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(’-’*川🗝カギニハカミサマガヤドルヨウ✨ワスレタコロニハマタアタラシイ🗝ショウセツカイテミタオ🐰マタ🍹♪
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0001jc!ダオ
垢版 |
2022/03/27(日) 21:22:21.107ID:kmgqW4yT0
果てない砂漠は実にそれ自身が恐ろしい常に人の命を静かにさらおうとする不気味で真面目な死神です。ゾッとする白目で時にひそかに青ざめた顔の横から睨むように人の心を覗くような。ですがその日は不思議とまたあわただしく、見るとなにごとかなぜか再びの邪悪な風の舞い狂う宴のような砂嵐がまるで壁のようになって騒がしくメーヴェの行き先に立ちふさがるのです。アスベルがその時、いやに不審げな声を上げました。
「ペジテのほうがおかしい、何だろうあの靄は…?! 」
興奮したアスベルはなぜか瘴気マスクを外して動揺を隠せぬように大きな息を繰り返しました。砂漠の波頭の上を素早く滑るメーヴェ。その翼の下に、途轍もないその黄金の嵐の波乱に紛れて隠れる恐ろしい破滅と死の兆候、その一端がさっそく触れ始めるのでした。
「ああっ! アスベル、マスクをつけて…!」
蟲でした。少女が言い終わるか終わらぬかのうちに、巨大なその真っ黒に熱に焦がされてとっくに風に魂を舞わせて悪魔にさらわれてしまったような可哀想な膨大な数の巨大な死骸があっという間に、強烈な砂漠の太陽の下にその黄金色一色の視界の端から端をすべてことごとく埋め尽くしてしまうのです。
「蟲だ…! 死んでいる…」
アスベルの沈んだ重々しい声でした。
「ペジテに行く!」
少女は気味の悪いほど信じがたい自分の胸騒ぎに突き動かされます。その正体をただ一刻も早く確かめたくって再びメーヴェの機首を砂混じりの風に力強く引き上げました。自分の疑いに麻痺するようにどうすることもできない、フッと静かに催眠術に陥ったような今は複雑に震えるだけのうずくまった心を無理やり胸の奥へ奥へと押し込めて。
「気を付けて、あそこにはトルメキア軍がいるはずだ…!」
その時のアスベルの言葉の語尾にはそっとなぜかどこか微かに押し殺したようなごくごく小さい、でもなにか非常に重大な異常な秘密が隠されているようなそんな違和感が少女の頭からぬぐい切れないのでした。
ペジテは輝く砂漠を従えひとり占めにして空に聳える巨大な柱、砂色の城塞でした。でも人々のその生活の場面場面をもはや切り取ることはできず、ただ高い城壁のさらにその上でうず高く見下ろす街の住居区からは真っ黒な煙がまるで今は地獄の闇のように無限に頭上を埋めつくし、それは真っ赤な人の命を惜し気なく煮て平らげる恐ろしい怪物のひとつの汚れた土鍋のよう。
城壁の手前に散らばるのは見るも稀な粉々なまでに無残に破壊されつくした鉄くずの数々。それは命がけの砂漠の行軍の果て、目の前の巨大な城壁との奇妙な激しい戦いの末にあっけなくいつのまにか落としてしまった命を惜しむ気の毒な地獄の傀儡軍隊のよう。そして人の姿は不思議とついにどこにも見られませんでした。そして夢のような巨大な鉄くずのいくつかがかろうじて正体を静かに黙って明かすのです。いうまでもなくそれはトルメキアの飛行戦艦、その恥ずべき無残な残骸でした。
いくつかの戦車は当の城壁の外に、なぜか後ずさりするようにしてさらに外側へ砲身を向けながら激しく炎を上げつつ打ち捨てられていました。すぐ近くの城門は開け放たれて、少女たちはなんの苦も無くそろそろと歩いて恐る恐るその異常な光景を進みました。言葉は互いにひとつとてなく、それぞれ静かにゆっくりと。その城門に食らいついてそのままこと切れたらしき炎に燻される巨大な蟲の群れはまるで地獄に遊んで歌うよう。その蟲の群れは城門の中、街中のそこかしこになんとも得体の知れない恐ろしいその姿で底知れない異常ななに者かの妖気漂う秘密を黙ってうずくまりながら能弁に物語るのでした。

残念ながら今日はここまでです。
何らかんらで谷はそのあと何らかんら救われます。予言者のおばあさんもいます。脇を固める子供もいます。
「姫様、青い異国の服を着ているの」
「その者青き衣をまといて金色の野に降り立つべし。おお、古き言い伝えはまことであった…!」
青い服の少女は微笑みながらなおも金の光の上を歩きます。生まれたばかりの天使のように。

おわり
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