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(’-’*川カギガアレバアットイウマ🗝ムカシカラオフロハヤクスルノダケデキナイオ🛁ナゼ❓ショウセツカイテミタオ🐰チョットダケヨン♪
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0001jc!ダオ
垢版 |
2022/03/28(月) 21:24:04.498ID:dhiIgsd00
「ああっ! アスベル、マスクをつけて…!」
蟲でした。少女が言い終わるか終わらぬかのうちに巨大なその腐海の住人であるはずの彼らが真っ黒に砂漠の熱に焦がされて、とっくの昔に風に魂を舞わせた挙句、それらをすべて悪魔にさらわれてしまったような哀れにも膨大な数の巨大な死骸をさらしてあっという間に、その強烈な恐ろしむべき太陽の下にその黄金色一色の視界の端から端をすべてことごとく黒々と一面埋め尽くしてしまうのです。
「蟲だ…! 死んでいる…」
アスベルの沈んだ酷く重々しい声でした。
「ペジテに行く!」
はっきりなにも応えようのない少女は気味の悪いほど信じがたい自分の胸騒ぎにただ引きずられて、突き動かされます。その正体をただ一刻も早く確かめるべく再びメーヴェの機首を砂混じりの生あたたかい風に力強く引き上げました。自分の疑いに麻痺するようにどうすることもできない、フッと静かに催眠術に陥ったような今は複雑に震えるだけのうずくまった心を無理やり胸の奥へ奥へと押し込めて。
「気を付けて、あそこにはトルメキア軍がいるはずだ…!」
その時のアスベルの言葉の語尾にそっとどこかなぜか微かに押し殺したようなごくごく小さい、でもなにか非常に異常ないまだ知れない重大な秘密が隠されているようなそんな違和感が少女の頭からぬぐい切れないのでした。
ペジテは輝く砂漠を周りに従えて、それをひとり占めにするように空に聳える巨大な柱、砂色の城塞でした。人々のその生活の場面場面をでももはや切り取ることはできず、ただ高い城壁のさらにその上でうず高く見下ろす街の住居区からは今は真っ黒な煙がまるでひとつの地獄の闇のように頭上を無限に埋めつくし、それはめらめらと真っ赤な人の命を惜し気なく夢中で煮詰めて平らげる恐ろしい怪物のひとつの黒く穢れた土鍋のよう。
城壁の手前に散らばるのは見るも稀な粉々なまでに無残に破壊されつくした鉄くずの数々で、それは地に這いつくばるような命がけの砂漠の行軍の果て、目の前の巨大な城壁とのなぜにか奇妙な激しい戦いの末にあっけなくいつのまにか落としてしまったその命を惜しむかのような気の毒な地獄の傀儡、そのささやかな軍隊のよう。人の姿はそしてついぞ不思議なことにもどこにも見られはしませんでした。そして夢のような巨大な鉄くず、そのいくつかがかろうじて正体を静かに黙って明かすのです。それはいうまでもなくトルメキアの飛行戦艦、その恥ずべきめちゃくちゃな無残な残骸でした。
いくつかの戦車は当の城壁の外に、なぜか後ずさりするようにしてさらに外側へ砲身を向けながら今なお激しく炎を上げつつ打ち捨てられていました。すぐ近くの城門は開け放たれて、そして少女たちはなんの苦も無くそろそろと歩いてその異常な光景の中を恐る恐る進みました。なにを考えるでもなく言葉は互いにひとつとてなく、それぞれ静かにゆっくりと真剣に。その城門にずっと食らいついてそのままこと切れたらしき炎に燻される巨大な蟲の群れはまるで地獄に遊んで歌うよう。その蟲の群れは城門の中、街中のそこかしこに狂ったようななんとも得体の知れないぎょっとする恐ろしいそのうずくまった姿で底知れない異常ななに者かの妖気の漂う巨大な秘密を黙って能弁に物語るのでした。
二人は煙のはぜる細い通路を先へ急ぎました。蟲たちは四方八方、笑うように動くことなくそのままこと切れたままになにごとかじっと少女に静かに囁くよう。そして広く長い石段の前へ出るとアスベルは待ちかねたようになにごとかたまらず、弾けるようにしてそれを黙って駆け上がりました。そして後ろに遅れる少女を待つことなくその上からの意外な光景に思わず、恐らく心の底からの絶望のため息をもらすのです。
「あああっ…!」

残念ながら今日はここまでです。
何らかんらで谷はそのあと何らかんら救われます。予言者のおばあさんもいます。脇を固める子供もいます。
「姫様、青い異国の服を着ているの」
「その者青き衣をまといて金色の野に降り立つべし。おお、古き言い伝えはまことであった…!」
青い服の少女は微笑みながらなおも金の光の上を歩きます。生まれたばかりの天使のように。

おわり
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