似`゚益゚似『駄目だ。 お前たちには、もう何も奪わせない』
――その堂々たる佇まいは、正に騎士そのものだった。
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第八章 【 Ammo for Rebalance part5 -世界を変える銃弾 part5-】 了
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