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2022/04/22(金) 21:47:21.250ID:JM5oqMPZ0そこにはメキシコにおける青年海外協力隊の募集という文面が見えた。物珍しさから気になってしまい下へ下へと目を遣ると、報奨金200万円の文字が見え思わず目を瞠った。でも、青年海外協力隊なのに報奨金とはおかしいだろう。素直にそう思ったが、破格の報奨金に惑わされたタカシは、すぐにに電話番号を打った。
数週間後、航空券片手に空港に向かったタカシは、生まれて初めて地球の真裏へと発った。
メキシコに到着し、眠気を感じながらも連絡を受けた場所に向かおうと思い、タクシーに手を伸ばした。しかし、一向に捕まらない。なおも手を伸ばしていると、突如、こめかみの辺りを強く殴られた。いきなりのことに避けることもできなかったタカシは、薄れゆく意識の中、死を感じるとそのまま気を失った。
目を覚ますと、手が後ろで縛られているのを感じた。周りを見廻すと、見覚えのない景色と男三人が見えた。すると、中央の男が話しだした。が、スペイン語はわからない。タカシは理解できないと拙い英語と日本語を連呼した。その言葉を察したのか右側に立っていた男が中央の男を手で制すると、口を開いた。そこから出た言葉は、驚くことに日本語だった。
「お前がタカシという日本人か? 日本に市場を広げる話が出ているんだ。お前にも協力してもらおう」
何の話かわからなかったが、タカシの名前を知っていることから察するに、彼らが青年海外協力隊のポスターを貼っていた人間なのだろう。しかし、本当にその組織であるならば手を縛ることなどしないはずだ。タカシはこのときになってようやく気付いた。ハメられたのか。
「俺に何をするつもりだ?」タカシは勇気を出して口を開き、日本語を話す男に聞いた。
「心配するな。何もするつもりはない。代わりにしてもらうことがある」
彼らの話では、こういうことだった。昨今のメキシコでは麻薬カルテルの抗争が激化しており、特に二大勢力が対立していた。しかし、現代において直接的な争いは愚かだ、そうした意見が双方の話し合いで上がり、一つの結論が出た。一年のうちにどれだけのメタンフェタミンを捌けるかを競い、勝ったほうに組織は吸収する。彼ら三人の組織は、新たな市場を獲得するために日本へと広げようとしている。タカシはそのサポート役に選ばれたのだ。
タカシはそうして、激しい暴力の世界へと飲み込まれていくのであった──